目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第10話 没落令嬢と第三の選択肢


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【閑古鳥の少年】クリア

特殊条件

③ 【NPCキュービックの逃走を幇助する】

の達成を確認。


特定の場所でイベントが発生します


条件『【キカイ】NPCの好感度を一定以上にする』を達成しました。

スタイルスキル【禁忌に手を伸ばす者】を獲得しました。


効果:強制装備

NPCからのカルマ値上昇、NPCカテゴリ【キカイ】との会話に修正



警告


犯罪者の度数を示す数値【カルマ値】が一定以上を越えたため、あなたは犯罪者になりました。

以降、ギルドに指名手配されるほか、条件を満たすまで施設の使用が制限されます。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



うーーーん。

情報がいっぱいだあ……。

特殊イベントおかわりの予告、スタイル解禁に、まさかの犯罪者扱いとてんこ盛り。


ただ、それよりも今は……。


「うわあああああああああああん、リーーーズぅううう! こめんねええええええ!!」


「おーおーよーーしよーーし……大丈夫だぞー、気にしてないぞー」


この大泣きするキュウを泣き止ませないとだ。

追手は何とかまいたけど、このままだと声でボロが出てしまう。


「だってえ、だってえ、オイラのせいだよおおお、オイラが無理を言って頼んだからリーズをまきこんじゃって……このままじゃ一緒につかまっちゃうよう……」


「ああもう、気にしてないってば! 子供泣かしてお金稼ぐとか死んでも御免だから!」


騎士を敵に回したことに後悔はしていないけど……由々しき事態だ。

施設の利用が制限されたってことは、真っ当な手段ではお金を稼ぐのが難しくなってしまったってことだ。

一応、この子を騎士団に差し出せば打破できるんだろうけど、そんなのダメに決まってる。


かといって、私の家に匿っても時間稼ぎにしかならない。

私を捜索しているガチ勢に特定されれば、なし崩し的に騎士団もやってきちゃうからね。


……となれば、第3の選択肢。

かなり出たとこ勝負になるけど、やるしかないか。


「ねえ、キュウ? 1つお願いがあるんだけど」


「ふえっ、なに……?」


「あなたのおじいさまに、私を紹介してくれない?」


今いちばん安全なのはどこか。

それを考えると必然、彼の家になるわけだ。

さて、そんな私の言葉を聞いたキュウは鼻を軽くすすってから……


「……いいけど、条件があるよ」


「条件?」


「そう、おじいちゃん……もういいか、ドクターはオイラみたいな【キカイ】はスキだけどニンゲンは大嫌いなんだ」


ヘンクツってか。

まあそれはいいわよ。

最悪キュービックだけでも保護してくれれば万々歳だし。


「だからきっと、いろんなことを試してくると思う……それを超える自信は、ある?」


「なーんだ、そういうこと……」


そんなもん、返事は1つだ。


「もっちろん! 私を誰だとおもってるのよ!」


「【メチャクチャ錬金術士】のリーズ!」


ははは……こいつめ。



貴族街の近くには、とてつもなくおっきな河川敷がある。

この街【リヒターゼン】の名物である大水源だ。


聞いたところによれば、ここから流れた水が、私たちの街のあちらこちらへ行き、また合流してここへ戻ってくるのだという。


「うわあ、近くに山もないのにすごい水の量!」


その源流はまるで滝と見紛うばかり!

声を張り上げてなきゃ会話も難しそうだ!


「こんな水、どっから引いてるのやら……!」


「オイラ知ってるよ! 王宮にあるアイテムの力で生み出して、循環させてるんだって!」


「そんなアイテムがあるの!?」


「うん、【久遠の水球】っていうの! 錬金術の傑作だって、ドクターが言ってた」


はえーすっごい。

そういえば錬金術って、モトはそういう永久機関を作ろうとしたって説もあるんだっけ?

けれど解き明かせた理論はどれもこれも永久機関の存在を否定するものばかりで、ついには錬金術ともども廃れてしまったとか。


けれど【イフオン】の世界では、どうやら永久機関は形を成したよう。

ファンタジーさまさまってカンジね。


「リーズ! こっちこっち!」


……閑話休題。

その真っ白いダムのような絶壁の中腹。

赤くサビた階段でしか行きつけないそこに、水路として機能していない排水溝がある。

新しい水路を作るにあたり、水を流れなくしたというここが……キュウのおじいさんの住処があるというダンジョン【毛細地下水道】の入り口だ。


うん。

行きつく先がどこに転がっていくかわかんないけど……いい結果になるって信じれば怖くなんてない!


「よし、じゃあ行こっか、【毛細地下水道】!」


「うん! オイラたちの家まで案内するよ!」


そうして私たちは、この街唯一のダンジョンへ足を踏みいれ……!


「あ、そうだ……オイラもバトル手伝うから! 気軽に頼っておくれ!」


「え」


あんた戦えるの!?



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?