「さあ、
ウツロはこのように、逆襲を宣言した。
「じょ、上等だよ……ウツロおおおっ……!」
万城目日和が突進する。
しかしそれは、現実として破れかぶれそのものだった。
「死ねえっ――!」
トカゲの鋭い爪が振り下ろされる。
だが――
「あれ……?」
いない、毒虫の戦士が。
「うしろだ」
「はへっ……?」
振り向くと確かに、そこに立っている。
「早すぎるかな? いや、ひょっとしたら、おまえのほうがとろいのかもな」
「……っ!」
余裕極まりないウツロに、万城目日和は牙ではぎしりをした。
「くっ、くっそおおおっ!」
岩石のような拳が、矢継早に連打を放つ。
ウツロはそれを、ハエを振り払うようにいなしていく。
「どうした、万城目日和? 父の仇を取りたいんじゃないのか?」
「ぐっ……きっ、さっ、まあああああっ……!」
彼の挑発、その意図は断じて、彼女を侮辱するためのものではない。
むしろ、その逆。
答えを見出してほしい。
その思いからだった。
万城目日和にはわかっている、嫌というほどに。
そのいたわりの精神がやはり、彼女の心をズタズタに引き裂き、傷つけるのだ。
認識の不一致、それは理解している。
だが、こうなってしまうのだ、結果として。
二人ともそれが、何よりももどかしかった。
ウツロはついに片手で、重い打撃を次々と払っていく。
「ちく、しょ……」
トカゲのまなこから涙がしたたり落ちる。
「……」
加速する連打。
しかし、もう勝負など決まりきっていた。
「ちくしょう、ちくしょう……」
「万城目日和……」
ひざから地面へと崩れ落ちる。
「うっ、ううっ……」
ひざがしらを握り、滝のように落涙する。
「なんで、なんでだ……? これじゃあ、俺がいままでやってきたことは? てめえの親父から、それこそ死ぬ思いで技を盗んだってえのに? このザマはなんだよ? 何の意味があった? 俺の人生に? 俺の存在に? なあ、ウツロお、教えてくれ……教えてくれよおおおっ……!」
「万城目日和……」
激しく嗚咽しながら、自身の本心を吐露する。
いや、それはあるいは、「白状」というほうが正確かもしれなかった。
「苦しい、苦しい……なあ、ウツロお、俺の人生を、返してくれよおおおっ……!」
「……」
ウツロは思った、あのときの自分と、そっくりだ……
父に人生を蹂躙され、奴隷道徳へ陥り、蒙に入っていた、あのときと。
あのとき、俺を救ってくれたのは、そう、
平穏な生活の中で忘れかけていた感情が、彼の心の中にわき起こった。
「うっ、ううっ……
赤ん坊のように泣きじゃくりつづける。
ウツロはだんだんと、腹が立ってきた。
それはほかでもない、かつての自分の姿を投影したからだ。
「ううっ、くそっ、くそっ……俺なんか、俺なんかあっ……生まれてこなければ、よかったんだあっ……!」
ぺしんっ!
「……」
トカゲのほほを、平手が打った――
「めそめそ、してんじゃあ、ねえええええっ……!」