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第百六十二話

「負けてられないな!」

アルージェは持っていた斧をゴブリンに投げつけて、剣をゴブリンに突き刺す。

そして、アイテムボックスから可変式片手半剣トツカノツルギを取り出す。


「『可変式片手半剣トツカノツルギ・参式=アメノムラクモ』」

可変式片手半剣トツカノツルギのミスリル部分が外れ、デゾルブ剣とミスリル剣に別れる。


アルージェは両手に剣を持ち、エマに負けないくらい張り切ってゴブリン達をせん滅する。


戦い続けること三十分。


「ふぅ、おおよそ片付いたかな」

額の汗を拭い、アルージェは集落を見渡す。


「ハァ、ハァ。そ、そうですね。こちらに来ないということは全滅させたってことですか?」

膝に手を付き前屈みになりながら、肩で息をして答える、エマ。


「うーん、そうだと思うんだけど、確証が無いと流石に報告はできないよねぇ・・・。こんな時、ルーネがいたら臭いで教えてもらえるんだけどなぁ」

アルージェは何か手がないか考える。


「あっ、そうだ。攻撃魔法研究会の人が使ってた魔力探知マジックソナー!あれを使えば魔力を持ってる物に反応するからちょうどいいじゃん!」

アルージェは魔法陣を展開して、魔力探知マジックソナーの魔力の動きを思い出す。


「よし!出来そう!」

魔力探知マジックソナーが発動し、特殊な魔力を一定の間隔で放出する。

魔力を持っているものに反応するので、建物は反応しないかなり便利な魔法だ。


「うぇ、ちょっと待って。これって魔石に反応してるのかな・・・?僕達付近の反応すごすぎ・・・。あっ、でも離れたところに同じ魔力反応はないね。この短時間でそこまで遠くには行けないはずだし」


「ならこれで?」


「うん、お疲れ様!危なげなく終わってよかった!」

アルージェは結構な量の返り血を浴びたエマを見て、微笑む。


アルージェの言葉で緊張していた、エマの顔が緩む。


「あっ、でもね、ゴブリンにも魔石ってのがあるんだけど、本来これ一つだと大した金額にならないんだよね。でもこれだけの数回収したら、結構なお金になると思うんだよ。回収めんどくさいけど手伝っってもらえないかな・・・?あぁ、後討伐証明部位も取らなきゃだ。まとめてやろうかな」

アルージェは近くに有ったゴブリンの死体から右耳を削ぎ、胸を開き心臓近くにある魔石を取り出す。


魔石を取り出したゴブリンの死体は灰のようになり消えていく。


「流石に一人だと時間かかるな・・・」

エマにチラリと視線を移す。


「でも、流石にエマにさせるのはなぁ・・・」

女子にこんなことさせるなんてどうなんだとアルージェは葛藤する。


「あ、アルージェ君、私も手伝うよ?ちょっと気持ち悪いけど、今の内から慣れてないと一緒に冒険なんて出来なさそうだから」


アルージェは少しだけ考える。

「なら申し訳ないんだけど、ゴブリンの右耳削いでいってくれない?僕は胸開いて魔石取っていくから」


「わ、分かりました」


「あ、道具はこれ使ってよ。」

アルージェはアイテムボックスから短剣を一本取り出し、エマに渡す。


「それに耳を手で持ってるの気持ち悪いと思うから、これに入れていって」

アルージェがいつも腰につけているアイテムボックスをエマに渡す。


「えっ・・・?いいんですか?」

そのアイテムボックスにはアルージェの全てが詰まっていることをエマは知っている。

アルージェが作った武器、魔道具、食べ物、その他生活に必要な全ての物。


そんな大事なアイテムボックスをアルージェが渡してきたので、エマは驚く。


「ん?もちろん!エマのこと信用してるからさ!それに武器はこれがあれば十分だし」

アルージェは可変式片手半剣トツカノツルギを見せる。


「は、はい!ありがとうございます!」

エマは上機嫌でゴブリンの右耳を削いでいく。


かなりの量の返り血を浴びた女子がニコニコしながらゴブリンの耳を削いでいく、猟奇的な光景である。


「あはは!何それ面白っ!」

アルージェはその異常な光景を見て、笑う。


エマとアルージェはコツコツと回収し、終わる頃には日が沈みかけていた。


「うわー、どうしよう。まだこの集落の探索も出来て無いのに暗くなってきちゃった」

アルージェが夕日を見て、呟く。


「ゴブリンの死体がないとは言え、ここで野宿するのは少し気が引けます・・・」

エマはゴブリンの死体が有ったところに視線を移す。


ゴブリンの死体は魔石を取った段階で消えるが、血の後などは消えない。


「そうだよねぇ・・・。僕もちょっと嫌だもん。明かりだけ光魔法で確保して、軽く探索しよう。終わったら破裂する小球ブラストボールで集落潰して再利用できないようにしてから出ようか。帰りはルーネを呼んでみて、来てくれたら乗せてもらおう。無理なら少し離れた場所で野宿かな」


「そ、そうですね。それがいいと思います」

エマはアルージェの提案に賛同する。


「なら何かお金になりそうな物が無いかだけ、見て回ろう!」


アルージェとエマは一旦別れて集落を見て回ることにした。


「はぁ・・・、これは流石に・・・」

建物が何個かあったので、見て回っている途中で人間の死体を大量に置いてある建物を見つけてしまった。

なかなかに残虐な殺され方をしたんだろう。

どの死体も見るに堪えないものばかりだ。


エマに見せないように、アルージェは火魔法を発動して建物ごと燃やした。


エマがアルージェの魔力に気付き、こちらにやってきた。

「アルージェ君、大丈夫!?」


「うん、大丈夫だよ。心配してきてくれたの?」


「魔力に動きが有ったから、何かあったのかと思って・・・」


エマの視界には崩れた建物だけが見える。


「何もないところは先に潰してる方が後で分かりやすいかなと思ってさ。それよりエマは何か見つけた?」


「そういえば、途中武器がいっぱい置いてあるところを見つけました」


「おっ、なら連れていってよ!」


「うん!」

エマに先導してもらいゴブリン達の武器庫で武器を回収する。

劣化しているが鉄には変わりないので精練すれば使えるはずだ。


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