「うわぁ~、ここがくそぽ……アルフレッド王子の部屋!」
エルに案内され、くそぽっちゃりの部屋にやってきた。
部屋と言うよりは大図書館で下から上までずらりと赤茶色の本棚があり、その中には色とりどりの本がぎっしりと並べられていた。
吹き抜けた二階もあり、脚立を使えば私でも一番上の本を取れそうだった。
床はワインレッドの絨毯、大きな窓もあるようだけど、本が日焼けしないようにこれまたワインレッドのカーテンが閉められている。
それだけで本好きなのが伝わってくる。
一体、何処で寝ているのかベッドのべの字もない。
辛うじて四人用のテーブルと備え付けの椅子があるくらいだ。
本棚に入り切らないのかテーブルには本がそのまま積まれている。
「僕も久しぶりに入りましたが、兄さんまた本を増やしましたね」
「これじゃあ探すのも骨が折れそう……」
でもまだ折れるには早い。とりあえず一冊本棚から本を手に取って読んでみることにした。
大学の赤本を彷彿とさせる分厚くて赤い本。
これで殴られたら一溜りもない。
「ふむふむ……なるほどなるほど」
「何かありましたか?」
エルが気になったのか近付いてくる。
そう言えば出会った時と今の口調が違うような気もするけどこっちが本当のエルなのかな。
なんて考える余裕はある。
何故ならば!
「読めない……」
私は本を開いたまま、エルを見つめ瞳をうるうるさせることしか出来なかったのだ。
難しい漢字が使われているだけならまだ良かった。
でも文字一つ一つが見たことのないもので、どうしようもなかった。
今考えればそれは当たり前のこと。
言語が通じているのも不思議に思わなければいけなかったのに、色々遭ったせいで考えもしていなかった。
「ギリカ文字、ですか……僕も読めそうにないですね」
「そっか。それよりエル王子って初めにあった頃はもっと男らしく喋っていたのにどうして今はそうなんですか?」
困り顔のエルに向かって、私は悪戯めいて嗤う。
「むぐっ!? そ、それはマリアが獣人だと思ったから日和ってはいけないと思ってゴルさんをイメージして喋ってたんです……川の水を掛けられたのもパニックになって水魔法って言ってただけだから……それと王子は要らない、エルのままでお願いします!」
慌てふためくエル王子。
これはこれで面白くて可愛い。
お陰で聞かなくてもあの時のことを教えてくれたよ。
確かに異端と思われている獣人が川で水浴びしてると思えばパニくりもするよね。
ましてや両親の仇に似ているのなら尚更だ。
「ふふ、分かった。でも他の人の前では王子を付けないと不敬罪とかにならないかな?」
「大丈夫だよ。僕たちは名ばかりの王族だからね。今はおじいちゃんが政権を握っているし」
王子をつけないと不敬罪になるかどうか訊ねてみると、エルは首を左右に振ってやるせない表情を見せる。
何かあったのかな。
「そうなんだ?」
「うん。マリアには知っておいて欲しいから、そのことについて座りながら少し話をしましょうか」
エルがテーブルを指差し、私たちはテーブルに備え付けてある木製の椅子私たちは向かい合うように座った。