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第4話 ずーちょんじじいと魔除けの鈴


「アハハハッ すっかり夜じゃん」



 志織の言う通り、すっかり暗くなった公園に女たちは蛍を見物にやってきた。


 相原自然公園では夜間も駐車場は解放されていたが、1台も駐車車両はなく、静まり返っている。


 みんなは、園内の蛍の宴と言われる小川を目指した。



「本当にあってるのー?」


「さっきの立て札が、こっちってなっていたから多分。実は私も来たことないの‪💧‬」


「マジで――?! きゃははははは」


 酔っぱの志織は楽しい時間がやってきて、何かと言うと笑っている。


 明らかに普段の3倍は飲んでいた。


 同級生のミレイユに再会したことは、彼女にとっても興奮する嬉しい出来事だったようだ。



「大丈夫? 志織💦 」



 ミレイユは、よろける志織に手を差し伸べる。



「大丈夫じゃないかもー、アハハハ」


「じゃ、シオリは車で待ってた方がいいんじゃないの?」危なそう


 カンナはわざと大きな声でいう。



「えー、やだ、せっかく来たのに! 酔い覚ましに散歩が気持ちいいし😊 よーし、蛍を見つけるぞぉ」


「そうねー、探しましょう❤」



 手を取り合って駆けていくシオリとミレイユ


「転ばないように気をつけて!」


 声をかけるクレインとレイラも2人の後をゆっくりと追いながら、静かに夜の遊歩道を楽しんでいる。


「ぷぷ」

 ちょっと落ち着き過ぎて、熟年夫婦みたい、と含み笑いをするカンナ。



「おれ、車で寝てるわ、フェリーの時間忘れんなよ」



 ルフィーは車のキーを受け取り、レイラに手を上げ背を向けた。


 ミレイユがシオリと行ってしまった途端、戦線離脱とは情けない奴である。


 シラケた様子で来た道をもどってゆく。


(ちょっと💦そんなの無いわ〜)


「ねぇまってよ、蛍見に行かないの?」


 カンナは慌ててルフィーの傍らに飛んでいった。


「...るせーな、話しかけんな 」


「 💦 どうして車にもどるのよ〜」


「はあ? ダリぃからだよ、ついてくんな 」


 ショートパンツのお尻をぷりぷりさせながら、クソ態度の悪いルフィーだ。


 さぁ、どうしたものか、

 カンナは数秒、考える...。


「そんなねぇ、1人で車に居たら危ないかもよー🎶」


「はぁ? なんだと?」


 ルフィーは、立ち止まって振り返った。


(おっ、食いついてきた!)


「だって駐車場はライトも少ないし、ヤバくない? 変なのいたらさ」


「変なのってどんなんだよ、俺がヤられるとか、そういう事がいいてぇのか?」


 顔をしかめるルフィーは薄笑い。


「えー、だって一応女だしさ」


「女?  おまえオレを誰だと思ってんだ」


 凄むルフィーをカンナは更に挑発する。


「そんな事、知らないけど……。じゃ、なにも怖くないの?」


「怖いわけねーだろ」笑


「ふーん、妖怪とかも?」


「? ‪💦 妖怪?」なんだそれ?


 ルフィーは途端にマヌケた表情になる。


「お化けみたいなもんよ」

「お化け?💦」



 ブラッセルにはお化けや妖怪はいないのか?


(なにその顔、たまらなく可愛くてヤバい❤)


 カンナは楽しくなってきた。


「なんかね、この辺も出るらしいよ」

「出るってなにが💦」


「提灯 持ったおじいさんが、ズルズル〜ズルズル〜ってはってくるやつ、ずーちょんじじいよ 」


「ず、ずーちょんじじい??💦 なんだよそれ?! どんな人間だよ」


「人間じゃないよ、妖怪かなぁ」

「妖怪?」


「普通の銃や武器では殺せないからね、てか、お化けかな?」


「ええ〜――💦 そんなのいんのか?」


 予想以上の反応にカンナの方が驚いたが、とにかく冷静に対応した。



「なに? 怖くないんでしょ?」


「怖くねーけど‪💧‬ 気持ちわりぃじゃねーか、そんなん」キョロキョロ


 ルフィーは明らかに怖がっている。


「なんかそれでね、抱きつきてー!抱きつきてー!って叫びながら目が合ったら、本当に抱きついてきて、乳首を吸われるんだってぇ」


(それはあたしの願望か♡♡)


 調子に乗って悪ふざけするカンナ



「はぁ――――?!💦 ヤべぇじゃん、それ」


「そうなの、乳首から魂抜かれるから気をつけてね!じゃ」


 足を止めて手を振った。


「え? なんだよ、おまえ、こねーの?」

「なんで、怖くないんでしょ?」

「別に怖くねーけど、おまえ、ほら1人でもどったら危ないだろ💦」


「危なくないわよ、私はずーちょんじじいから身を守れる魔除けの鈴を持ってるから😊」



 ポケットから鈴を出してみせる。


 カンナは、ずーちょんじじい除けのためでは無いが、お祓いの鈴を常にポケットに持っているのは事実だった。



「なに、おまえ、そんないいもん持ってるの‪💧‬」


「うん」

「へー💦 」

「ほしい?」

「え?」

「ほしいの?」


「あー、じゃ今 貸しといて」笑


「だめ」

「なんだよ、ケチ」


 眉を寄せてムッとするルフィー。


「しょうがないなー😊 じゃ、駐車場の自販機でコーヒー買ってくれたら、一緒にいてあげてもいいけど🎶」


 カンナがそう言うとルフィーは笑う。


「マジで」笑

「うん😊」


 初めて見せたルフィーの笑顔に、カンナの胸はトクトクと高鳴った。


(でもそんな事で喜んでると悟られてはならないぞ!)


 すました顔を向けるカンナなのだ。


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