「ふぅ倒した倒した、お疲れさん」
「ありがと、ウルさん」
「ああ、んじゃあ、町ブラでもしましょうかね。お嬢さんたち」
「もう、ミハエルさんったら」
「先にムルリックさんの所よるぞ」
「はーい」
王都トライセンの広場にいるムルリックさんにゴブリンソードを束で渡した。
「はい、これ溶かしてゴブリン鉄に」
「いいですよ」
「作業の間は、俺たちは露店巡りでもしてるから」
「了解です~」
みんなで露店を冷やかして歩く。
薬草、キノコなどが売られている。
森の浅い所でも結構キノコが生えていて、ポーションなどの材料になるのだ。
もちろん食用のもある。
それで毒キノコもあったりして、それは毒ポーションや解毒ポーションの材料に使う。
初心者ポーションもあるな。
初心者ポーション+は見当たらない。
特にこのシイタケみたいなキノコは焼いて食べるとうまいらしい。
店主が盛んに宣伝していた。
あったあった、さっきのキノコ。
「これ一つください」
「あいよ」
「もぐもぐ。うまい!」
「もう、ウルさんったら」
「えへへ」
さっきのキノコが串焼きになっていたので一本買った。
こういう露店があるから露店巡りはやめられない。
けっこう旨味が出てて美味しかった。
そんな風に見て歩いていたんだけど、ひとり気になる利用者がいる。
その人は店主に話しかけては、よくメモを取っていたのだ。
新聞記者みたいでもあるが、なんとなく違う気もする。
「あの人なんだけど」
「どれどれ」
俺がハズキさんに聞いてみる。
「本当だ、なんだろうね、ハズキさん」
「情報屋かな」
「それだ」
俺が欲しい欲しいと言っていた情報屋。
もしかしたらそれかもしれない。
「すみません!」
「あ、どうもどうも」
向こうから声をかけてきたので、ちょっとびっくりしてしまった。
相手の女性はピンク髪のふわふわのセミロング、緑目。
俺より少し小さい。
丸顔で口元は笑っている。
なんというか大変かわいらしい。
まだ少女といってもいいかな、だいぶ若く見える。見えるだけかもしれないけど。
下から見上げる風にして、目をぱちくりさせる。
「なかなか立派な装備具合ですわね」
「そういえば、そうですね」
「どこまで攻略とか進んでます?」
「ゴブリンを少々」
「なるほど」
「ゴブリン鉄も少々ですね」
「ふむ」
その目はなかなかに情報をつかみ取ろうとする鋭い視線だった。
ゴブリンの群れもちょっと飽きてきた。
ピンク髪のその女性は俺たちを見てにっこりと笑顔を浮かべている。
お眼鏡にはかなったのだろうか、眼鏡は掛けていないけど。
さらに微笑を浮かべてぽつりと零した。
「その先にはゴブリンキング、出ますよ」
「なんと」
「詳細は有料で~す♪」
「なるほど、情報屋だ」
「おいくら?」
「100ptでいい?」
「うん。はじめてのご利用、まいどあり!」
「毎度じゃないけどな」
「あほんとだ、あはは」
俺は代金100ptを払って、詳細を教えてもらった。
ゴブリンキングはまず単独で出る。
ゴブリンよりだいぶ大型でHPが多い。
複数のプレイヤーで囲んで叩くのが効率がいい。
パーティーだと望ましい。
倒せた場合にはレアドロップが個人ごとに判定がある。
過去の例は少ないが、ドロップにはそこそこ期待できるという。
中にはユニーク級のものもある。ただしハズレ武器なども出やすいそうで。
まだ序盤だし、それほどピーキーなのは少ないみたい。
まだ試行回数が少ないので、それほど情報もない、らしい。
俺たちより先を進むプレイヤーがすでにいるという意味でもあった。
ちょっと悔しい。
でもまあそうだろうな。廃人レベルになると、俺たちよりも先を行っていても別に不思議ではない。
いいんだ。俺たちは並みのトップレベルプレイヤーでさえあれば。
要は稼げれば十分ともいう。
「ところでお名前は?」
「私はマミよ」
「マミさんね。俺はウル」
「了解。これからも仲良くしましょ」
がっちりと固い握手を交わした。
かわいらしい笑顔付きだ。
「マミさん、俺たちトップギルド目指してるんで、よかったら、またよろしく」
「ほいよ~ん。ギルド設立するときはそれじゃ呼んでね、検討しておくわ」
「よろしくお願いします」
「素直な子は好きだよん」
できたゴブリン鉄を使って装備を限界まで強化していく。
こういうインゴットは装備作成以外にも強化にも使えるのだ。
「ムルリックさん、無理言ってすみませんが」
「いいって、いいって、代金は貰ってるし」
「そうですか、では、よろしくおねがいしますね」
「ほいよ」
俺たちは全身を鉄の銀色に固めて、なかなか強そうな見た目にもなった。
かなりの補強の鉄が入った防具類を見せびらかす。
周りの人たちはやっとゴブリン鉄の武器防具を手に入れた段階だったので、けっこう目立つ。