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第百七十八話

翌日の鐘が鳴る前。

予定通りに辺境伯邸に出発する為、まずはニツール側の門に向かう。


門にたどり着くとアイン達は既に集合していた。

「やぁ、おはよう。時間通りだね」

アインがアルージェに手を振る。


アルージェもアインに手を振り返す。

「早いですね。もしかして結構待ってました?」


「ははは、まさか。僕達も今来たところさ。もう出発できるかい?」

アルージェがミスティ達の方へ振り返ると、ミスティ達も問題ないと頷く。


「行けます!」

アルージェが元気に返事をしたことで辺境伯邸に出発する。


フォルスタ近辺は冒険者達がしっかりと魔獣の間引きをしているので、魔獣と出会うことはない。

かなり順調に進み、一旦休憩を取ることになった。


「なんだか全然魔物居ないですね」


「あぁ、父の私兵団達が戦闘訓練がてら狩りをしているからな」

ミスティがエマに答える。


「なるほど、通りで」

ミスティの言葉でエマが納得する。


「ちなみに後どれくらいで着くんですか?」


「そうだな。大体フォルスタから二日、三日というところで、今半日歩いたから早ければ後一日半くらいでつくと思うが」


「フォルスタから結構離れてるんですね」


「当たり前じゃない、戦争が始まった場合町を最前線にする訳に行かないでしょ」

カレンが呆れて答える。


「た、確かに!」


「ははは、アルージェは戦いは本当に強いけど、なんか常識が抜けてる気がするな」

アインは笑いながら話す。


「そうなのよ。魔法だって閃きとか応用とかすごいのに、なんか抜けてるのよね」

カレンがアインに同意する。


「そんなこと言われても、僕まだ十二歳ですよ?」

アルージェは口を尖らせる。


「アルージェ君はまだまだ賢くなるわよねー?」

ラーニャがニコニコと話す。


「もちろんですよ!まだまだ伸び代があるんですよ!」


「伸び代があるのは結構なことだが、少しは常識も心得て欲しいところだな。妻を心配させないとかそういう常識も」

ミスティがアルージェをジト目で見る。


「そうですよ!」

エマがミスティの言葉に賛同する。


「むぐっ・・・。善処します・・・」

アルージェの答えにどっと笑いが起こる。


それから三日間何事もなく、無事辺境伯邸に到着する。

マイアが馬車を停車させて、ミスティが馬車を降りてくる。


マイアはミスティが降りたことを確認して、馬を馬車小屋に連れて行く。

そして、マイアが戻ってきたところで家に向かう。


「ミスティさん、辺境伯様になんの連絡もしてないけど大丈夫でしょうか?いきなり押しかけて迷惑になったりしないですか?」

アルージェはソワソワと動き心配を始める。


「アルージェ、それ何回目だ?問題ないと言っているだろ」

ため息を吐きながらミスティが一蹴する。


ミスティが扉に付いている豪華なドアノッカーを叩いてからガチャリと扉を開ける。

そのまま、家の中に入っていく。


「お、お邪魔しまーす・・・」

アルージェとエマは恐る恐るミスティに続き入る。


ドアノッカーの音に気付いた、メイドが一人出てくる。

ミスティを見て少し嫌な顔をするが、「お帰りなさいませ」としっかりお辞儀をする。


「あぁ、今戻った。父は居るか?」

嫌な顔をされたことは特に気にしないでミスティは淡々と答える。


「はい、辺境伯様は外の訓練場で私兵達と訓練をしています。呼んで参ります」

メイドはお辞儀をしてミスティの返事も聞かずにその場から離れ、辺境伯を呼びに行く。


数分待ったところで、辺境伯が汗を布で拭きながら現れる。

「すまない。待たせたかな?」


辺境伯は急いで戻ってきたのか、以前会った時とは違い動きやすそうなラフな服だった。


「お父様!いえ、待っていません」

ミスティは辺境伯に会えて嬉しそうだ。


「アルージェ君もよく来てくれた。ふむ、その狼は前会った時にいた子だな。仲良くて何よりだ。王都からは遠かっただろう?」


「いえ、みんなとワイワイと出来てすごく楽しい旅なので、王都を出たのが昨日のようです」


「ははは、それは良かった。滞在中は君の家だと思ってゆっくり寛いでくれ。後は・・・」

辺境伯がエマの方に視線を移す。


「は、初めまして。み、ミスティさんと学園で仲良くさせていただいております。エマと申します」

エマは丁寧に頭を下げ、お辞儀をする。


「ミスティから話は聞いているよ。ご両親は研究者だったそうだね。私も王都に行った時、事故の話は聞いたことがある。本当に何と言っていいか・・・。困ったことがあったらいつでも言ってくれ、なるべく援助させてもらうよ」


「あ、ありがとうございます。ですが今の私にはアルージェ君とミスティさんがいるので、大丈夫です」


「ははは、そうか。しっかりした子だ。今後もミスティを頼むよ」


「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」


「うむ。アイン達もよく来てくれた。わざわざ王都から助かる。歓迎するよ」


「依頼なので気にしないで、大丈夫です。早速話を聞きたいのですが、いいですか?」


「あぁ、そうだな。アルージェ君達はゆっくり寛いでいてくれ。何かあればメイドに声を掛ければ対応してもらえるはずだ。それじゃあアイン・ラーニャ・カレンこちらに」

アイン達は辺境伯についていき、姿が見えなくなる。



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