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いざ、ライオへ!

 翌日の朝、勇者マスカルとマルクエン、ラミッタは街中の人達に見送られながら馬車に乗った。


「このまま街道を往き、ライオに寄り、王都アムールトを目指します」


「やっと、ライオの街を拝むことが出来そうです」


 マルクエンが笑いながら話す。


「何故、ライオの街を経由するのですか?」


 ラミッタは流石に勇者相手には敬語だ。


「アムールトまではライオから3日掛かります。物資の補充と、休息のためですね。先程の街は駐在の軍隊も、冒険者も多かったので滞在しましたが」


 そこまでマスカルが言うと、魔道士アレラが補足する。


「我々を狙う魔人に襲われた場合、宿場町を危険に巻き込む可能性があるので、箱を壊す時以外は、極力野営をしています」


「なるほど、勇者様も苦労が絶えませんね」


 少し勇者を見直したラミッタ。


「ライオで一泊し、物資を整え、そのままアムールトを目指します」


 続けてアレラが言うので、マルクエンは頷く。


「確かに、大きな街ならば安心ですね」


 5人は馬車に揺られた。勇者パーティの剣士ゴーダは寡黙な男で、雑談にも乗ってこないまま、馬車を運転する。


 ラミッタも目を閉じて荷台にもたれかかっていた。


 道は舗装されていたので、思ったよりも揺れが少ない。


 途中何回か休憩をはさみ、昼過ぎぐらいには無事ライオの街が見えてきた。


 立派な壁が街をぐるりと囲み、高い建物がチラホラと頭を覗かせている。


「おぉ、あれが……」


 マルクエンはイーヌ王国の王都にも負けないような街に感心した。


 街の入り口には衛兵が立っており、一人ひとりの身分確認こそしていなかったが、不審な輩に目を光らせている。


 マスカルは馬車から降りて、衛兵に声をかけた。


「見回りお疲れ様です。勇者マスカルです」


 声を掛けられた兵士は、一瞬驚いた後、姿勢を正して敬礼する。


「マスカル様!! お努めお疲れ様であります!!」


「何か変わったことはありませんでしたか?」


「はっ!! ここ数日、魔人の目撃等はありません」


 その言葉を聞いてホッとするマスカル。


「それはなによりです」


 馬車を業者に預け、ホテルまで向かうマスカル達。荷物を預けてから話をした。


「旅支度は我々が行いますので、ラミッタさんとマルクエンさんは個人的に必要なものを揃えておいて下さい」


「わかりました」


 マスカル達と別行動になるマルクエンとラミッタ。


「ラミッタ、何か欲しい物はあるのか?」


「急に言われても思い浮かばないわね。とりあえず、街でも見てみましょうか」


「あぁ、分かった」


 マルクエンとラミッタは街を散策することにした。


 中央通り付近には、店や露天商がずらりと並び、食品から武器に至るまで売り買いされている。


「中々発展した街ね」


「そうだな、こんな街。イーヌでも中々見ることは無かったぞ」


 二人は周りを見歩きながら話をしていた。


「武器や防具はジャガの街から届くから良いとして、必要なもの……。何かあるかしら?」


「特に思いつかないんだよな」


「生活雑貨も、薬もあるしね」


 通りの端まで歩くと、ふと甘い匂いにラミッタの視線が動く。


「あら、何かしらあれ……」


 見えるのは黄金色こがねいろのガラス。ではなく、ベッコウ飴を使った飴細工のパフォーマンスだった。


「え、何あれ!?」


「見たこと無いのか? ベッコウ飴だぞ」


「飴なの!?」


 そう言えばラミッタは甘いものが好きだったなと思い出したマルクエンは提案してみる。


「どうする? 買っていくか?」


「いや、この年で飴なんて……」


 強がるラミッタだったが、欲しそうにしているのは見え見えだ。


「私も食べたくなってな。良かったら一緒にどうだ?」


「そ、そう。それなら仕方ないわね。おこちゃまの騎士様に付き合ってあげるわよ」


 段々とラミッタの扱いが上手くなっていくマルクエン。


「すみません。飴を二つ欲しいのですが」


 露天の若い女店主がそれを聞いてニコリと笑う。


「あいよっ!! 毎度あり!! 形はどうしますかね?」


「選べるのかしら?」


「あまり凝ったのは作れませんが、ある程度なら」


「それじゃ、お手並み拝見のお任せで」


 ラミッタがニヤリと笑うと、女店主は任せろとばかりにウィンクをした。


 鍋から甘い匂いの飴が持ち手の棒にドロリと垂れる。ラミッタは興味深そうに見ていた。


 そして、何の形が出来るだろうと思っていたら、段々と出来上がるそれに赤面する。


「なっ、その形って……」


「ベタですけどハートでーす。お二人さんカップルですよね?」


「なっ、ち、ちが、違うから!!!」


 それを聞いて女店主は額に手を当てた。


「あちゃー!! てっきりカップル冒険者だとばかり!!」


「違ーう!!!」


 ラミッタは赤面しながら大声を出す。


「まぁまぁ、嫌でしたら別のをお作りしますので」


「味は同じなわけだし、これで良いんじゃないかラミッタ?」


「なっ、二人並んでハート型の飴舐めて帰れっての!? こ、このド変態卑猥野郎!!」


 ラミッタは自分で何を言っているのか分からない状態だった。


「まぁまぁ、ラミッタは別の形にしてもらえば良いじゃないか」


「いや、その!! 待つのもアレだし、お任せって言ったの私だし、責任は取るわ!!」


 マルクエンとラミッタはハート型の飴を受け取った。

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