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第54話 コダイレックス

「うわっ、なになに!?」

「一体何が起きてるんですか!?」

「これが進化だと言うのか……!」


 それぞれ口にするヒロインたちをよそに、俺の進化は進んでいく。


 そして光から解き放たれた頃には、俺の姿は様変わりしていた。


「グルル……」


 見下ろすクラリスたちの大きさが変わってないように見えることから、大きさはそれほど変わってない様子。


 だけど波打ち際の反射で見た全身は、これまでとは一線を画すものだった。


 まず緋色になった身体を覆う防具は漆黒となり、琥珀色の大きな結晶が頭にくっついている。


 何より自慢の牙と爪も黒く染まっている。


  なんかよく分からないけど、今の俺ちょーかっけえ!!


「――本当にダイナさん、なんですか?」


 おっと、自分の見た目分析で放ったらかしにしてたソフィーが瞠目している。


 そんな彼女に俺は漆黒の装甲に覆われた顔を寄せた。


「ドルルルル……」

「は、はあ」


 戸惑うソフィーを押し退けるように、クラリスが俺の顔面に抱きつく。


「やっぱりダイナなんだね! すごくかっこいいよ!」

「グルル」


 だろ? クラリス。もっとそのたわわなおっぱい押し当ててくれてもいいんだぜ。


「まさか進化の瞬間を目の当たりにするとはな。たまげたぞ」


 そういやアンナは俺の進化の瞬間を目撃するのは初めてだったな。いや、みんなそうか。


個体名:ダイナ

種族名:コダイレックス

レベル:42

体力:2400/2400

筋力:2500

耐久:2200

知力:1000

抵抗:1000

瞬発:400

スキル:

UP↑極大破砕ギガクラッシュバイト→渾身の力で噛みついて物理特大ダメージを与える。

UP↑業火咬牙バーニングバイト→猛る業火をまとわせた牙で噛みついて物理大ダメージ+魔法中ダメージを与える。

UP↑氷結咬牙フリーズバイト→凍てつく冷気をまとわせた牙で噛みついて物理大ダメージ+魔法中ダメージを与える。

UP↑雷電咬牙ブリッツバイト→轟く雷電をまとわせた牙で噛みついて物理大ダメージ+魔法中ダメージを与える。

UP↑覇王咆哮ローリングタイラント→覇気をまとわせた咆哮で周囲に魔法小ダメージ+恐怖付加

New質量変身サイズシフト→ちび恐竜モードと大恐竜モードへの変身を任意で可能。大恐竜モードへの変身は一日一回のみ可能。

New鎧装着脱アーマースリップ→鎧の着脱を任意で可能。


 これがコダイレックスとしての力か、とてつもないことになってるぜ!


 まず能力値で今までも自慢だった物理方面がさらに大きく伸びた。


 新しく習得したスキルも今までのスキルを順当に強化したものっぽくて、今後の使用が楽しみだぜ。


 しかもしかも、今まではタイミングが分からなかった巨大化が任意でできるスキルも地味に追加されてる!

 でも一日一回か、これは使用のタイミングをよく見計らわないとな……。


 あとこの鎧、地味に脱げるスキルがあるんだな。普段は鎧脱いどけってことか?


「おーい、ダイナ~?」


 おっと、スキルを吟味してたら目の前で手をふりふりするクラリスに全然気づかなかった。


 周りに敵の気配もないし、ここは質量変身サイズシフトを使ってみよう!


 念じた途端に俺の身体がみるみるうちに小さくなって、目線がクラリスの腰くらいになった。


 あれ、それでも今までよりまだ大きいな。サイズ感としては大型犬くらい?


 これも進化したからか?


「わ~、ダイナ大きくなったね!」


 そう嬉しそうに言ったクラリスが、俺の首筋に抱きついてくる。


 なるほど、このサイズ感でスキンシップをするならこんな感じなのか。

 あとクラリスのおっぱい柔らかい。


 ついでに鎧装着脱アーマースリップも試してみると、黒い装甲が虚空に消えたので、しばらくはこのままでいこう。


「ダイナも進化したことだし、そろそろ宿に戻るか」

「そうだね。わたしもうヘトヘトだよ~」


 そうして海岸から離れると、いつの間にか空は夕暮れで町も静けさを取り戻していた。


 宿に戻る前に俺たちはこの町のギルドへ立ち寄ることに。


 相変わらず海の家にしか見えないギルドに入ると、早速ビアンカさんが出迎えてくれた。


「お帰り! 二人とも無事みたいで良かったわ~!」


 安心したようなビアンカさんは髪が乱れていて、あっちもあっちでさぞかし大変だったんだなあと思う。


「ああ、なんとかな」

「それよりビアンカさん、ダイナが進化したんですよ~!」


 クラリスの言葉でビアンカさんの目がこっちに向いた。


「あら、この子がダイナちゃん? ずいぶん大きくなってまあ」


 ビアンカさんも口に手を添えて俺の進化に驚いているようで。


 続いてビアンカさんが声をかけたのは、慣れない場所で戸惑いを隠せないソフィーだった。


「あなた見ない顔ねえ。お名前なんていうの?」

「は、はいっ。自分はソフィーといいます、海の巫女一族でして……!」

「海の巫女一族……」


 海の巫女一族と聞いてビアンカさんがソフィーを見つめる。


「ビアンカさんは知ってるのか?」

「ええ、アンナちゃん。存在は聞いたことあったけど、海の巫女一族ねえ。本当にいるのね~」


 どうやら海の巫女一族というのが大層物珍しいみたいで。


「海の巫女一族は外の世界とは隔絶して暮らしてるとは聞くけど、そんなあなたがどうしてここに?」

「はい、実はその……」


 それからソフィーがこれまでの経緯を説明すると、ビアンカさんはあごをなでて納得した様子。


「なるほどね~。海の異変もその守り神の暴走のせい、と」

「……はい。しかし、オシアノス様は決して悪者などではなく……!」

「分かってるわよソフィーちゃん。――でもそうなると事態は深刻ね……。もしかしたらうちの冒険者たちが戻ってこないのもそれと関係があるのかしら」


 難しそうな顔で考え込むビアンカさんは、手持ちぶさたな俺たちにこう伝えた。


「それはともかく、みんなお疲れ様。お礼代わりに今日の討伐分の報酬は出すわ」

「ありがとうございますビアンカさんっ」


 報酬を受け取ってクラリスがウキウキになったところで、俺たちは宿に戻った。


「今日はゆっくり休むとして、明日からどうするかだな」


 アンナの独り言を聞いたソフィーが、ふと控えめに手を挙げてこんなことを。


「あの……。一度海の巫女一族の里に来ていただくことはできないでしょうか?」

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