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第九十八話

あれから図書館で勉強して、寮に戻って自分で部屋で実際に武器に付与をしてというのを繰り返している。


おかげさまでかなり付与も上手くなってきている。


「はぁ、疲れたー。今日はほとんど付与魔法練習の為に部屋にいたなぁ、なんかずっと同じ姿勢だから体が固まっちゃうよ」

伸びをして、体を解す。


「そういえば、ルーネってマイアさんと戦った時、どうやってマイアさんのこと止めたの?マイアさんの剛力を、ルーネが止めてるの想像できないんだけど」

ルーネがこちらに顔を向けて起き上がり、欠伸して体を伸ばす。


「やっぱり、想像できないや・・・」


「ワウッ!」

見せてやる!と伝わってきたのでルーネの後ろに着いて表に出る。


ルーネはやる気満々のようで、ワウワウと吠えている。

「はい、これあの時渡した、鎖鎌」

アイテムボックスから少し大きめの鎖鎌を取り出し、ルーネに渡す。


ルーネはそれを咥えて少し振って、調子を整える。


「ガウ!」

気合いの入った声と共にルーネが臨戦態勢になる。


アルージェも、念の為アイテムボックスから剣を取り出し構える。


アルージェが構えたのを見てルーネが駆け始める。


アルージェはその速さになんとか対応して鎌を弾いたが、

少し距離を空けたところから次は鎖が飛んでくる。


「うぉ!鎖まで自由自在に!」

飛んできた鎖を躱して、アルージェもこれくらいはいけるだろうと剣で攻撃を始める。


ルーネはアルージェの剣を全て躱しながら、距離をとりつつ鎖で応戦する。


アルージェは段々と楽しくなってきて、アイテムボックスに剣をしまって、ジャベリンを取り出し投擲する。


ルーネは投擲されたジャベリンを鎖で弾くが、アルージェがフランシスカ、投げナイフ、手斧等あらゆる投擲武器をルーネに向かって投擲する。


ルーネは鎖では対処しきれなくなったので、避けることに意識を切り替えて、邪魔なものを鎖と鎌で弾く。


「すごい楽しい!」

最近は勉強ばかりで体が激しい運動を求めいた。


アイテムボックスから剣を二本取り出し、両手に持って、ルーネに接敵する。


ルーネも負けじと金色に輝く魔力を纏い、近距離で応戦する。


「ルーネすごいよ!本当にすごい!」

そう言いながらも激しい攻撃を繰り出すアルージェ。


ルーネは速さを活かして攻撃を躱して、隙を見て反撃する。

アルージェの攻撃は全くルーネに当たらず、だがルーネからの攻撃は確実にアルージェに当たる。


ルーネは体に纏っている金色の輝きを今まで以上に出して、アルージェに目眩しをする。


「なっ!?」

まさかそんなことまで出来るとは思わず、目眩しをくらってしまい、前が完全に見えなく。

その後、腹部に衝撃を受けてアルージェは吹っ飛ばされて、地面を転がる。


視力が回復してきたので、目を開けるとルーネがドヤ顔でアルージェの前に立っていた。


「想像できないとか言ってすいません!完敗です!」

アルージェが立ち上がる。


犬と人が暴れていると学生からの報告を受けて、教授が来ていた。


「君達、学内で暴れるならグラウンドにしなさい!なぜこんなところで暴れるんですか!」

この声には聞き覚えがあった。


確か初めて学園にきた時に対応してくれたゴーレムの教授だ。


「すいません!ゴーレム教授!」


「ゴーレム教授悪くない響きですが、ドルンです。そういう君達は、以前学園見学に来ていましたね」


「はい!あの時はお世話になりました!」


「まぁ、私は何もしてないですが、どうやら学園に入学したようですね。授業で見た覚えは無いですが」


「あはは、ちょっと特殊な環境にいまして・・・」


「まぁ、そういった学生も居ないことは無いので珍しくは無いですが、学園内で武器を使って暴れる学生はかなり珍しいですね」


「い、いやー、申し訳ないです、楽しくなってしまって・・・」


「今回は誰も怪我しなかったのでいいですが、次は無いです、暴れるならグラウンドでどうぞ、では収まったようなので私はこれで」

そういって、そそくさと教授は去っていった。


「あはは、怒られちゃったね。ちょっと久々にはしゃぎすぎちゃったよ」

「ワウ・・・」

ルーネも興が乗ってしまったようだ。


「まぁ、ルーネの強さも分かったし、今日はそれでいいってことにしとこう!」

アルージェは投擲した武器を可能な限り回収してから、寮に戻る。


「あれだけ強いのにゴブリンには多勢に無勢でやられてたんだね」

アルージェは初めてルーネにあった時のことを思い出す。


「ちょっと待って、ルーネ思いっきり魔力で身体強化してなかった?ルーネって魔法使えるん?」

ルーネに聞こうとするがルーネはすでに寮に戻って丸まって寝ていた。


「うわっ、寝るのはやっ!僕が武器回収してる間にちゃっかり寝てるよ」

アルージェも体を動かして少し疲れたので、欠伸をしてから丸まって寝ているルーネの間に割り込んで、目を閉じる。


「おやすみぃ」

あっという間に意識を持って行かれる。

ゆさゆさと揺れるのに気づいて目を開けるとミスティがアルージェを見下ろしていた。


「アルージェ、よく寝たか?今日はお昼ルーネと暴れたらしいな、噂になっていたぞ」


「おはよう、ミスティさん、よく寝ました。んー」

と体を伸ばす。


窓の外を見ると既に空はオレンジ色になっていた。

「お腹すいたな、そういえば今日何も食べてないや」


「フフフ、研究熱心になるのはいいが、健康にも気を使わないと好きな研究が出来なくなるぞ」


「本当ですね、ならご飯食べます!」


「あぁ、そうしよう。今日はこの間のこともあったから既にここに持って来ている」


言われてみたら確かに、隣の部屋からいい匂いがしてくる。


「マイア、アルージェが起きた。食事にしよう」


「はい、既に用意できております」

さすがマイアさんだ。


アルージェが席に着き「いただきまーす!」と元気に言うと、みんなポカンとした顔をする。

だが、アルージェに続き各々「いただきます」と言ってから食事を始めた。


それから一週間が経った。


「よし、ここまで出来れば、普通に使えそうな武器になった!」

アルージェは付与をした武器を並べて満足げに武器を眺める。


これらには最低二つの付与魔法を施していて、

単純に武器の耐久力を上げる『硬質化』、武器の切れ味を鋭くする『鋭利化』

後は武器によって変えている槍などには『貫通強化』や投擲武器には『飛距離延長』などである。


「はぁ、僕の武器、みんなすごいよぉ!キラキラ輝いてるよぉ!」

アルージェは武器を眺めながら人に見られてはいけない顔をする。


「まだまだ付与を施せる武器は手元に有るけど、今日はこのくらいにして図書館行こう!」

自分の部屋から出て、玄関に向かうと扉付近に紙が落ちていた。


「ミスティさんが置いてったのかな?」

落ちていた紙を広い読むと『本日、研究棟で実験を行う為、研究棟へ近づくの禁止!』

と書かれていた。


「実験?」

思い返せば、結構な人数が元気にエイヤコラヤと、どこかに物を運んでたような気がする。

何してるんだろうとは思ったけど、僕には関係ないし、別にいいやと思ってからは気にしてなかったな。


「そもそも研究棟ってどこかわからないし、気にしないでいいかな」

チラシをゴミ箱に捨てて、ルーネに声を掛けて図書館に向かう。


図書館に付近で目の前にエマが歩いているのが見える。


「あっ、エマだ。この間のお礼まともに言えてなかったし、ちょうど良かった」

アルージェはエマの方へ駆け寄る。


「やっほー!」と声を掛けて肩を叩こうとすると、壁のような何かに阻まれる。

そのまま何かに弾かれてしまい、何歩か後ろに下がってしまう。


体勢を崩したアルージェをルーネが受け止める。


「ありがとうルーネ!」


エマがアルージェに気付き「すいません、本当にすいません」と何度も謝る。


「あはは、気にしないで。いきなり肩に触れようとしちゃった、僕が悪いし」

アルージェは本当に全然気にしていなかったが、それでもエマは何度も何度も謝る。


「それにしても今のすごいね!何かの魔法なの?」

こんなに謝られると流石に気まずいなと思い、話を変えようと壁のような何かの話をしようとする。


「これは愚かな私への罰です」

エマは悲しそうに呟き、図書館の入り口とは逆側に走っていく。


「あっ、ちょっと!」

アルージェは引き留めようとしたがそのまま走り去ってしまう。


「あれは触れちゃいけない話題だったかぁ」

と項垂れてルーネの方を見ると、「早く追いかけろ」と首をチョイチョイと動かして目線で訴えてくる。


「だよねぇ・・・」

アルージェはエマの後を追いかける。


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