神様にドラゴニュートが居ませんように祈ったのに、何で目の前に出て来るの!?
どうして!? なんで!? 神様の意地悪!!
「コレット、落ち着くんだ」
「――っ!」
「息を整えろ」
そっそうね、今は神様に愚痴っても仕方ない。
落ち着け~私~深呼吸深呼吸……。
「……ふぅ~はぁ~……」
……うん……全然、落ち着かない!!
どっどどうしたら!?
「あ~……なんじゃ。昨日ぶりじゃな、あははは……」
いやいや! 私的には全く会いたくは無か……って、ドラゴニュートの鼻になんかついてる。
あれは……洗濯ばさみぽい? どうして、そんな物を鼻にはさんでいるんだろう。
「そうだな、俺は会いたくはなかったがな。で? その鼻につけている洗濯ばさみはなんだ?」
「これには色々と、ふっかいふっかい訳があるのじゃよ……」
ドラゴニュートの目線の先にはマークさん。
「? 何か俺を見てるような気がするっス」
すごい睨んでいるけど、どうして……。
「……ああ……そういう事か……」
「……あ~……なるほど……」
「……ですな……」
間違いなく香水の匂いね。
あの匂いをかぎたくないから洗濯ばさみで鼻を塞いでいるわけだ。
ドラゴニュートも生き物なんだから、もちろん苦手な物や匂いがあるとは思うけど。
まさか、その匂いがマークさんの香水だったとは……。
「え? え?」
その事にマークさんは全く分かっていないみたいだし。
「まぁそんな事よりも」
グレイさんが剣を構えた――はっ!
予想外の洗濯ばさみ姿で、ほんわかした空気が流れていたけど目の前にいるのはドラゴニュート! 何しているのよ私!
「……ふぅー……っ俺が時間を稼ぐ、お前たちは今すぐ脱出を!」
グレイさんが体を張って、私達を逃がそうとしている。
なら、私がするべき事は……。
「っはい!」
早く街に戻って、ユーリスさんにこの事を伝える事!
「え? ……あっ! お主等、ちょっと待つのじゃ!」
やば、ドラゴニュートがこっちの動きに感づいた。
「おっと、お前の相手は俺だ!」
即座にドラゴニュートの前に立ちはだかるグレイさん。
今まさに四つ星級冒険者って感じで輝いてますけど、決して無理はしないで下さいね!
「転送石――」
「――っ! グラビティーフィールド!」
「――起どっ、きゃっ!?」
なっなに?
急に体が重くなって、地面にたたきつけらた!?
「……体が……重い……」
これじゃあ動けない。
「……なっ……なんだ、こりゃ……」
「……動け……ないっ……ス」
「……です……な……」
私だけじゃなくて、みんなも同じようになっているみたいだわ。
しかもドラゴニュートは立っているし、この状況ってかなりまずい。
「うぐぐぐ……周辺の……重力を……重く……したのじゃ……これは……範囲、魔法じゃから……わしにも……被害が出る……じゃから……これは使いたく……なかった……のじゃがな……」
って自分にも効果が出る魔法ってそれは駄目でしょ、それ。
あっでも、これならドラゴニュートもまともに動……いてる。ゆっくりとだけどこっちに歩いて来てる。
今度こそ終わった……ごめんなさい、神父様、シスター……。
「……ほれ……お前は、これを……小娘には……こっちじゃ……」
……へ? グレイさんの前には1枚の紙、私の前には紙の束を置いただけで他には何もしてきそうにもない。
どういう事なの?
「……紙……だと? ……くっ……つか……何で、俺は……1枚だけ、なんだよ……」
逆に私は何で束?
「……そんなのは……知らんのじゃ……とにかく……読むのじゃ……」
いや、読めって……こんな状況で、読めるわけがないじゃない!
もしかして、束なのは私へのの嫌がらせ?
「……こんな……状況で……読めって……か? ……無茶を……言いやがる…………ああ? ……えっ? ……まじかよ……!? ……おい! ……早く、これをとけ! ……ちゃんと……見せろ!!」
グレイさんの様子がおかしい。
あの紙になにがあったんだろう。
「……逃げぬの、なら……」
「……逃げねぇよ……! ……だから、早くしろ……!」
え? 私は解け次第、逃げたいですけど。
「……わかったのじゃ……解除っと、ふぃ~やれやれなのじゃ」
「――ぷはっ!」
体が軽くなった!
これなら立てる。
「あ~助かった……って、グレイさん?」
グレイさんが紙を拾い上げて凝視している。
「…………」
「あの、その紙に何が……」
文字が書いてあるけど、何が書いてあるかしら。
「……やっぱりな……これはケビンの手紙だ」
「えっ! これをケビンさんが!?」
という事は、ケビンさんは生きているの?
神父様! シスター! ケビンさんは生きてましたよ!
「ああ、この独特な字は間違いなくケビンの字だ。ただ、少しだけ綺麗なのが気になるが……」
そうか、これがケビンさんの字――って! ものすごく汚い字!
入り口にあった落書きよりは文字っぽいけども……私には全く読めない。
「でも、ちょっと待ってくれ……俺でもあいつの字はすぐに読めないんだ、解読していかないと……。えーと、何々……」
読めないのは足り前、グレイさんですらこうなんだし。
「2人にだけずるいっス! 俺はないっスか?」
「ないのじゃ!!」
「……そんなに強く言わくてもいいじゃないっスか……」
香水の匂いがよっぽど嫌いなのね。
「……ん? ……んん!? おい! ドラゴニュート!」
「わしはナシャータと言うんじゃがな」
グレイさんが動揺している感じね。
というか、ドラゴニュートにも名前があったんだ。
「そんな事はどうでもいい! ここに書かれているのは本当の事なのか!?」
ケビンさんの手紙にはなんて書かれていたんだろう。
「そうじゃ……と言っても、お主は信じるのか?」
「チッそうだった、お前には2度も騙されたしな」
私的にはなんで騙されたのかが不思議なんだけどね。
まぁいいや、今はそんな事よりも。
「あの~なんて書いてあったんですか? 私の方は全く読めなくて……」
これが一番気になる。
私もケビンさんの字が読めたらよかったんだけどな。
「……なら本人に出て来てもらおうか。そこにいるんだろ、ケビン!」
「えっ!?」
そこって、ドラゴニュートが出て来た通路の角の事?
あそこにケビンさんがいたの!?
「ポチ! ケビンの奴を蹴り飛ばすのじゃ!」
『――!』
角から人影が飛び出て来た!
とうとう会えるんだ、ケビンさんに……!
『カタッ! カタ! カタカタカタカタ、カタカタカタカタ……』
「「「「……」」」」
『……』
ちょっと! なにが「本人に出て来てもらおうか」よ!!
出て来たのは、ただのスケルトンじゃないの!!