「殺す……俺に逆らうやつらは、みんな殺す……っ!」
(そうです、ウツロさま。あなたさまの高尚なるご思想を理解できない輩など、まとめて葬り去ってしまうのがよろしいでしょう)
ディオティマが放った寄生生物・ティレシアスの奸計により、ウツロはすっかりとわれを忘れてしまっていた。
「
「ええ、何者かがウツロに取りつき、操っているようだね」
「てことは、そいつを引っぺがしてしまいさえすれば、もしかしたら……」
「そうとくれば、みなさんで連携すれば……!」
「虎太郎くんの言うとおり、全員で一度ウツロの動きを封じ、その何者かの正体を探り当てるのよ」
星川雅がすぐに作戦の方向性を示した。
(ま、まずい。このままでは……)
焦ったのは当のティレシアスである。
状況として仕方がなかったとはいえ、自分の存在に感づかれてしまった。
ささやくことしかできない自分には、他者を操るしか戦うすべがない。
ここはひとつ……
(ウツロさま、あれをやるのです……! ウツロさまの偉大な御業を、連中に見せつけてさしあげなさい……!)
首筋を介して彼は「命令」した。
ウツロボーグの額に生えている「角」が赤く光る。
「フェブリスのくしゃみ……!」
「羽」が開き、何かがうごめきだす。
「おい、ウツロのやつ、なんか出す気だぞ……!」
「まずい、何かとてつもなく、危険な予感がする……!」
南柾樹と星川雅をはじめ、後方の一同はその予兆にみじろいだ。
「イージス!」
機転をきかせた真田虎太郎がバリアーを張る。
次の瞬間――
「食らえっ――!」
「なっ――!」
ウツロボーグの体から、赤く光るシャボン玉のようなものが大量に放たれた。
それは弾丸のように、放射状に拡散する。
後方の4人はイージスのバリアーで難を逃れた。
しかし――
「うっ……」
中間にいた
皮膚が赤紫色に変色し、火傷をしたようにただれている。
「日和! 壱騎さん!」
(くっくっく。フェブリスのくしゃみはあやゆる生物に対し、猛毒や麻痺など生命維持の手段を奪う効果をもたらす。人間の言葉で言えばそう、『バステ』だな。あれはゲームの用語だったか。ふふ、そう、これはゲームだ。楽しい楽しい、わたしのゲーム。くくっ、これだから人間をいたぶるのはやめられない。自分たちだけが生き物だとのぼせあがっている存在を踏みにじり、蹂躙するのは)
「二人とも、いまわたしが――!」
真田龍子がアルトラの能力で治癒を試みるべく、バリアーの中から出ようとする。
「おっと、龍子さん。虎太郎くんの結界からは出ないほうが身のためですよ?」
ウツロボーグの口が機械的に動いた。
相貌は白目をむいたようになっている。
「てめぇ、何もんだっ!?」
激高する南柾樹に、「腹話術師」は悠々と語り出す。
「わたしの名はティレシアス。お察しのとおりこのウツロに取りついている、寄生生物の一種です。いまはその口を借り、こうしてあなたがたにお話ししているのですよ」
こうして彼はとくとくと、自分のことを話しはじめた。