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婚儀の夜〜嫉妬

*注意* できるだけ表現をマイルドにいたしましたが、後半の2話は直接的な表現を含めており、R要素強めの内容となっております。苦手な方は読み飛ばしてくださっても問題ありません。


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 小さな唇がぎこちなく喘ぐのがわかる。

 二枚の花弁の唇を幾度か啄んだあと、押し割って肉厚の舌先を滑り込ませた。丁寧に歯列をなぞり、逃げる舌を捕まえて舌先を絡ませる。


 初めての濃密な口付けに翻弄されているのだろう。

 ユフィリアは苦しげに硬く目を閉じて、むぅ……と唸り声を漏らしながらも健気にレオヴァルトを受け止めようとしている。


「ユフィリア」

「……ぇ……」

「口付ける時は、もっと大きく開け」

「こ、こう……?」


 指示されるままに桜色の花弁の口が開くと、レオヴァルトの唇がそれを隙間なく塞いだ。互いの舌と舌とを絡ませ、追いかけて、優しく吸い上げる。


「……んぅ……っ」

「ああ、上手だ」


 その言葉に反応するようにユフィリアの腰がうねり、反動で豊かな胸元がふるりと揺れた。舌を口内に這わせながら、大きくて硬い手が左胸の膨らみに触れる。


「……!」


 初めての感覚に驚いたのか、ユフィリアはレオヴァルトの唇から自分のそれを無理からに離した。銀色の糸を引く口元を大きく開いたまま、吐息とともに喉の奥から艶かしい声が漏れる。


「その声はいいな。もっと聞かせてくれ」

「声?……私っ、どうして……恥ずかしい! もっとだなんて無理っ」


 無理、無理、無理と繰り返すユフィリアに、レオヴァルトはまた「やれやれ」と嘆息する。自身のブレーの腰紐をするりと引き抜くと、ユフィリアの両手と寝台の上部を素早く繋ぎ止めた。


「ちょっ……何するの……!」


 驚いたユフィリアが重い睫毛を持ち上げて瞬く。


「痛まないように緩めに縛っておいた。行為のあいだ、あなたのようなじゃじゃ馬は大人しくしていてもらう。それにこうしておけば、私は両手が使えるからな」


「なっ……そんなことしなくたって、私っ、もう暴れないわよ?!」


 強めの言葉を放って抵抗するも、レオヴァルトは軽く微笑わらって受け流した。戸惑いを見せるユフィリアの耳朶を喰み、首筋に舌を這わせながら膚着の上に大きな手を滑らせていく。


「や?! あ……っ」

「ここをしっかりほぐしておかないと、後がツラいぞ」

「だって、レオがそんなところ、触ろうとするんだもん……!」

「こらッ、脚を楽にしろ。私と繋がって、グラシアを元に戻したいのだろう?」


 ユフィリアとて交わりの教育を受けており、閨事の知識はある程度得ている。

 けれど机上で学ぶ事と実際の行為とがすぐに結びつくものではない…… 何せ、このような感覚も経験も全て、《今世では》初めてなのだ。


「……くっ、ふぅっ……」


 前世で愛したあの第二王子とも、このような行為をしていたのだろうか。

 レオヴァルトに触れられるのは嫌じゃない、寧ろ、経験したことのない初めての心地良さに驚き、目眩がする。

 けれど──。

 愛するあの人の口づけや愛撫は、これよりもっと幸せなものだったのだろうか。

 そんな想いが、レオヴァルトに抱かれる恥辱と戸惑いの中で、ないまぜになっている。


 ユフィリアの自由を奪ったのを良いことに、レオヴァルトは眼下に横たわるユフィリアの肌に張り付いた膚着のボタンを易々と外した。ボタンが一つ外されるごとに膚着の下に窮屈に収まっていた豊かな胸が顕になっていく。


 ついに裸身が空気に晒され、ユフィリアは反射的に身を固くした。

 胸元がすうすうする。レオヴァルトに素肌を見られている。

 あまりの恥ずかしさに、頬を赤く染めて視線を脇に逸らせた。


 綺麗だと口にする前に、レオヴァルトの独占欲が欲情に塗れて鬱勃した。

 清らかな聖女の──ユフィリアの全てを自分だけのものにしたい。

 自身が呆れるほど貪欲なのに気付いて、レオヴァルトは胸の奥で苦笑する。


 ──可愛いユフィリアが乱れる姿を知るのは、夫である私だけでいい。


 ユフィリアが「今でも愛している」と言った、どこの誰とも知れないその相手が憎らしいとさえ思う。

 身体を抱き潰して自分のものにしたとしても、その男の存在が彼女の胸の中にある限り、肝心のユフィリアの心を手に入れる事はできないのだ。


「……くそっ」


 やり場のない感情をぶつけるように、胸の膨らみに唇を寄せて乱暴に責め立てた。橙色の光に照らされた身体が素直に反応してびくびくと腰元を震わせる。


 顔を上げれば、頬を紅く染めたユフィリアが縋るように瞳を潤ませている。

 きつく縛り上げているわけではないものの、開け広げられた膚着の下に全てを晒して両手を頭上で拘束される姿は淫らで、哀れにも見える。


「レオ…………、抵抗、しないから……これ、ほどいて……?」


 けれど橙色の薄灯りの下、薄っすらと汗ばんだ胸元に乱れた髪を散らし、心許ない瞳でレオヴァルトを見つめる無垢な色香は吐息が漏れるほどに美しく、艶かしい。


「いや、だめだ。私に翻弄されるあなたを、その姿のまま見ていたい」

「…………っ」


 ユフィリアの身体と表情が身構える。

 レオヴァルトはきつく眉根を寄せ、冷淡に目を細めた。


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