ミスティとエマは遠目からアルージェを見ていた。
「すっかり私兵団員達の中心にいるな」
「そうですね。アルージェ君はやっぱりすごい人です」
「本当にな。職人気質で自分を曲げることをしないのに、何故か人に好かれる。カリスマ性があるんだろうか」
「確かに私もアルージェ君の言葉に妙な説得力を感じることあります」
エマは何かを思い出したのか話を続ける。
「ミスティさん。私誰にも言ったことなかったんですけど・・・」
「ん?エマ?どうした?」
ミスティが心配になり、エマの方へ視線を移す。
「わ、私。魔力の色が見えるんです」
「魔力の色?」
「はい、魔力の色でその人が大抵どんな人か分かるんですよ。変、ですよね?」
「ははは、まさか変なんて思わないさ。それを言ったら私だって変だろう。悪魔憑きだぞ?ちなみに私の魔力は何色なんだ?」
「ミスティさんは紫です。そうですね・・・。何をするに自身は正しくて、絶対に間違いを犯さないって思ってる節ありませんか?」
「むっ、言われてみたらそうかもしれないな。ただなんだか褒められている気はしないが・・・」
「そ、そんな事ないです!自分に自信があるのって大事ですよ。私は自分に自信がないので、ミスティさんが羨ましいです。アルージェ君にも釣り合ってないんじゃないかって、すぐに考えちゃいます」
「釣り合ってるか釣り合ってないかとかは重要じゃないだろ。一緒に居たいか、居たくないかだ」
「・・・。そうですね。ありがとうございます。今はなるべくそういう風に考えるようにしてます。一緒に居たいですから」
「そうだぞ。私から見てる限りではアルージェはエマのことも大好きだからな」
「本当ですか!?」
エマはミスティにぐいっと近付く
「ははは、当たり前だろ。二ツールでアルージェが部屋に戻ってきた時、部屋を見渡してその場にいない人の事毎回聞いていただろ?覚えてるか?」
「そういえば、確かに聞いていた様な気がします」
「マイアの事は用事がある時しか聞かれた事ないが、エマとルーネは居なかったら毎回聞かれるんだ。だからきっとエマのことも大好きなんだと思うぞ」
エマは顔が熱くなるのを感じる。
「なんだか恥ずかしいです・・・」
「ははは、エマはほんとに初々しいな。それでアルージェは何色の魔力なんだ?」
「・・・」
エマは嬉しくて、ボーッとしている。
「エマ、おーい!むっ、これは聞きそびれてしまったか」
ミスティはため息をつき、皿に肉を取りに行く。
私兵達は酒を飲み、酔い潰れてその場で寝る者も出てきていた。
アルージェも肉を食べ、果実水を飲んで大満足の様子で椅子に腰を掛けている。
そろそろお開きかなというところで、辺境伯がアルージェに話しかけてきた。
「アルージェ君、隣良いだろうか?」
「あっ、問題ないです」
アルージェは気持ちばかり席を話して辺境伯が座る場所を確保する。
「すいません、何だかこっちで話してると楽しくて、戻るの忘れてました」
アルージェが軽く謝罪すると辺境伯が手を横に振る。
「ははは、構わないさ。面白い奴等だろ?」
辺境伯は私兵団達が騒いでいるのを見て、微笑む。
「そうですね。初めはちょっと怖かったですけど、なんだかんだで仲良くして貰えて」
アルージェも辺境伯と一緒に私兵団達を眺める。
数秒程経った後に、辺境伯が私兵達から視線をアルージェに戻す。
「話は変わるがアルージェ君はあれだけ強いのに、本業は鍛冶屋なんだってね?出身はニツール。ニツール言えば一人だけ名工が思い当たるが、彼の教えかな?」
「恐らく考えている人で間違いないと思いますよ。強くなったのは師匠の教えではないですよ。守りたかった人がいて、その人を守るために強くなるって決めたんです」
アルージェは拳を握る。
辺境伯もアルージェの様子が変わったことに気付いたが、これから徐々に聞けばいいとアルージェが落ち着くのを待つ。
気持ちを落ち着かせたアルージェが思い出した様に辺境伯に話しかける。
「そういえば師匠から鎧を受け取ってきたんでした」
「ん?頼んでいた物か。思っていたより早く出来たんだな」
鎧といえば、頼まれてもいない付与魔法を施したことをアルージェは思い出す。
「あぁ・・・、えっと・・・。物は二人で作ったのでかなり早く出来上がったのですが・・・」
アルージェは言い淀む。
「鎧まで作れるのか、君は本当に凄いな」
「いえ、今回初めて作ったので、まだまだひよっ子です。苦労しましたけど、師匠も問題ないと太鼓判をくれたのでそこは安心していただきたいんです。ただ・・・、大量の鎧が有ったので付与もしちゃったんですよね・・・。付与の練習に丁度いいと思って・・・。」
「ははは。構わないさ。付与なんて私兵団には贅沢な物になってしまったな」
「依頼と違うことしちゃったので、明日実物を見てもらって問題ないか判断して頂きたいです」
「そうさせてもらうよ」
それから村での話や学園での話。
ミスティとの関係や結婚後はどういう家庭にしたいか等、他愛のない話をした。
エマの事も話すと辺境伯は少し眉を顰めたが、すでにミスティが了承しているならと笑っていた。