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第44話 ころちゃん視点 情報を探ろうと外に出ると、侍女に捕まって護衛の騎士と一緒に怒られることになってしまいました

カーラはフェルディナントのどっちつかずの態度に怒っていた。白い騎士、すなわち俺の事を本当に想ってくれているのならば、フェルディナントがカーラのことを好きだろうがなかろうが、どうでも良いはずだ。というか、今まではフェルディナントがカーラを好いていることを迷惑に想っていたはずだ。

なのに、 カーラのことを好きだとはっきりとアレイダに言わないと怒っているってどういう事なんだろう?

俺にはカーラの気持ちがよく判らなかった。

移ろいやすい女心と秋の風と言うように、カーラの気持ちが俺様からフェルディナントに移ってしまったのだろうか?

俺はとても不安になった。


でも、そうかというと、

「ころちゃん、白い騎士様は今はどちらにいらっしゃるんだろう? どうしていらっしゃるのかな?」

と俺様を抱っこしながら唐突に言ってくれるのだ。

今、カーラの胸の中にいるぞと俺は余程言いたかったが、

「わんわん」

と吠えたところで全くカーラには伝わらなかったけれど……

カーラが俺様かフェルディナントのどちらが好きなのかよく判らなかった。


そんな中、俺様は今日もカーラとの一緒に風呂に入っている。

そう、フェルディナントの野郎は絶対に一緒に入れないのに、俺様は恥ずかしいが、見ようと思えば全裸のカーラの姿を見られるのだ。もっとも剣にかけてしていないが……

たまに豊かな胸が俺様の体に触れるのは仕方が無いというか、不可抗力だ。

今もしっかりとその豊かな胸の中に俺様は抱きかかえられていた。

「白い騎士様はまだこの国にいらっしゃるのかな」

カーラは今日は俺のことを話題にしてくれた。

「わんわん」

「えっ、ころちゃんは白い騎士様がこの国にいるって判るの?」

「わんわん」

俺が頷くと

「凄い、ころちゃんは天才ね」

そう言ってぎゅっとカーラが抱きしめてくれた。

俺の至福の時だった。


本来、こんなことはしていけないのだ。


絶対に!


俺がカーラで、このことを知ったら絶対に俺を許さないだろう。

でも、今、俺様は子犬になっていて、カーラに連れられて、毎日、無理矢理お風呂に入れられているのだ。そう無理矢理にだ。

これは本当に仕方の無いことなのだ。


と俺は俺自身に言い訳していた。


もっとも、俺としては正体を現すには、この前みたいにカーラから3日ほど離れる必要がある。こんな、カーラの胸に抱かれて居るなんてしていたら絶対に元の人間に戻れない。


 しかしだ。戻ったところで俺様に何が出来ると言うのだ。俺様は獣人王国を追放された身だ。今、戻ったところでカーラに対して何の後ろ盾にもなれないのだ。大国の皇子のフェルディナントや、宰相の息子のガマガエルよりも地位は低いのだ。


そう思うと俺は悄然とした。


出来ることと言えば、子供の頃から鍛えた剣で、いざという時に、カーラの盾となり、剣となれるだけなのだ。

いざという時はカーラの護衛として、カーラを守り、最悪、国外逃亡とかの助けにはなれるが、それだけだ。


現在モルガン王国の王女としているカーラにはすぐさまいる力ではなかった。

それよりは大国の力を後ろ盾として使えるフェルディナントや、宰相の力を頼れるガマガエルの方が余程カーラのためになった。

そう考えると俺様は本当に落ち込んだ。


カーラの胸に抱かれて風呂に一緒に入って喜んでいてはいけないのだ。

でも、俺はこのぬるま湯の環境から逃れられなかった。

しかし、いつまでもこうしてはいられなかった。

俺様はカーラが寝静まるとゆっくりとその胸元から逃げ出したのだ。


そして、窓の鍵を飛び上がって外すと、ゆっくりと中庭に出た。

俺が帰ってきてしばらくは警戒が厳しかったが、今は俺に対しての逃げ出さないようにする警戒も少し緩くなっていた。


俺は国王と宰相達の関係の現状を把握するために、まず、カーラの父の国王の部屋に向かったのだ。


俺様は子犬で、その点警戒されにくかった。

俺は今までは自由気ままに出来ていたので、今日も見つかっても見逃してくれると思っていたのだ。

それが甘かった。

「おい、あれはカーラ様の犬では無いのか」

「本当だ。ころちゃんだ。誰だ? 今日のカーラ様の護衛は?」

「本当にどうしようもないな」

騎士達はたちまち、俺を目指してかけてきたのだ。


やばい!


俺はそれを見て、慌てて逃げだそうとした。

そして、後ろからむんずと捕まれてしまったのだ。


「ころちゃん。どういうつもりですか? カーラ様の部屋から逃げ出すなんて」

そこには鬼のように怒った、カーラの侍女のサーヤが立っていたのだった。


失敗した。

俺はサーヤから延々と怒られる羽目になってしまったのだ。


俺は俺がいなくなった時にカーラ達がどれだけ俺を探したか、よく聞いていなかったのだ。

それを延々とサーヤから聞かされることになったのだ。

俺はそのまま、カーラの部屋の前にいる騎士の前に連れて行かれて、そのまま、小さな檻に入れられてしまったのだ。


「わんわん」

俺は鳴いて訴えたが、

「あなた、どういう事なの? ちゃんと警備していたの?」

サーヤは俺の方も見ずに警戒していた騎士に怒りだした。

「いえ、ちゃんと見ていましたよ」

「じゃあ、なんでころちゃんが王宮の中をうろうろしていたの?」

「いえ、それは……」

騎士は捕まった俺を見て、何も言えなくなった。

「判っているんでしょうね。ころちゃんがいなくなってカーラ様がどれだけ悲しんでいらっしゃったか。なのに、また逃げられるとはどういう事なの? ころちゃん、あなたもです」

「はい!」

「わん!」

俺は近衛騎士と一緒に固まってサーヤの説教を聞く羽目になってしまったのだった。

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