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第36話 明け透けな話

 カロリーネのお茶会でパトリツィアと同じテーブルに座った女性は、カロリーネの親戚の若い令嬢で近々結婚予定と自己紹介した。


「ご結婚おめでとうございます。お祝いに旦那様をしっかりとつかまえておく方法をお教えしますね」

「ええ、そんな方法があるのでしたら、是非!」


 その令嬢は、カロリーネの話に興味津々で話に喰らいついてきた。


「我が国では女性に『閨は旦那様にお任せしなさい』っていうだけですが、私はそれではいけないと思いますの。子供を作るためだけに身体を繋げるって無味乾燥だと思いませんか? せっかくなら交接を楽しまなくては」

「た、楽しむ?!」

「そうですよ。ここは無礼講で話をさせてもらうわね。男性器が女性器にされて女性は痛いだけ、なんて駄目よ。旦那様に愛撫してもらって気持ちよくなって、逆に旦那様にも気持ちよくなってもらう。そうする事で旦那様は貴女にメロメロになって愛人なんて作らない事、間違いなしですわ」


 パトリツィアは話についていけなかったが、もう令嬢はカロリーネの話に興味津々のようだった。


「でも旦那様にも気持ちよくなってもらうとはどのようにするんですの?」

「殿方は挿入するだけでも気持ちいいでしょうよ。でも、そのやり方にも色々あるのよ。ほら、ご覧になって。特別にお見せするわ」


 カロリーネは色々な体位で男女が繋がっている図が載っている本を見せた。その図には、男性器が女性器に入っている所がくっきりと描かれていた。パトリツィアは、閨の教本でもそんなあからさまな描写を見たことがなかったので、驚いた。何より、ルイトポルトはた事に気付いてしまい、うろたえてしまった。


「あ、あの……お継母様、これは一体……?!」

「男性器を女性器に挿入している様子ですよ。妃殿下も結婚されているのですから、ご存知でしょう?」


 パトリツィアが混乱しているのを見てカロリーネの口角は上がった。彼女は愉悦の表情をしながら、どのように男性が女性と身体を繋げて子種を授けるのか、パトリツィアに具体的に語った。


 令嬢が顔を赤くして興奮しているのに対して、パトリツィアの顔色は悪くなっていった。その様子をカロリーネはほくそ笑んで見た。


「あら、ご結婚されている妃殿下には、とっくにお分かりになっている事なのに、失礼しました」

「……あ、あの……急に調子が悪くなりました……失礼します」


 パトリツィアはどうしてルイトポルトが自分に子種を授けないのか、十分理解できた。政敵の娘との間に子供ができては困るからだ。でも理性で理解できても、本当の妻になれていない事が悲しくて仕方なく、態度を取り繕う余裕もなくなってしまった。パトリツィアが這う這うの体で退席していくと、カロリーネは笑い始めた。


「やっぱりまだヤってなかったみたいね! フフフフ!」


 この話はすぐにベネディクトに伝わり、今度はルイトポルトに直接、最後通牒を突きつけた。


「殿下、パトリツィアを抱いていないそうですね」

「宰相! いくら貴方がパトリツィアの父だと言っても、無礼だぞ!」

「王国の唯一の世継ぎの太子が後継ぎを作る義務を果たしていないので、宰相としてご無礼を承知の上で苦言を申し上げているのです」

「でもパトリツィアはまだ18歳で輿入れしてきたばかりだ」

「どうしてもパトリツィアと子作りされないというなら、他の令嬢を側室として入れるしかありませんね」

「そんな事しても私はパトリツィア以外の女性と義務を果たすつもりはないぞ!」

「殿下がその気がなくてもどうとでもなるんですよ……ククク……」


 ベネディクトはニヤニヤしながらルイトポルトに言い放ち、王太子の執務室を出て行ったが、外で待っていたルイトポルトの側近アントンを見て話しかけた。


「君は父上マンダーシャイド伯爵の伝手で殿下の側近をしているはずだったな? 辞めてもらった方がよさそうだね」

「お言葉ですが、殿下は既に成人された王族です。に殿下の側近の生殺与奪権があるはずはないでしょう?」

「そうきましたか。陛下にお考えを聞いてみますよ」


 ベネディクトは忌々しそうに言い捨てて去って行った。

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