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235.偽物合戦

======= この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長。

馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。

愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

旭川茜・・・実は仮面パーティーに現れた、クラウンの女で、アメリカ空軍の潜入捜査官。

柴田管理官・・・警視庁管理官。

市橋早苗・・・移民党総裁。内閣総理大臣。

近江冬子・・・防衛省大臣。

相馬恭二・・・総務省大臣。

中村浦野助・・・歌舞伎俳優。

南部(江角)総子・・・EITOエンジェルズのチーフ。南部興信所所長夫人。伝子の従妹。

他に、エマージェンシーガールズ。


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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


◎電波オークション

市橋総理は、総務大臣時代の知識・経験を生かして、電波オークションをすることを閣議決定で断行。今までマスコミの中枢を担ってきたテレビ局の、『軽減税率』に甘えた『偏向報道』『捏造報道』に楔を打つべく、新体制の通信インフラが出来上がった。

利権に群がる与野党の反対は、覚悟の上で、国民に10種類のアンケートを実施。

前の総理と違い、国民の声を『聞く』総理として、国民の圧倒的支持を受けた。

民間会社から手を挙げた、詰まり、テレビ局運営に参加希望した会社の内、3社がオークションで経営権を勝ち取った。

しかし、国民の声で、『経営会社の冠飾ったテレビ局名は、傘下を露骨に示している』という声が上がった。そこで、今度は各局をテレビA、テレビB、テレビCと命名したが、『仮称』っぽいと言う声が上がった。実は、このネガティブキャンペーンは、那珂国の策略だったが、既に国民が、テレビ1(テレビワン)、テレビ2(テレビツー)、テレビ3(テレビスリー)と呼び始めていたので、再びアンケートを実施。晴れて正式名となった。


午後1時。EITO東京本部。司令室。

「上手く行って欲しい。」と高遠が言うと、「大丈夫さ。」と伝子が言った。

理事官と夏目警視正が口角を上げた。

午後1時。東京国際フォーラム。

テレビ局3局の社長が列席する、記念式典には、総理と、何故か防衛省の近江大臣がゲストとして呼ばれていた。

MCの利根川の合図で、5人は座談会を始めた。

そこへ、『くノ一』の格好の集団が雪崩れ込んで来た。

利根川は、社長3人、観覧客50人と共に、警備員に誘導され、逃げ出した。

座談会を撮影していたテレビ局クルーも、逃げ出した。

くノ一は何故か手裏剣ではなく、拳銃を取り出し、総理と近江大臣に向けた。

総理は、次々とくノ一の拳銃を、『自らの拳銃』で」撃ち落とした。

くノ一の集団は、背中の日本刀を抜いて襲いかかろうとした。

すると、どこからともなくブーメランが跳んできて、刀が叩き落とされた。

どこからともなくではない。エマージェンシーガールズ姿の財前が投げたのだった。総理と近江大臣は、変装を解いた。総理は旭川の変装、近江大臣は伊地知の変装だった。

旭川と伊知地は、隠してあったバトルスティックで闘い始めた。

くノ一集団は100人いたが、3人との闘いは30分で片がついた。

伊地知は長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た、通信機で、通常の大人の耳では聞こえない。

旭川は次々とくノ一の覆面をはいで言った。

「小枝ちゃんはいないわ。葉っぱちゃんだけ。残念だわ。」と、伊知地に言った。

「今までなら、こっちがメインだったけれどね。ありがとう、CIA。」と伊知地が言うと、「茜チャンか茜チンでいいわよ、同い年だから。」財前は、インカムで通信した。

「引き渡したら、一旦基地に帰って来いって言われました。」「了解。」

午後1時。テレビ1(テレビ1)。あるスタジオ。

式典の模様は、後程入る予定で、与野党議員有志のシンポジウムを放送していた。

テーマは、『原発と補助エネルギー』だった。

参加聴衆は100人程度だったが、MCが出演者の紹介を終えた所で、聴衆全員が拳銃を議員たちに向けた。

聴衆と思われていた女の集団が発砲する前に、議員達が消えた。

MCは、舞台袖に走って逃げた。反対側の舞台袖、詰まり、控えコーナーから、弓矢やシュータが飛んで来た。シュータとは、うろこ形の手裏剣で、先に痺れ薬が塗ってある。

エマージェンシーガールズが登場し、武器を落された女達に隙を与えず闘った。

遡って、午後0時半。テレビ1駐車場。

「車上荒らしですか?いけませんねえ。」と、車をこじ開けて物色していた男に高峰が声をかけた。

男が暴れるので、高峰は持っていたロープで男をサイドミラーに括り付けた。

そこに、ホバーバイクに乗った井関が登場した。ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、改造して運搬や戦闘に使用している。

「えっと、EITOガーディアンズでしたっけ?警察呼ぼうとしていたんですが・・・。」

「その前に、爆発物を処理します。EITOガーディアンズ姿の井関は、車の下に潜り込んで何やらやっていた。高峰が覗き込むと、「ああ、これか。爆発物センサーが反応していたので確認し来たんです。このフリーズガンで時限装置を使用不能にしたので、ダイナマイトを外せば、もう大丈夫。」と言って、井関は高峰にウインクをした。

状況を察した高峰は、会社事務所に電話をした。

「了解しました。警察には、こちらから通報します。」電話を切って、高峰がサイドミラーの男を見ると、失神していた。股間は・・・失禁していた。

高峰は、ニヤッと笑った。

午後1時。テレビ2。あるスタジオ。

アニメーションの吹き替えが行われていた。

声優の吹き替えエリアに数人の男が拳銃を持って現れた。

「待っていたよ。」エマージェンシーガールズ姿の馬越と増田と早乙女が、拳銃を叩き落して、絞め技で落した。

「葉っぱチャンだけか。みんな忙しくて、他に行ったかな?」

増田は、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で、通常の人間には聞こえない音を出す通信機だ。今のは『作戦終了』の合図で、EITOを通じて、警察官が、逮捕連行に来る。

午後0時半。テレビ2駐車場。

身体障害者用駐車エリアに入って来る自動車があった。

すかさず、警備員がやって来て、「ダメダメ、ダメだよう。そんなとこ駐めちゃあ。マーク見えない?」と、言った。

「丁度いい。犠牲者その1、発見!」と、男は戯けながら、スーツの上着を開いて見せた。ダイナマイトが腹にくくられている。

「助けてー。」いかにも芝居がかって警備員は叫んだ。

そこへ、「呼んだ?警部補。」と、あつこが寄って来た。

警備員こと西部警部補が指指すの見て、警察官姿のあつこは、フリーズガンで時限装置を使用不能にしてから、解体作業を始めた。

午後1時。テレビ3。玄関。

黒いスーツの男達が雪崩込んできた。

リーダーらしき男が言った。「社長は?」

「国際フォーラムで式典に参加しています。」と、受付嬢が言った。

「じゃ、副社長か専務は?」「お呼びでしょうか?」と言いながら、階段を降りてきた人物が言った。

「この間のキナミ君、おかしいだろう?辻褄あってないだろう?」「あ。クレームでしょうか?それでは、企画部長を呼びましょうか。あ。私はこういう者です。」

名刺を見た、リーダーは「白紙じゃないかあ。ふざけやがって。」と、専務らしき男の顔を殴りかかった。

突然、ブーメランが飛んで来て、リーダーの男の頭を直撃した。

リーダーが頭を押えながら、前を見ると、受付嬢がにっこり笑っている。

専務らしき男は、階段下に逃げていた。

リーダーを含めた男達が、受付嬢に襲いかかった。

5分。10人の男は、みちるの、見事なヌンチャク裁きで、天井を眺めて横たわっていた。

「玉井。」「はい、白藤様。」「よくやったわ。ご褒美に『注文』してあげる。飛び切り、上等のマタニティー服を用意して。これは、コスプレじゃないわよ。」

「白藤様。おめでたでございますか?」「守秘義務は守りなさい、玉井。」「勿論でございます。おめでとうございます。喜んで準備させて頂きます。」

2人の様子を、駆けつけた愛宕が見て笑っていた。橋爪警部補も笑っている。

遡って、午後0時半。テレビ3。駐車場。

車の中から張り込みをしていた、橋爪警部補が愛宕に言った。

「警部。お客さん。時間厳守ですね。30分前とは、マナーがいい。」

2人が見ている方向に、10人の男達がいた。キャンピングカーで登場した男達は、代わる代わるキャンピングカーの中でスーツに着替えた。

「正装ですか。大学生かな?実に珍しい光景だ。写真に撮っておこう。」そう言って、橋爪はスマホに次々と撮影して行った。

「そろそろ、時間かな?」と、愛宕が呟くと、男達は正面玄関に入って行った。

車を降りながら、「警部。大丈夫なんですか?」と、橋爪が言うと、「男達が?僕の愚妻が?」と、愛宕は返した。「失礼。愚問でした。」

午後2時。総務省大臣の相馬恭二の家。

ワゴンカーに乗り込んだ後、スライダーを開けて、賊が拳銃を向けた。だが、賊は驚いて言った。

「違う。」「違う?そらそうやろうなあ。」と、浦野助は言った。

賊が、その言葉にも驚いていると、両耳に銃のようなものがあてがわれた。

途端に、賊は耳を押え、しゃがみ込んだ。

「水鉄砲でもなあ。結構役に立つで。」と、総子は言った。

総子が振り向くと、金森達が、賊の仲間を倒していた。

「やっぱり、隊長の従妹ね。考えたこと無かった、今の水流ガンの使い方。」と、金森は感心した。「いや、ウォーターガンやけどな。」

水流ガンとは、発射後グミ状に変化する水を撃つ銃で、ウォーターガンとは、文字通り『水鉄砲』である。

「後で、耳鼻科行きや。あ。その前に警察やな。浦野助さん、ありがとう。無理聞いて貰って。」「いやいや、『早変わり』は専門やサカイな。相馬大臣。もう大丈夫ですよ。」

相馬は、恐る恐る、毛布を脱いだ。

午後2時。半グレの『みなもと会』。

表の庭には、50人の社員が晴天を眺めて横たわっていた。

柴田管理官が警官隊を連れてやって来た。

「エマージェンシーガールズ、ご苦労様です。」柴田管理官が、なぎさに挨拶した。

「また、エーアイの『お告げ』ですか?」と言う柴田に、「今回は『本物』のエーアイと人間のエーアイの協同作業らしいですよ。」と、なぎさ応え、柴田は首を捻った。

「管理官。」と、部下が呼びに来たので、「それでは。」と柴田は敬礼して、『ガサ入れ』現場に向かった。

「副隊長。」「なぎさでいいって、さやか。お互い副隊長だし、『伝子シスターズ』だし。」「うん。よく解いたよね、ウチの『エーアイ』さん。」

「小堺組のタレコミを上手く繋げたわね。『母子家庭が違反』から、違法養子縁組の組織を割り出すなんて。」「その前に、『外反母趾定価』から、簡単にアナグラム解くのも凄いわ。」

二人が雑談していると、警官隊が、半グレ社員を連行して行った。

柴田管理官がやって来て、紙片を見せた。

「まだガサ入れの途中ですが、こんなものがありました。本庁にも連絡しておきます。」

紙片には、こう書いてあった。

よくやった。エマージェンシーガールズ。東京体育館で待っている。午後5時でどうかな?『大枝』の枝太郎。

「舐め腐りやがって。」と、思わず、なぎさは言った。

「ああ、失礼。男子だったら、こう言うかな?ってことです。やだあ、恥ずかしい。」

その様子を見ていた仁礼が、「皆、後ろ向いて。」とインカムで呟いた。

皆、咄嗟に後ろを向いたが、「仁礼、宿直10日間..な。」と、インカムから、なぎさの声が響いた。なぎさは、インカムのスイッチを切っていなかった。

仁礼は、跪き、十字を切った。

―完―


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