「それで、列車君は何ができるのかね?」
「|◉〻◉)列車……僕のことかな?」
レッドシャークだから略して列車か。
言い得て妙だな。
ミルちゃんのネーミングセンスはかなり独特なもののようだ。
「列車って、おもろ」
「お姉ちゃん、失礼だよ」
「|◉〻◉)僕は今日から列車って名乗るね!」
「気に入っちゃった!」
気に入っちゃうんだ?
まぁいいけど。
「そういえば、召喚って言ってたけど。普段はどこで暮らしてるの?」
「|ー〻ー)どこって、普通に用水路だけど?」
「用水路! ばっちいってイメージばっかりあるなー」
「ゲームなんだからそんなに汚れてないよ」
「そっか! ゲームだもんね」
私たちは珍妙な列車君に連れられて用水路に赴く。
過去に用水路をきれいにした覚えがあるし、イベントに活用されて黄金神殿への経路を開いたことがある。
聖魔大戦の関係者はそこでページ集めに図書館を訪問するから絶対に綺麗になっているはず!
そう思って赴けば。
「くっさ! 鼻が曲がる匂いがするよ、ハヤテちゃーん!」
水は綺麗だが、汚臭がした。
お姉ちゃんは実際に鼻を摘んで嗚咽を漏らしている。
「胃の内容物全部ぶちまけそう」
「ちょっと、人の頭の上でやめてよね?」
ミルちゃんは未だお姉ちゃんの頭の上。
すっかりそこを寝床と決めつけてるようだ。
さっきからキャンキャンとかしましい。
「|◉〻◉)え、そんなに匂うかなぁ?」
君は人より嗅覚弱いでしょ。
「お姉ちゃん、もしかしてマーメイドモードならそんなに匂わないんじゃ?」
「あ! そっか。ナイスハヤテちゃん」
早速変身!
案の定、鼻を突く匂いはすっかり消え去った。
よもやフィールドにこんな仕掛けがあるとはね。
「匂わない! 全然匂わないよ!」
「|◉〻◉)さすが同胞。機転が効くね。早速僕の寝床に案内しよう」
「ゴーゴー!」
「あの、ここにまだ吐き気がおさまらない存在がいるんですが!」
意義あり! とミルちゃん。
「それじゃあミルちゃんは私のお弁当の中に一緒にパッキングしてあげる」
それで匂いは大丈夫なはずだ。
「我慢できなくて食べちゃっても?」
「なるべく我慢して」
「ブーブー!横柄だぁ」
こんなに駄々っ子だとは思わなかった。
姉も大概だと思ったけど、同年代の子ってこんなに抑えが効かないのかな?
リノちゃんのおとなしさが懐かしいよ。
ともあれ、匂い問題は解決。
ミルちゃんは目的地に着くまでお弁当箱の中で待機となった。
仲間外れはいけないのでパーティチャットでやり合う。
その度にスクリーンショットを送り合った。
これで少しはお姉ちゃんのブログを書くときのお供が増えればなって思った。