振り向くと、ガラの悪い男たちが四人。ニヤニヤとした表情で立っていた。
全員が勇者の腕輪を身に着けている。リディアはいぶかしげにその男たちを見つめる……どこかで見たことがあるような……あっ、王都の宿屋でアーノルド様を小馬鹿にしたやつらだ! と気づいた。
「この二人よりも、俺らのほうが頼りになるぜぇ! なんてったって、レベル22だからなぁ!」
と言って、四人が腕輪を老人に向かって見せる。左から順に、22、18、20、16という数字が浮かび上がる。なんか言葉遣いも下品だし品のない立ち振る舞いをしているのに、それなりに魔物を倒していることにリディアは苛立つ。
「おお、それは心強いことですじゃ。ぜひ、ぜひお願いいたします。」
「で、報酬はなんなんだい、ジイさん?」
一番レベルの高い男が言う。
「ほ……報酬?」
老人が驚いて復唱する。
「そりゃそうだ、勇者様に依頼するんだから、それなりの報酬がないと動かないぜぇ……そうだな、サンドドラゴンだったら……金貨五百枚とか?」
周りの男たちが「破格の値段だぜ!」「本当なら二千枚だぞ!」とはやし立てる。
「そんな……無茶じゃ……」
「じゃあ残念だけど、この話はなかったってことに! じゃあな、ジイさん! 金が貯まったらまた声かけてくれや。……まあその時は俺たちは他の街にいると思うけどな! あはははは!」
四人の勇者たちは笑いながらその場を後にした。道の真ん中をまるで自分のものかのように偉そうに歩いて行く。道行く人たちは関わらないように端に寄りながら怯えていた。
「最初から依頼なんて受ける気もないくせに!」
リディアがその後ろ姿を見ながら、べーっと顔をしかめて舌を出した。
落胆している老人を見て、
「大丈夫。サンドドラゴンは僕たちがなんとかするよ」
とアーノルドが優しく声をかける。それにリディアも頷く。
「本当でございますか!?」
老人の顔がぱっと明るくなり、希望に満ちた目でアーノルドたちを見つめる。
「ただ、僕たちも他の目的があってこの街に来たんだ。その用事を済ませてからになるけどいいかな?」
「もちろんでございます。……ああ、しかし報酬を用意できませんのじゃ……」
「そんなものはいらないよ。勇者は本来国民を助けるために作られた制度なんだから……」
その言葉にリディアも続けて言う。
「そうです! 報酬なんかいりません! 私たちにまかせてください……倒せるかどうかちょっと自信がないけど……」
「ありがとうございます。勇者様のご用事がすみましたら、ぜひお願いいたします」
老人は嬉しそうに答えた。
話が一段落したところで、アーノルドが尋ねる。
「ところで、僕たちはこの街でラームと言う人を探しているんだ。どこにいるか知らないかな?」
「おお、知っておりますとも。ラーム殿の自宅でしたらこの道をまっすぐ行って……」
細かい道まで、老人は丁寧に教えてくれた。
土色の街の中を、教えてもらったとおりに二人は進む。
「まかせてくださいとか大見得を切ったものの……骸骨の次はドラゴンですかぁ……私見たことすらありませんけど……勝てるわけないですよぉ」
「案外、ラームさんがドラゴンの倒し方を知っているかもしれないよ」
「そうですね、聖水みたいなものがあるかもしれませんね!」
ここから事態が大きく動き出す。