「どうしたの? 顔が青いよ?
どうしてそれを……?
やはりこの男、組織の人間なのか……?
彼は混乱して言葉を失った。
「そうだよ。俺は組織の人間さ。この国を実質的に支配している組織のね」
浅倉喜代蔵はニタニタしながら言った。
まるで心を読んでいるかのようだ。
悟られている……
いや、もしかしてアルトラか?
心を読むアルトラがあったって不思議じゃない……
くそ、この状況、いったいどうすれば……
ウツロの思考回路はますます乱された。
「安心しな、ウツロくん。これはアルトラじゃない。俺は予想して君の考えていることを当てているだけだよ」
「……」
ウツロは恐怖に加え、
「俺はその組織のナンバー2、
ウツロは相変わらず固まったままだが、もしやと思うところがあった。
「そう、これは『試験』なんだ、ウツロくん。君が閣下のお
ウツロは
それは目の前にいる中年男にではなく、『閣下』という単語に対してだった。
日本を支配するとまでいうその組織のトップ、
まるで異次元だ……
俺なんかには想像すらつかない……
そう思うと、あまりの
しかし浅倉喜代蔵は、そんなウツロのしぐさに満足そうだった。
「こわいでしょ? マジでこわいんだよ、あの人。この俺ですら、気分
何が言いたいんだ、この男は?
ウツロは口を
「閣下もじゅうぶん、わかっているんだよ。俺に手え出したら、ただじゃすまないってことをね。つまり、閣下には負けるけど、俺もかなりヤバいってこと。何が言いたいか、わかる?」
言いたいことはわかってきたが、いちいちあおるのはやめろ。
いや、これも
ウツロは
「俺はね、ウツロくん……その気になれば、次の瞬間、君をこの世から消すことができる……ひとかけらの肉も残さずにね……それくらい強力なアルトラを持ってるってことだよ」
浅倉喜代蔵は顔を寄せ、スローモーションのように言った。
ウツロは飲んだ生唾がのどにつかえそうな感覚に
「どうする? 虫を
浅倉喜代蔵はヘラヘラしている。
いけない、このままでは飲み込まれる……
どうする?
この男の言うとおり、アルトラを出して戦うか?
いや、やめたほうがいい……
理由はわからないが、俺の体がそう言っている……
これまでの
とにかく、この男と戦うのだけは、絶対にやめろ、と……
「試験とは……」
「ん?」
「あなたは試験とおっしゃった……その内容を、教えていただきたい……!」
「……」
細胞が戦闘を止める以上、この男の提案を飲むしかない……
山のように地面に食らいつく体をやっと動かし、ウツロはイチかバチかの
「面白い……素敵だねえ、ウツロくん。そのがんばっている感じ、気に入ったよ。試験の内容はね、閣下から質問を一つ授かってきたんだ。それを君に答えてもらって、その解答に俺が満足すれば、この場で君に
浅倉喜代蔵は
「君にはひき肉になってもらうよ?」
その
逆らってはならない、逆らえば、すなわち……
「いいかな? いいなら、その質問を言うよ?」
ウツロは緊張で
「……お願いします」
唾も飲み込めなくなった口で、そう言った。
それを受け、浅倉喜代蔵は
「ウツロくん、君は、自分が生まれてきたことを、不幸だと思うかい?」
「……」
意外な内容に、ウツロは驚いた。
しかし、心の
(『第36話 アップグレード』へ続く)