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14. ゴブリン・ゴブリン


 俺、ミハエルのお兄さん、エリスの三人はしばらくゴブリン狩りを続けた。

 ミハエルさんがまず一撃入れて、俺とエリス嬢がその後、追加攻撃をして叩くのだ。

 ゴブリンを一体ずつ仕留めていると、なかなかどうして楽な戦闘だった。

 やはり一人より三人なのだ。

 そりゃ向こうが一回攻撃している間に三回攻撃できるのだし、有利に決まっている。


 そしてハズキさんがログインしてくる。

 フレンド登録のシステム設定で通知がくるようになっていた。

 さっと合流するために一度町まで戻る。

 比較的近いから助かる。


 ハズキさんは相変わらず緑の黒髪ロングがお美しい。

 笑顔も素敵でうっとりしちゃいそうだ。

 いかんいかん、見とれていた。


「こんばんは」

「こんばんは!」

「こんばんは! もうそんな時間か」

「私は、ハズキです。みなさんは?」

「俺はミハエル」

「私はエリス」


 お互いを紹介していく。

 ハズキさんはミハエルさんとエリスさんとも握手をしていた。

 お互いが頷き合う。

 エリスとハズキさんはどちらもヒーラーだけれど、メインのヒーラーはエリスさんということになった。


「そういえばハズキさんって『ハヅキ』じゃないんだよね?」


 前から気になっていたことだったのでこの際聞いてしまおう。

 なんでハズキであってハヅキじゃないのか。

 実は深い意味があるのかと勘ぐってしまう。


「え、そういえばそうだね。えへへ、なんとなく」

「そっかそっか」

「別に深い意味はないよ」

「そうだったにか、なんだ」


 一般的な葉月の読みはもちろん「ハヅキ」だもんな。

 ずきとなると「葉好き」とかだろうか。

 まさか「歯好き」ではあるまい。

 武器マニアではないから「刃好き」でもないだろうし。

 うーむ。謎ではあるがまた今度本当の意味を聞いてみよう。

 聞くだけの勇気があればだけど。えへへ、ヘタレである。


「それで今どんな感じなんですか?」

「それはですね。ゴブリン退治をはじめてさ」

「うんうん」

「たまに落とす武器を溶かすとゴブリン鉄が取れてまぁまぁの武器素材になるんだ」

「なるほどねぇ」

「まあ俺は両方とも鉄の短剣だけどな」


 俺が腰を落としナイフを両手で構えてシュシュっと動いて見せてみる。

 俺とハズキさんのメイン武器は苦労して取った砂鉄製で稀少なのだ。

 量産型の劣化鉄であるゴブリン鉄よりは強い。

 ちょっとした自慢だった。


「そういえばウルさんって、両手で武器使ってますけど、利き腕とかは?」

「あー俺、な。もともと左利きで産まれてさ、でも箸と鉛筆は右手にしてる。結果として両利きみたいなもんさ」

「なるほどね」

「便利でしょ」

「はいっ」


 うんうん、とハズキさんも納得してくれる。


 左手で文字書くのって文字の構造からしてちょっと難しいのだ。

 もちろんできなくはないが。

 それで右利きとして振る舞ったほうが便利なことも多い。

 だから幼稚園まで左利きでも小学校でお箸と鉛筆を右手に矯正する。

 そういう矯正の右利き者は両利きに近いのだった。

 ということでナイフは左右どちらでもいける。

 こういうときは便利なので親には感謝している。


「それじゃあ、引き続きゴブリン狩りを」

「了解!」

「うりゃあ」


 みんなでゴブリンの森へ再び向かい、戦闘をくり広げる。

 森といってもまだ浅い部分で獣道なども多く、見通しは割と利く。

 森も日本のようにスギ、ヒノキではなく針葉樹と広葉樹がバランスよく交じっている天然の森のようだ。

 地面にはところどころに薬草やキノコも生えていて、見つけ次第、採ったりもする。

 空は晴れているけれど、木々が邪魔して上の方しか見えていない。

 なんというかよくあるゲームっぽい森だろうか。


 どんどん倒していく。

 遊軍でアタッカーのハズキさんが増えたのでかなり楽になった。

 三人よりも四人なのかな。

 パーティーとしての安定度がかなり上昇している。

 やはり六人パーティーくらいを前提に作られたゲームなのだ。

 そういうバランス調整がされているのだろう。

 最初はソロボッチの予定だったからなぁ。

 いやあソロでやらなくてよかった。効率が段違いである。


「やった、またゴブリンソードだ」

「やったね!」

「ありがとう、ハズキさん」

「えへへ」


 二人で笑い合って短剣をカチンとぶつけ合って、健闘を称える。

 笑顔が相変わらず素敵だ。

 笑い上戸とかではないが、ハズキさんは笑っているときが一番かわいい。


 倒せば倒すほど俺たち四人の連携は研ぎ澄まされていく。

 動きもよくなっていき、倒すまでの時間が短くなってくる。

 ワンサイクルが早くなると回転率はどんどん上がっていく。


 もはや機械的にゴブリンを倒している。

 そして低確率でもたまにゴブリンソードを次々をゲットして歩く。


 こうしてみるとゴブリンもちょっとずつ個体差などがある。

 ゴブリンソードだったり棍棒だったり、素手なんて個体もいる。

 身長も俺たちより小さいが、その小ささがちょっとずつ違うのだ。

 なぜか全員オスに見えるのは共通点だろうか。

 メスゴブリンってレアモンスターなのかもしれない。

 そういうイベントとかもありそうだ。


 まだゲーム開始直後でここまで攻略を進めている人は少ないので、かなり狩場を独占できた。

 俺たちはレベルはトップ集団と同じくらい。

 それでもって武器がいいのを使っているため、ちょっとだけ有利なのだ。

 ほとんどのボリュームゾーンの冒険者は青銅製の武器だったりする。

 なぜなら鉄武器がほとんど流通していないからだ。

 そこにゴブリン鉄を少し提供しているという状況にあった。


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