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コレットの書~真実・3~

 神様にドラゴニュートが居ませんように祈ったのに、何で目の前に出て来るの!?

 どうして!? なんで!? 神様の意地悪!!


「コレット、落ち着くんだ」


「――っ!」


「息を整えろ」


 そっそうね、今は神様に愚痴っても仕方ない。

 落ち着け~私~深呼吸深呼吸……。


「……ふぅ~はぁ~……」


 ……うん……全然、落ち着かない!!

 どっどどうしたら!?


「あ~……なんじゃ。昨日ぶりじゃな、あははは……」


 いやいや! 私的には全く会いたくは無か……って、ドラゴニュートの鼻になんかついてる。

 あれは……洗濯ばさみぽい? どうして、そんな物を鼻にはさんでいるんだろう。


「そうだな、俺は会いたくはなかったがな。で? その鼻につけている洗濯ばさみはなんだ?」


「これには色々と、ふっかいふっかい訳があるのじゃよ……」


 ドラゴニュートの目線の先にはマークさん。


「? 何か俺を見てるような気がするっス」


 すごい睨んでいるけど、どうして……。


「……ああ……そういう事か……」

「……あ~……なるほど……」

「……ですな……」


 間違いなく香水の匂いね。

 あの匂いをかぎたくないから洗濯ばさみで鼻を塞いでいるわけだ。

 ドラゴニュートも生き物なんだから、もちろん苦手な物や匂いがあるとは思うけど。

 まさか、その匂いがマークさんの香水だったとは……。


「え? え?」


 その事にマークさんは全く分かっていないみたいだし。


「まぁそんな事よりも」


 グレイさんが剣を構えた――はっ!

 予想外の洗濯ばさみ姿で、ほんわかした空気が流れていたけど目の前にいるのはドラゴニュート! 何しているのよ私!


「……ふぅー……っ俺が時間を稼ぐ、お前たちは今すぐ脱出を!」


 グレイさんが体を張って、私達を逃がそうとしている。

 なら、私がするべき事は……。


「っはい!」


 早く街に戻って、ユーリスさんにこの事を伝える事!


「え? ……あっ! お主等、ちょっと待つのじゃ!」


 やば、ドラゴニュートがこっちの動きに感づいた。


「おっと、お前の相手は俺だ!」


 即座にドラゴニュートの前に立ちはだかるグレイさん。

 今まさに四つ星級冒険者って感じで輝いてますけど、決して無理はしないで下さいね!


「転送石――」


「――っ! グラビティーフィールド!」


「――起どっ、きゃっ!?」


 なっなに?

 急に体が重くなって、地面にたたきつけらた!?


「……体が……重い……」


 これじゃあ動けない。


「……なっ……なんだ、こりゃ……」


「……動け……ないっ……ス」


「……です……な……」


 私だけじゃなくて、みんなも同じようになっているみたいだわ。

 しかもドラゴニュートは立っているし、この状況ってかなりまずい。


「うぐぐぐ……周辺の……重力を……重く……したのじゃ……これは……範囲、魔法じゃから……わしにも……被害が出る……じゃから……これは使いたく……なかった……のじゃがな……」


 って自分にも効果が出る魔法ってそれは駄目でしょ、それ。

 あっでも、これならドラゴニュートもまともに動……いてる。ゆっくりとだけどこっちに歩いて来てる。

 今度こそ終わった……ごめんなさい、神父様、シスター……。


「……ほれ……お前は、これを……小娘には……こっちじゃ……」


 ……へ? グレイさんの前には1枚の紙、私の前には紙の束を置いただけで他には何もしてきそうにもない。

 どういう事なの?


「……紙……だと? ……くっ……つか……何で、俺は……1枚だけ、なんだよ……」


 逆に私は何で束?


「……そんなのは……知らんのじゃ……とにかく……読むのじゃ……」


 いや、読めって……こんな状況で、読めるわけがないじゃない!

 もしかして、束なのは私へのの嫌がらせ?


「……こんな……状況で……読めって……か? ……無茶を……言いやがる…………ああ? ……えっ? ……まじかよ……!? ……おい! ……早く、これをとけ! ……ちゃんと……見せろ!!」


 グレイさんの様子がおかしい。

 あの紙になにがあったんだろう。


「……逃げぬの、なら……」


「……逃げねぇよ……! ……だから、早くしろ……!」


 え? 私は解け次第、逃げたいですけど。


「……わかったのじゃ……解除っと、ふぃ~やれやれなのじゃ」


「――ぷはっ!」


 体が軽くなった!

 これなら立てる。


「あ~助かった……って、グレイさん?」


 グレイさんが紙を拾い上げて凝視している。


「…………」


「あの、その紙に何が……」


 文字が書いてあるけど、何が書いてあるかしら。


「……やっぱりな……これはケビンの手紙だ」


「えっ! これをケビンさんが!?」


 という事は、ケビンさんは生きているの?

 神父様! シスター! ケビンさんは生きてましたよ!


「ああ、この独特な字は間違いなくケビンの字だ。ただ、少しだけ綺麗なのが気になるが……」


 そうか、これがケビンさんの字――って! ものすごく汚い字!

 入り口にあった落書きよりは文字っぽいけども……私には全く読めない。


「でも、ちょっと待ってくれ……俺でもあいつの字はすぐに読めないんだ、解読していかないと……。えーと、何々……」


 読めないのは足り前、グレイさんですらこうなんだし。


「2人にだけずるいっス! 俺はないっスか?」


「ないのじゃ!!」


「……そんなに強く言わくてもいいじゃないっスか……」


 香水の匂いがよっぽど嫌いなのね。


「……ん? ……んん!? おい! ドラゴニュート!」


「わしはナシャータと言うんじゃがな」


 グレイさんが動揺している感じね。

 というか、ドラゴニュートにも名前があったんだ。


「そんな事はどうでもいい! ここに書かれているのは本当の事なのか!?」


 ケビンさんの手紙にはなんて書かれていたんだろう。


「そうじゃ……と言っても、お主は信じるのか?」


「チッそうだった、お前には2度も騙されたしな」


 私的にはなんで騙されたのかが不思議なんだけどね。

 まぁいいや、今はそんな事よりも。


「あの~なんて書いてあったんですか? 私の方は全く読めなくて……」


 これが一番気になる。

 私もケビンさんの字が読めたらよかったんだけどな。


「……なら本人に出て来てもらおうか。そこにいるんだろ、ケビン!」


「えっ!?」


 そこって、ドラゴニュートが出て来た通路の角の事?

 あそこにケビンさんがいたの!?


「ポチ! ケビンの奴を蹴り飛ばすのじゃ!」


『――!』


 角から人影が飛び出て来た!

 とうとう会えるんだ、ケビンさんに……!


『カタッ! カタ! カタカタカタカタ、カタカタカタカタ……』


「「「「……」」」」


『……』


 ちょっと! なにが「本人に出て来てもらおうか」よ!!

 出て来たのは、ただのスケルトンじゃないの!!

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