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第9話 成長機会

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【ハヤテ】

 性別:女       種族:ハーフマリナー

 陣営:??      職業:??

 聖魔:??      幻影:??

 LP:100% SP:100% ST:120% EN:100%


 <スキル骨子>

★持久力アップ:ST上限+20%


☆木登り補正 :木登り中ST消費ー10%【置き換え】

 ┗★錬金術 :アイテム制作・錬金成功率+10%

   採取  :薬草・樹液の獲得率+30%

   レシピ化:一度作った錬金アイテムを記憶

   抽出  :属性抽出・錬金成功率+10%

   調合  :レシピひらめき+10%・錬金成功率+10%


☆水泳補正  :水中内移動+5【置き換え】

 ┗★料理  :回復アイテム制作・料理成功率+10%

   収穫  :野菜・果実の獲得率+30%

   レシピ化:一度作った料理アイテムを記憶

   加工  :素材理解+10%・料理成功率+10%

   焼成  :料理理解+10%・レシピひらめき+20%


★低酸素内活動:空気の薄い場所でのST消費ー10%


★命中率アップ:命中・クリティカル+10%


 <称号>

 ファストリアの看板娘/NPCからの信頼+30%


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 ゲーム内でおおよそ一週間。

 リアルではまだ三日が過ぎたくらいで、ステータスの成長がこれくらいになる。

 街の外には出ていないのにこの成長よ。


 基本的に働いてるお店では野菜や果物を作った料理オンリー。

 というのも、肉や魚レシピを揃えると割高且つ入荷待ちまで時間を取られすぎるとかで。

 オープンまで時間と経費がかかりすぎるとのこと。

 なのでメニューの多さで勝負してるんだって。


 いや、お手頃なお値段で提供できてるだけで、十分凄まじいんだけど。

 比べるのも烏滸がましいが、できないなりに嫉妬を覚えるほどだよね。

 早く私もこれぐらい作れるようになりたいと思わせるのだ。



「今日もお疲れ様ー」


「お疲れ様です」


「お、今日も新レシピの開発かな?」


「はい。最近はレシピ開拓が楽しくて」


「わかるー」



 店長のシズラさんはずっとログインし続けてることに関して、色々察してくれる。


 私の親族関係者が大体やらかしている(過剰ログインやら抜け穴探しが得意な人たちから強い影響を受けている)と察してくれるのだ。


 まだ本当のことは言えないし、言うつもりもないけど。

 とっくに一般的プレイヤーではないことは見抜かれてるかもね。


 それはさておき、私が夢中になっているレシピ開拓。

 これがなかなか面白い。

 食材に対するアプローチ一つで全く違う料理になるのだ。


 どうして料理に精通してこなかったのか、過去の人生を悔やむほどの面白さを感じている。

 物事の夢中になるというのはこういうことを指すのだな、とこの歳になってもまだまだ発見がある。


 いや、私は全然若いんだけどさ。

 中途半端に前世の記憶があるので色々とごっちゃになってしまっていけないね。



「それじゃあ、あたしはログアウトするから。お店番お願いしていいかしら?」


「あ、はーい。お疲れ様です」



 挨拶を交わし、レシピ開拓の続きへ。

 食事のストックは十全。

 あとはNPC店員が受け持ってくれるだろう。

 そんな場所へ、珍しい来客があった。



「あれ、こよりさん?」


「お、ハヤテちゃんだ。シズラちゃん居る?」


「先ほどログアウトされていきましたよ」


「あちゃー、完全なすれ違い」


「事前に連絡してくれたら引き留めたんですけど」


「それなんだけどね、私もいまさっきログインしたばっかで」


「なるほど」



 だから連絡が今になったと。

 この焦り具合から察するに、実の姉妹であってもリアルでは連絡がつけにくい関係なのだろうねと察する。



「急用ですか?」


「あ、うん。ちょっとログイン関連でね。しばらくログインできなさそうって伝えて欲しくて」


「リアルで何かありました?」


「旦那がトラブルに巻き込まれちゃって、その対応。一週間もかからないと思うけど」


「その間のログイン、つまりはお野菜の提供が」


「うん、ちょっと厳しいかなって」



 それは確かに急用だ。

 特に弊店ではこよりさんのところの野菜が主軸。

 リアル姉妹であるからこその安価での提供で経営を回してるところがある。

 それが途切れたら、まぁこの価格での販売は難しいだろうね。



「わかりました。ログインしてきたら私の方で伝えておきます」


「助かるよ。うちはリアルで連絡がつけにくい職業だから、こっちで連絡取り合おうってゲームしてるところもあるし」


「今のご家庭はみんなそうでは?」


「VR化の弊害かー」


「そういえばお世話の方はNPCが?」


「うん。でも私ほど効率よく肥料を製作できないから、品質は落ちると思うんだよ」


「あー、私の調味料製作技術もNPCと変わりませんしね」


「そういうこと」


「でも、私のスキルは派生できます」


「続けて」


「畑のお世話、私にやらせてもらってもいいですか?」


「うーん」



 こよりさんは唸った。



「言っとくけど、全くもってお金にならないよ? 必死に作っても二束三文。マーケットの卸値も均一化。ほぼ自己満足の世界だし」


「え、全然大丈夫です」


「えっ」



 こよりさんは「こいつ本気か?」みたいな目で見てくる。

 本気も本気、大真面目である。



「そもそも、こんな最初の街でアルバイトに身をやつす私が、本気でお金儲けを考えていると思ってます? 確かに莫大な借金はありますが、返済しようと思えばいつでも返済できるんですよ」



 その場合、色々とメンタルは死ぬが、できなくはない。

 単独でするつもりは全くないというだけ。

 今は成長のチャンス。

 料理だけできたって食材の調達ができなければ無意味。


 つまり、錬金術は今の私の成長機会にすぎない。

 そう熱弁すれば。



「あなたって変わった子ね」


「熱意の向け方が一般的ではないとよく言われます」


「いいわ、どうせ留守にしてる間の品質低下は免れないし。でも、貸し出す畑は一つだけ。全部やれだなんて言わないから、そこでNPCより品質をあげられたら、次にログインしたときに任せる場所を増やしてあげる」


「ありがとうございます!」


「本当におかしな子。でも、だからこそシズラちゃんが懐いたのかもね。あの子もなかなか苦労人だから」



 お金だけの関係はとにかく嫌がる。

 小銭稼ぎとしか思ってないアルバイト希望者は軒並排除してきた。

 と、いうのもシズラさんがバリバリの叩き上げだからだ。


 私はその間違った方向での熱意でバンバン仕事を教わり「次はいつ来れる?」の言葉をいただけた。

 まぁ、多少親に対する忖度はあったと思うが。

 それだけで厨房を任せてくれるタイプの人ではないとこよりさんは言う。



「それじゃあ、私はこのままログアウトしちゃうわね。わからないことがあったら」


「掲示板ですね?」


「そ。有志が家庭菜園からガチ菜園まで網羅してくれてるから、そこでノウハウを覚えなさい。錬金術って本当に奥が深いの」



 深すぎて一度ハマったら抜け出せないとも言われた。

 お爺ちゃんもそのうちの一人らしいけど、まだ抜け出せていないのだろうか?

 ちょっとだけ気になった。

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