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コレットの書~真実・6~

『やっぱりか! お前、人の酒をなに勝手に飲んでいるんだよ! あれは高級品で高かったんだぞ!』


「仕方がないだろ、お前の手掛かりを探す為に部屋を捜索したら出て来たんだから。それにずっと放置されるより、酒も飲まれた方が喜ぶってもんだろ」


 私的にケビンさんとグレイさんのみが交わした約束とか、初めての冒険で得た物とか、友情や思い出深い事を最後の質問にすると思ってたのにな……。


「そもそも、20年前の話だからもう時効だろ。それに今のお前じゃあ、酒なんて飲めないじゃないか」


『いや、そりゃそうだが……んっ? 20年前だと?』


「そうだ、お前が消息不明になってからもう20年経つんだよ」


『なっ! そんなに経つのか!?』


 あっと、話がずれ始めて来ちゃった。

 ほぼ確実だろうけど、あのスケルトンが本当にケビンさん? なのかをはっきりさせておかないと。


「……あの~お話し中にすみません。グレイさん、そのスケル……その方は本当にケビンさんなんですか?」


「ああ、確実に本人だ」


 グレイさんが歯をむき出しにして笑っている。

 こんなグレイさんは見た事が無いから、これはもう確実よね。


「そうなんですか!」


 やった、やったよ! 神父様、シスター!

 目の前にケビンさんがいます!


「はあ~良かった……」


 色々あったけど、ケビンさんを連れて帰る事が出来……。


「……んっ?」


 待てよ……ケビンさんとはいえ、今はスケルトン。

 この状態で連れて帰ってもいいのかな? しかも家は教会、親は神父とシスター。

 これってまずくない?


「……ん~~~~……」


 これは困った。

 どう考えてもケビンさんの肉体が蘇生するわけがないし、かといってケビンさんの存在を無かった事にも出来ないし……。


「……っ」


 駄目だ、頭が痛くなってきた。

 私達にとってかなり重要な問題だけど……。


「よし、後回しにしよう」


 これはもう、みんなで話し合った方が絶対いいわ。

 じゃないと私の頭が爆発しちゃう。


「えと、私からもケビンさんに聞きたい事があるんですが……いいですか?」


 そうしたら頭を切り替えて、まずはどうしてケビンさんが私の名前を知っているのかを聞いてみよう。


『んんっ! ……なんだい? 俺で答えられる事なら何でも聞いてくれ』


「先ほど私の名前を呼んでいましたが、初対面なのにどうして私の名前を知っているんですか?」


『落として行ったナイフに名前が彫ってあったからだ。そこでコレットの名前を知ったんだ』


 ああ~なるほど、それで私の名前を……ん!?


「……ちょっ、ちょっと待ってください!」


 このナイフを持っていたのは、私に襲って来て壁に潰されたスケルトンだった。


『? どうかしたのか?』


 じゃあ、あのスケルトンってケビンさんだったの!?


「あの時、壁に潰されたスケルトンってケビンさんだったんですか!? というか、何であの時私に襲って来たんですか!?」


『そっちこそちょっと待て! 俺が襲って来たってどういう事だよ!?』


 どういう事って……。


「私をナイフで刺そうとして、体当たりをしてきたじゃないですか!」


 あの状態で襲う以外、何があると言うの?

 本当に怖かったんだから!


『体当たりをしたのはコレットを安全な壁の外に出す為だったんだ!』


 ……え? 確かに壁の外に飛ばされて助かったけど……。


『ナイフは君に返そうとして手に持っていただけだよ!』


 返す為に持っていただけ?

 それに襲いに来たんじゃなくて、私を助ける為だった?


「……え? ……え?? ……あの……それって、本当の事ですか?」


『ああ! 本当だとも! この目を見ればわかるだろ!』


「えっ!?」


 そう言われても困るわよ!

 ケビンさんの目って、空洞だからわかるわけがないじゃない!


「え~と……その~……」


 でも、それを言っちゃうと失礼よね……どうしよう。


「空洞の目を見ろ言われても、困るだけじゃろが……」


 ドラゴニュートが代弁してくれた。

 それを聞いて、ケビンさんが固まってしまった。


『とっとにかく、嘘は言っていない! 信じてくれ!』


「…………はい……」


 う~ん、確かに嘘を付く意味はないんけど……。

 けどさ、スケルトンじゃなくてもナイフを持って走って来たら、誰だって襲って来たと思っちゃうよ。


「……なぁ話の途中で悪いが、どう考えてもその話はおかしいと思うぞ」


 この状況自体が色々おかしいと思うんですけど。


『そうそう、グレイからも言ってくれ、俺がコレットを刺す訳が……』


「いや、そこじゃなくてだな」


『いや、そこがもっとも重要だろ!?』


「今の話だとお前は壁に押し潰されたんだろ? なのに何で人の形を保っているんだ? 普通は粉々になっているはずなのにおかしいだろう」


 あっそうだ! 頭は外れて地面に落ちたけど、体の方は壁に潰されていたじゃない!

 でも、今のケビンさんの体は粉々どころか、ヒビすら入っていない。


『ああ……そういう事か。この遺跡内だとバラバラになろうが粉々になろうが、時間が経てば体が再生されるんだよ』


 体が再生ですって!?


「……はっ? お前それマジで言っているのか?」


 それが本当の事なら、遺跡の不死モンスターが減らない理由ってこれだったんじゃ。


『マジだ。何なら今から見せようか? 少し時間が……』


「ムガアアアアアアア! ムガァアアアアアアアアアアアアアア!」


 ジゴロ所長さんが涙を流しながら、すごいもがいてる。

 そうよね……ジゴロ所長さんにとって、この会話に入れないし動けないしで、まさに地獄よね。

 可哀想だけど、ごめんなさい。ジゴロ所長さんを開放したら、大変な事に――。


「どうしたっスか? これをほどいてほしいっスか?」


 ちょっ! マークさん何を!?

 そんな事をしたら!


「ムガアアアアアアア! ムガァアアアアアアアアアアアアアア!」


『「おい! それだけは止めろ!!」』


 ケビンさんとグレイさんが同時に叫んで、マークさんが辞めた。

 良かった~ジゴロ所長さんには申し訳ないけど、このままでいてもらわないとこっちが困る。


「ったく……これじゃあ、いつ爺さんが抜け出すかわからんな。仕方ない、今は時間がかかる事はしたくないから再生が出来るという話で納得しよう」


 ちょっとどんな風に再生されるのか見てみたかったけど、仕方ないか。

 にしても……。


「再生ですか……それじゃ、今までのスケルトン騒動は全部ケビンさんだったりして? って、そんなわけないですよね~」


 そもそも、他にもスケルトンはいっぱいいるし。

 偶然が重なったのかも。


『何の事だよ? スケルトン騒動って』


 あら、ケビンさんは遺跡にいたのに騒動の事を知らないんだ。


「そうですね、最近だと……あっカルロフさんを蹴り飛ばしたのって、もしかして……」


 って、それはないか。

 だって、カルロフさんに飛び蹴りをする理由が無い……。


『そうだ、見事な飛び蹴りだっただろ?』


 ……のに飛び蹴りを!?

 そこが一番おかしくありませんか!?

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