……
……ち
……ちゃん。
(あれ? どこからか声が聞こえる?)
……ちゃん、おねんねしましょうね?
おねんね? とても優しい女性の声だ。
こんどは低音の男性の声まで聞こえた。
「カルデラ、エルバは寝たのか?」
「ええ。いま、お乳を飲んで寝たところよ。あまり大きな変えを出すと、起きてしまうわ」
(……カルデア? エルバ?)
お乳? ……私、そんな歳じゃないのだけど。
それに。いまさっき、キャンプの帰り事故に遭ったはず? だと、パッチリ目を開いた。
うわっ。ここはどこ? 見覚えのない部屋、柵、いくつもの変な動物、植物がついた吊り下げたおもちゃと、嗅いだこともない独特な香りまでする。
「おお、エルバが俺を見てる。いつ見ても可愛いなぁ〜。俺がエルバのパパだよ」
私のパパ?
「あ、う、ううっ? (ここどこなの?)」
あれ、言葉がうまく話せない。
ぷにぷにした、小さな手。
おお、動いた。
そうなると、私は赤ちゃんなの?
この男性は手足をパタパタばたつかせる私に気付き、柵をのぞき込んだ。
「カルデア、ごめん……エルバが完全に目を覚ました」
「ほんと? あら、ほんと。しかたのない、タクスパパでちゅね」
「うーうー(タクス、パパ?)」
もしかして、この人達は私の両親だったりして?
「あー、あ(パパ)」
「フフ、エルバも、そうだって言っているわ」
「そんなぁ、エルバ……」
「あーあー」
――パパ、どんまい。
「あなた。エルバが、あなたを見て笑ったわ」
「ほんとうだ、笑ってる。可愛い笑顔だ。ほんとうに可愛い、俺とカルデアの娘はなんで俺は幸せなんだぁ」
タスクパパの声はだんだんと震えてきて、瞳には大粒の涙を浮かべた、そばにいるママも目頭を抑えている。
あ、泣かないで。
パパ、ママ?
泣かないでと2人に手を伸ばしたけど、私の小さな手ではポロポロ流れ落ちる、2人の涙を止めることはできなかった。
「……エルバを産めて幸せ。タクス、ありがとう」
「あぁ俺だって。美人なママと、可愛いエルバのパパになれて、世界一幸せだ!」
そう叫んだ後、パパはさらに号泣した。