「アハハハッ すっかり夜じゃん」
志織の言う通り、すっかり暗くなった公園に女たちは蛍を見物にやってきた。
相原自然公園では夜間も駐車場は解放されていたが、1台も駐車車両はなく、静まり返っている。
みんなは、園内の蛍の宴と言われる小川を目指した。
「本当にあってるのー?」
「さっきの立て札が、こっちってなっていたから多分。実は私も来たことないの💧」
「マジで――?! きゃははははは」
酔っぱの志織は楽しい時間がやってきて、何かと言うと笑っている。
明らかに普段の3倍は飲んでいた。
同級生のミレイユに再会したことは、彼女にとっても興奮する嬉しい出来事だったようだ。
「大丈夫? 志織💦 」
ミレイユは、よろける志織に手を差し伸べる。
「大丈夫じゃないかもー、アハハハ」
「じゃ、シオリは車で待ってた方がいいんじゃないの?」危なそう
カンナはわざと大きな声でいう。
「えー、やだ、せっかく来たのに! 酔い覚ましに散歩が気持ちいいし😊 よーし、蛍を見つけるぞぉ」
「そうねー、探しましょう❤」
手を取り合って駆けていくシオリとミレイユ
「転ばないように気をつけて!」
声をかけるクレインとレイラも2人の後をゆっくりと追いながら、静かに夜の遊歩道を楽しんでいる。
「ぷぷ」
ちょっと落ち着き過ぎて、熟年夫婦みたい、と含み笑いをするカンナ。
「おれ、車で寝てるわ、フェリーの時間忘れんなよ」
ルフィーは車のキーを受け取り、レイラに手を上げ背を向けた。
ミレイユがシオリと行ってしまった途端、戦線離脱とは情けない奴である。
シラケた様子で来た道をもどってゆく。
(ちょっと💦そんなの無いわ〜)
「ねぇまってよ、蛍見に行かないの?」
カンナは慌ててルフィーの傍らに飛んでいった。
「...るせーな、話しかけんな 」
「 💦 どうして車にもどるのよ〜」
「はあ? ダリぃからだよ、ついてくんな 」
ショートパンツのお尻をぷりぷりさせながら、クソ態度の悪いルフィーだ。
さぁ、どうしたものか、
カンナは数秒、考える...。
「そんなねぇ、1人で車に居たら危ないかもよー🎶」
「はぁ? なんだと?」
ルフィーは、立ち止まって振り返った。
(おっ、食いついてきた!)
「だって駐車場はライトも少ないし、ヤバくない? 変なのいたらさ」
「変なのってどんなんだよ、俺がヤられるとか、そういう事がいいてぇのか?」
顔をしかめるルフィーは薄笑い。
「えー、だって一応女だしさ」
「女? おまえオレを誰だと思ってんだ」
凄むルフィーをカンナは更に挑発する。
「そんな事、知らないけど……。じゃ、なにも怖くないの?」
「怖いわけねーだろ」笑
「ふーん、妖怪とかも?」
「? 💦 妖怪?」なんだそれ?
ルフィーは途端にマヌケた表情になる。
「お化けみたいなもんよ」
「お化け?💦」
ブラッセルにはお化けや妖怪はいないのか?
(なにその顔、たまらなく可愛くてヤバい❤)
カンナは楽しくなってきた。
「なんかね、この辺も出るらしいよ」
「出るってなにが💦」
「提灯 持ったおじいさんが、ズルズル〜ズルズル〜ってはってくるやつ、ずーちょんじじいよ 」
「ず、ずーちょんじじい??💦 なんだよそれ?! どんな人間だよ」
「人間じゃないよ、妖怪かなぁ」
「妖怪?」
「普通の銃や武器では殺せないからね、てか、お化けかな?」
「ええ〜――💦 そんなのいんのか?」
予想以上の反応にカンナの方が驚いたが、とにかく冷静に対応した。
「なに? 怖くないんでしょ?」
「怖くねーけど💧 気持ちわりぃじゃねーか、そんなん」キョロキョロ
ルフィーは明らかに怖がっている。
「なんかそれでね、抱きつきてー!抱きつきてー!って叫びながら目が合ったら、本当に抱きついてきて、乳首を吸われるんだってぇ」
(それはあたしの願望か♡♡)
調子に乗って悪ふざけするカンナ
「はぁ――――?!💦 ヤべぇじゃん、それ」
「そうなの、乳首から魂抜かれるから気をつけてね!じゃ」
足を止めて手を振った。
「え? なんだよ、おまえ、こねーの?」
「なんで、怖くないんでしょ?」
「別に怖くねーけど、おまえ、ほら1人でもどったら危ないだろ💦」
「危なくないわよ、私はずーちょんじじいから身を守れる魔除けの鈴を持ってるから😊」
ポケットから鈴を出してみせる。
カンナは、ずーちょんじじい除けのためでは無いが、お祓いの鈴を常にポケットに持っているのは事実だった。
「なに、おまえ、そんないいもん持ってるの💧」
「うん」
「へー💦 」
「ほしい?」
「え?」
「ほしいの?」
「あー、じゃ今 貸しといて」笑
「だめ」
「なんだよ、ケチ」
眉を寄せてムッとするルフィー。
「しょうがないなー😊 じゃ、駐車場の自販機でコーヒー買ってくれたら、一緒にいてあげてもいいけど🎶」
カンナがそう言うとルフィーは笑う。
「マジで」笑
「うん😊」
初めて見せたルフィーの笑顔に、カンナの胸はトクトクと高鳴った。
(でもそんな事で喜んでると悟られてはならないぞ!)
すました顔を向けるカンナなのだ。