武器屋を後にしてアーノルドが言った。
「うーん、これまで体力をつけてこなかったとはいえ、ここまで僕が何も持てないとは思わなかったよ。ごめんね、リディア。君にも気を使わせてしまったね」
「いえ、そんなことは……というか気付いていらっしゃったんですね」
「お城で生活しているとさ、みんなが僕に気を使っているのがわかるんだ。とてもありがたいことではあるんだけど時期国王には怪我をさせてはいけない、間違ったことをさせてはいけないっていって……僕は甘やかされていたんだなと改めて思うよ」
アーノルドは自分の細い腕と足を見つめながら、ため息をついた。
「……大丈夫です。私がアーノルド様をお守りいたします。少しずつ力をつけてまいりましょう」
リディアは力強く言った。
「ありがとう。……よし、必要な装備はそろったね。次はどうしようか」
「早速ですが、一度城門から外に出てみましょうか。ここ近辺の魔物はさほど強くないと聞いていますので腕試しにはちょうどいいかと。ほかの勇者もきっといるはずですよ」
「魔物……ね」
アーノルドが少し訝しげな表情を浮かべたのをリディアは見逃さなかった。
「どうかされましたか?」
「いや、なんでもないんだ。……よし、一度外に出てみよう」
「はい。ではここから一番近い西門へ参りましょう」
テレジア王国の中心地である王都は、王の住む城を中心にして城下町が放射状に広がっている。
城下町を大きく取り囲むように城壁が築かれ、東西南北それぞれに強固な門がある。
門には門番が24時間体制で配備され、盗賊や賞金首、魔物にいたるまで一切の侵入を拒んでいる。ただ現在は勇者を大々的に募集しているので、盗賊や賞金首だろうが自由に行き来することができているのだが……。
北門を抜けると第二の都市ポンボールへと至る道が整備されている。こちらは行き交う人も多くにぎわっている。
南門は砂漠地帯へと道が伸び、その先は隣国テぺとの国境になっている。テぺとの交流は現在行われていないので、ここを通る人は少ない。
東門の先には港町シャイナが、西門はイヴァル村を経由して暗黒山脈、魔の森へと続いている。