目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第4話 推しヒロインが多すぎる!

 変なオジさん、もとい変態仮面の顔面に俺のドロップキックがめり込んだ瞬間にあげた古羊の歓喜の声音を、俺は多分一生忘れないと思う。


 俺の蹴りをまともに喰らった変態仮面は「バ●スッ!?」と滅びの呪文と共に、慣性の法則に従い、その脂ぎった身体が宙を舞い、2度地面にバウンドしてから意識を失った。


 が、そんなこと関係ないとばかりに倒れた変態仮面に駆け寄り、馬乗りになる古羊バーサーカー


 やっちゃえ、バーサーカーッ! と銀髪ロリが叫ぶまでもなく、変態仮面の顔面に向かって嬉々として拳を振り下ろす我らが生徒会長。


 そこから先はもう……あまりにも凄惨せいさんすぎた。


 残念ながらあの光景を描写する力を俺は持っていないので、上手く説明することができないが、一言でいうのであれば……まさにこの世の地獄だとしか言いようがない。


 泣き叫ぶ変態を前に、笑顔で拳を振るう変態。


 本物の地獄絵図がそこにはあった。


 よこたんが呼んだ警察が来るまで、その地獄の鬼でさえもドン引きするようなパーティーは開催され続けたが……俺が傍観できたのはそこまで。


 白と黒の最高にオシャンティーな車に乗って現れた屈強な男たちが、この世の終わりのような光景をの当たりにするや否や、すぐさまその瞳が俺の姿を捉え。




『また貴様か大神士狼っ!?』




 と、ごくごく当たり前に俺を後部座席に押し込み出発。


『ち、違うんですっ! あ、あのっ!?』と説得しようとする爆乳わんどころか、泣き叫ぶ変態仮面をガン無視して警察署までドナドナされる俺。


 そのあとの展開は、まぁもう慣れたモノだよね?


 いつも通り警察署内に足を踏み入れた瞬間、婦警さん方からの湧きあがる悲鳴のようなざわめき。


 そして溢れ出る俺の脇汗。


 どんどん増えていく身に覚えのない罪状。


 なんだか俺、人助けをするたびに警察のお世話になってるよなぁ……。


 結局、古羊が月に代わってオシオキしていた変態仮面を引きつれて警察署まで来てくれなければ、前科一犯の犯罪者にされるところだった。


 そろそろ俺はこの無能なマッポどもを怒りに任せて千切っては投げ、千切っては投げを繰り返しても、世界は許してくれるんじゃないだろうか?


 そんな出来事があった翌日のお昼休み。


 俺は当たり前のように生徒会室でくつろぎながら、ムシャムシャと購買で買ってきたプロテインバープレーン味咀嚼そしゃくしていた。




「あぁ~、昨日は酷い目にあったぜチクショウ……」

「お疲れ様、ししょー」




 そう言って人肌に温まったお茶をコトッ! と俺の前へと差し出してくれるラブリー☆マイエンジェルよこたん。


 相変わらず気が利く女の子だ。


 きっとコイツはいいお嫁さんになるに違いない。


 俺は「サンクス」と短く答えながら、お礼のチップ代わりに熱いベーゼ口づけをお返ししてやろうとしたが、それよりも先に会長席でふんぞり返っていた古羊が上機嫌に口をひらいた。




「でもおかげで、あの変態クソ野郎を警察よりも先に血祭りにあげることが出来たわ。ありがとうね大神くん、警察に捕まってくれて。ほんと大神くんが変態で助かったわ!」

「すげぇ。こんなムカつくお礼を言われたのは生まれて初めてだわ」




 ニコニコと喜色満面の笑みで苺のマーガリンを頬張る古羊。


 なんでこの子はナチュラルに怖いコトを言うの?


 範馬の血筋なの?


 背中に鬼神が宿ってるの?




「そ、そんなコト言っちゃダメだよ、メイちゃん。せっかくししょーも協力してくれたのに……。もっとねぎらってあげなきゃ? ね?」

「しょうがないわねぇ。なら職員室に行って山崎先生(♂)をファ●クしていいわよ。アタシが許可する」

「どこのハ●トマン軍曹かな?」

「もうっ! メイちゃん下品っ!」




 プンスコッ! と可愛くいきどおるよこたんの隣で、静かにドン引きする俺。


 この女は笑顔でなんて恐ろしいことを口にするのだろうか? 


 こういう苦楽を共にして難敵を打ち倒したあとは、男女間での友情が恋心に発展していくモノじゃないの?


 なのに何で俺は発展どころかハッテンしそうになってるの?


 ほんともう俺の人生残念0点なんですけど?


 俺が上野駅13番ホームのトイレのキングとして君臨する未来予想図に身も心も震わせていると、古羊は「冗談よ」と茶目っ気たっぷりに笑った。


 テメェこのクソ女ッ!?


 人の心をこれだけかき乱しておいて、それで許されると思ってんのか!?


 でも可愛いから許しちゃおっ♪




「ところで最近、廉太郎先輩と羽賀先輩が生徒会室に顔を出さないけど、どこ行ったよ? ズル休みか?」

「あの2人なら、今日も図書館で勉強しているハズよ」

「あぁ~、もうすぐ中間テストだもんね」




 よこたんの言葉に、古羊が「そっ」と小さく頷いた。




「曲りなりにも、ウチは進学校だからね。テストの結果はそのまま進路に繋がるワケだし、そりゃみんな本気なるわよ。特に3年生は」

「な~る。だから廉太郎先輩も羽賀先輩も、最近は生徒会に顔を出さないのか」

「そ~ゆ~こと」




 上機嫌のまま、よこたんが用意してくれたお茶をすする古羊。


 そういえば、もうすぐ中間テストじゃないか。


 俺には関係ないイベントだったから、すっかり忘れてたわ。




「ところでメイちゃん? 今日の生徒会活動はどうしよっか?」

「そうねぇ。一応集まって貰ったけど……ぶっちゃけ、やることが無いわ」

「ってことは解散か?」

「というコトになるわねぇ」




 古羊がコクリッと小さく頷くのと同時に、よこたんが「あっ! だ、だったらさ!」と俺の顔を見ながら上ずった声をあげた。




「テスト前にパァーッ! と遊ばない!? も、もちろん3人でっ!」




 ど、どうかな……? と、どこかうかがうように、上目使いで俺を見上げてくるよこたん。


 かわいい。


 お持ち帰りしてやろうかな、コイツ?




「俺はもちろんOKですぜ。古羊は?」

「アタシもいいわよ。っで、どこで遊ぶの? というか、ナニで遊ぶの?」

「そりゃ、もちろんっ! 高校生が3人集まったら、やるコトなんて1つだよっ!」

「なるほど、カードゲームか」

「デュエル・スタンバイッ! ――ってこのB・A・K・A☆」

「ノリいいね、メイちゃん?」




 コツンッ! と古羊に肩をド突かれながら「はて?」と首を傾げる。


 カードゲーム以外となると、もはや3P以外思いつかないんだが?


 おいおい、マジかよ?


 ランボーもビックリの、1人ワンマン・アーミーじゃねぇか。


 大丈夫か俺?


 流石に2人同時攻略はキツいか? 


 いや、若さ溢れる今の俺ならば……イケるっ!


 大丈夫だ、自分を信じろシロウ・オオカミ。


 ピロートークの練習は、小学6年生の頃から毎日かかさずやってきたじゃないか。


『ウ●娘をシャブ漬け戦略』という絶妙なるテーマのピロートークを展開しつつ、ロマンティックな雰囲気がだんだんエロティックに変わっていき、そしてそこからまさかの2回戦突入で――よしっ!


 日本の夜明けは近いなっ!




「……目がエロいわよ、大神くん? どうせまた下品な事でも考えていたんでしょ?」

「ししし紳士の俺がそそそそんな事を考えるワケがないだろろろろろろろっ!?」

「落ち着きなさい、バカ。壊れたラジオみたいになってるわよ?」

「??? ナニしてるの、2人とも? お話してないで、はやく行こうよ?」




 気がつくと、よこたんは自分の荷物を持って扉の前へと移動していた。


 この女、ヤる気満々である。


 もはや交尾まで秒読みだ。


 マズイなぁ。このままだとホテルへ突入と同時に、夜の大運動会が開催しかねないぞ?


 本来であれば、入室と同時にお風呂に突貫し、女神が沐浴もくよくするかのごとく全身の汚れという汚れを洗い落とす所なのだが……そんな時間もなさそうだ。


 まぁそんなアンタッチャブルぶりも、嫌いじゃないぜ?




「ちょっと待って、洋子。すぐ行くから。ほら、行くわよ大神くんっ!」

「あぁ……今イクよ」




 にっ……ちゃり♪ と爽やかな笑みを頬に浮かべながら、古羊と共に荷物を持って歩きだす。


 股間にぶらさがった約束された勝利の剣エクスカ●バーをふっくらさせながら。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?