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100. 初めての緊張

 俺は、ドロシーの言葉に込められた想いの深さに胸が熱くなる。長年の想いが、今この瞬間に結実したのだ。俺は、ドロシーをそっと抱きしめた。その温もりと、二人の鼓動が重なり合う。


 パンッ!


 暖炉のまきがはぜた。その音が、二人の胸の高鳴りと呼応するかのように響く。


 二人はゆっくりとくちびるを重ねる。


 最初は優しく、そして次第にお互いを激しくむさぼった。長年抑えてきた想いが、一気に溢れ出す。


 ドロシーの繊細で、そして時に大胆な舌の動きに俺の熱い想いを絡ませていく……。二人の息遣いが激しくなり、心臓の鼓動が高まる。


 俺はウェディングドレスの背中のボタンに手をかけた――――。


 すると、ドロシーはそっと離れて、恥ずかしそうにしながら後ろを向く。その仕草には、初々しさと可愛らしさが滲んでいた。


 俺は丁寧にボタンを外し、するするとドレスを下ろした。


 ドロシーのしっとりとした白い肌があらわになる。月光に照らされたその姿は、まるで彫刻のように美しかった。


 俺が下着に手をかけると、


「ちょ、ちょっと待って! 水浴びしないと……」


 そう言って恥ずかしがるドロシー。


 しかし、もう俺は止まらない。


 俺はそんなドロシーをひょいっと持ち上げると、優しくベッドに横たえた。


「え!? ちょ、ちょっとダメだってばぁ!」


 焦るドロシーに強引にキスをする。その唇の感触が、全身に電流のように走る。


 「ダメ」と言いながらも段々と盛り上がるドロシー……。その声には、徐々に快感が混ざり始めていた。


 俺は次に耳にキスをして徐々におりていく。首筋、鎖骨、そして更に下へと。


 可愛い声が小さく部屋に響く。その声が、俺の情熱に火をつける。


 そして、火照ってボーっとなっているドロシーの下着を優しく外す。


 優美な肢体のラインが芸術品のようなうるわしさをたたえながら、あらわになった。その美しさに、俺は息を呑む。


 俺も服を脱ぎ、そっと肌を重ねる。


 しっとりと柔らかい肌が熱を持って俺の肌になじんだ。その感触に、二人の体温が更に上昇する。


 可愛い声が徐々に大きくなってくる。その声が、俺の理性の糸を少しずつ切っていく。


 そして、ドロシーは切なそうなうるんだ目で、


「早く……、来て……」


 そう言って俺の頬を優しくなでた。


「上手く……できなかったらゴメン……」


 俺はちょっと緊張してきた。初めての経験への不安が、一瞬頭をよぎる。


「ふふっ、慣れてなくてホッとしたわ」


 ドロシーの言葉に、俺の緊張が少し和らぐ。


 二人は見つめ合うと、もう一度熱いキスを交わす。そのキスには、互いへの愛情と信頼が込められていた。


 俺は覚悟を決め、柔らかなふくらはぎを優しく持ち上げた……。


 その晩、揺れる暖炉の炎の明かりの中で、俺たちは何度も何度も獣のようにお互いを求めあった。二人の愛の炎は、暖炉の火よりも熱く燃え上がる。


 そして、二人はお互いが一つになり、何かが完全になったのを心の底でしっかりと感じた。それは単なる肉体の結合ではなく、魂の融合のようだった。



      ◇



 燃えるような夜が明ける――――。


 目が覚めると、窓の外は明るくなり始めていた。朝もやに包まれた森が、新たな一日の始まりを静かに告げている。隣を見ると愛しい妻がスースーと幸せそうに寝ている。その寝顔は、天使のように穏やかで美しかった。俺は改めてドロシーと結婚したことを実感し、しばらく可愛い顔を眺めていた。昨夜の熱い想い出が、頭の中でよみがえる。


 なんて幸せなのだろう……。


 俺は心から湧き上がってくる温かいものに思わず涙がにじんだ。この幸せが永遠に続くように……、いや、続かせるのだと改めて誓う。


 そっとベッドを抜け出した俺は、優しく毛布をかけて、静かにコーヒーを入れた。豆を挽く音さえも、ドロシーの眠りを邪魔しないよう気をつけながら。


 狭いログハウスにコーヒーの香ばしい香りが広がる。その香りは、新しい人生の新しい朝の始まりを告げるかのようだった。


 俺はマグカップ片手に外へ出て、デッキの椅子に座る。朝のひんやりとした空気が気持ちよく、朝もやがたち込めた静謐せいひつな池をぼんやりと眺めていた。


 朝もやの隙間から水面に映る朝日が、徐々にきらきらと輝き始める――――。


 チチチチッと遠くで小鳥が鳴いている。その鳴き声が、森全体に生命の息吹を与えているかのようだ。


 ふと、昨日までの激動の日々が思い出される。武闘会での戦い、ドロシーとの結婚、そして逃避行。まるで長い夢のような出来事の連続だった。しかし今、この穏やかな朝の中で、それらすべてが現実だったことを実感する。


 その時だった――――。


「旦那様! 逃げてください! ヌチ・ギが来ました!」


 いきなりアバドンからの緊急通信が、この穏やかな時間を破った。


 え……?


 この穏やかな情景とその切迫した声のギャップに俺は混乱し、事態を把握するのに時間がかかった。


「もう近くにいるはずです! 急いで!!」


 慌てて辺りを見回すと、朝もやの向こうに小さな人影が蠢いている。その姿は、この世界の平和を脅かす不吉な不気味さを帯びていた。



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