週の始めとは憂鬱なもの。
それもあいまって、ウツロは思索部の部室で物思いにふけっていた。
どんな気持ちでいるだろう?
あんなことになって……
きっと傷ついている。
俺が何か、声をかけてあげなければ。
そんなふうに思って、うしろのほうへさりげなく視線を移した。
「うわ――」
目の前に彼女の顔があった。
化けているかっこうだとだいぶ雰囲気は違うが、ウツロのほうをじっと見つめている。
「なあ、ウツロ」
「な、なんだ?」
「ふふっ」
万城目日和はほくそ笑む。
「昨日はうれしかったぜ? おまえ、見かけによらずだいたんなのな」
「悪いかよ」
「やっぱ最高だよ、ウツロ」
「ん……」
唇がとがっている。
ウツロは生唾を飲み込んだ。
「俺のこと、心配してくれてただろ?」
「当たり前だろう?」
「おまえだって、へこんでるクセによ」
「へこんださ、そりゃ」
「なんで過去形?」
「おまえと、その……」
「そんなによかった? 俺」
「……すごく」
「わ~お、うれしいねえ。な、な、
「無体だな、日和。比べられるものじゃないだろう?」
「ふうん、やさしいんだな」
「近いぞ、誰かが来たら……」
「どうだっていいじゃん、そんなこと……」
「ん……」
「かわいい、ウツロ……」
「あ……」
キリィっと、部室のドアが軋んだ。
「……」
世にもおぞましいものを見ているような形相だ。
「あ、いや、これは……」
ウツロは青い顔になって弁明をしようとしたが、
「死ね」
少女は制服をひるがえして去っていった。
「ああ、終わった……」
ひざが震える。
「あ~あ、でも、これでウツロは俺のものな。だろ?」
万城目日和はますますしな垂れかかってくる。
「龍子、待ってくれ! これには深い理由が――」
ウツロは彼女をおしのけて、真田龍子の背中を追った。
「ちぇ~」
万城目日和はがっかりしたが、ウツロとのなれそめを思い出して、少し顔が赤らんだ。
時間が時間だったから、彼の荷物もまとめて、早々に部屋を去った。
「トイレ、寄ってくか」
ズタズタにされていたトカゲ少女の心は、だいぶ楽になっていたのである。