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第百十九話

「さぁ、魔力を注ぎ終わったよ。二人とも位置について!」


アルージェと男子学生は指定された位置に着く。


「なら、始めるよ。フィールド展開、障害物配置完了」

アルージェの視界に木が生い茂る。


「す、すげー!本物みたいだ!」

アルージェが驚きで声を上げる。


「それでは始め!」

ディビックの掛け声が戦場に響き渡る。



アルージェは剣を二本アイテムボックスからとりだす。


「遠距離から攻撃ができるから先に見つけた方が有利だ。けど相手もきっとそれがわかっているはずだから、まずは気配をなるべく断つようにしよう」

アルージェは村にいた時に習ったようになるべく気配を消す。

そして静かに辺りの探索を始める。


探索をし始めてから、少し違和感に気付く。

「ん?この魔法はなんだ・・・?」

少し進むと魔力の揺らぎを感じて戻ると何も感じなくなる。


魔力の揺らぎを感じる位置に立ち、一定の間隔で何度も何度も揺らぐ魔力を受ける。


「一定の間隔で全方向に・・・?もしかして・・・ソナー?」

アルージェが気づいた時にはすでに遅かった。


後ろから大きな魔力を感じたので振り返る。


尖った氷が複数こちらに飛んでくるのが見える。


「クソッ!先を越された!簡易付与テンポラリー硬質化リジダイズ

アルージェは咄嗟に剣に『硬質化』を付与して、全身に身体強化を施す。

そして、とんできた氷を全て剣で弾き飛ばす。

これ以上、魔法が来ないと分かったので全速力で魔法が飛んできた場所に向かう。


「あれ全部弾くって、人間技じゃないよ!!」

対戦相手の男子学生の声が聞こえる。


氷の槍アイスランスを放った後、別の場所に移動してからソナーを使い結果を確認すればいいものを、勝ったと慢心して様子を伺っていたみたいだ。


対戦相手を見つけて、剣を向ける。


「まだやりますか?」

アルージェが確認すると、手に持っていた杖を地面に落として「降参します」と両手を上げる。


戦闘が終わると景色が森から一変して、先程の広いフィールドに戻る。


初めは皆興味本位で横目に決闘を見ていた。

そして男子学生が魔力探知マジックソナーを使って、場所を把握した時点で皆あれは負けたなと思って作業に戻った。


だが、アルージェが氷の槍アイスランスを全て剣で弾いた時、作業に戻ろうとしていた学生達の視線を奪った。


そして、しっかりと魔法が来ないことを把握してから対応、皆が感心した。


場所がバレてから自分ならどうするか。

場所が割れてしまっているから全力で魔法を放つか、詠唱が追いつかなければ?

それなら、一旦逃げて距離を離してから魔法を放つか。あの速度から逃れるのか?


考えるだけでワクワクした。


いつの間にか学生達はアルージェを囲むように近づいていた。


「俺とも戦ってくれ!」


「俺もだ!」


「君と戦いたい!」

とみんなから言われる。



そこにディビックがやってくる。

「みんな!やめたまえ。アルージェは戦いの後で疲れてるんだ!戦うにしても全力のアルージェと戦いだろ?何、心配ないさ。きっとアルージェ君もかなりの戦闘マニアだ。きっとここが気にいるだろうからね」

ディビックはニヤリと笑う。


「全部ディビックさんの思うつぼってことですか」

どうやらディビックにはバレていたようだ、アルージェは戦いが大好きなだということが。


魔法学校に来てからというもの、ずっと魔法の勉強ばかりしていた。

体を動かす時、相手がいないので素振りばかりだった。


だけど今日久しぶりに実戦をして、正直かなり楽しかった。


「けど入会するには、ちょっと同居人に相談しないと・・・・」

だけどアルージェは冷静になって熱を冷やそうとする。


だが、ディビックもそれを分かっている。

「んふふ、研究会に所属しなくても、きっとみんな歓迎してくれるよ。そうだね?みんな?」

ディビックが学生を煽るように聞くと学生達は「歓迎だ!!」と声を上げる。


「休日以外毎日やってるからね。明日も待ってるよ」

耳元でディビックが囁く。

イケメンのウィスパーボイスにゾクっとしたが、それを聞いて安心した。


「あ、明日も来ます!!」

アルージェの完敗である。

元気に返事すると、学生達がまた「ウォー!!」と声を上げる。


「それじゃ、今日はもうお開きにしよう。みんなまた明日もよろしく!」

研究会も今日はこれで終わるようだ。


アルージェは上機嫌でルーネに乗って寮に戻る。


寮にはミスティさんとエマが居て、仲良くお茶をしていた。


「おっ、アルージェ戻ったの。ん?えらく上機嫌だな」

ミスティはアルージェの様子をすぐに見抜く。


「あっ?分かっちゃいます?そうなんですよ!ちょっと今日楽しいことがありまして!」

アルージェは上機嫌に話す。


「エマも今日は図書館じゃなくてここにいたんだねぇ、ゆっくりしていってねー!」


「あっ、ありがとうございます。実はミスティさんに相談が有って、お邪魔してました」


「そうなんだ!あれ?なら僕ここにいない方がいい?聞いてもいいやつ?」

相談ということはプライベートな話だったのかもしれないと気を使う。


「だ、大丈夫です!むしろアルージェ君にも聞いてもらいたくて!」

エマがアルージェを引き止める。


「じ、実は、私このペンダントの付与を解除したいんです」


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