北島は顔を押さえ、倒れ込んだ。北島と一緒に行っていたメンバーが北島のほうに駆け寄り、起こそうとしている。黒田は北島と共に他のメンバーも睨みながら、大声で怒鳴った。
「ばかやろー。びびってどうする。俺たちもそれなりにならした族だろうが。はじめから相手に飲まれるようだったら、勝てる喧嘩も勝てねえよ」
黒田は他のメンバーの手前、虚勢を張ったのだ。黒田自身、数回龍田と喧嘩したことがあったが、すべて負けた。その当時より強くなっている様子を聞いたことで、1対1なら負けるだろうが、内弟子の人数はたかだか4人だ。それに対して黒田のチームは総勢20人以上だ。ここにはその半分しかいないが、明日には全員揃う予定だ。数の上からいくと絶対に負けない、という気持ちがある。もし龍田や他のメンバーが大したことがないと判断したら、今いるメンバーだけで乗り込むことも考えていた。ただ、北島たちの話を聞いて、躊躇したのは確かだ。しかし、そういう心を他のメンバーに知られるわけにはいかない。また、ここで再度、龍田に恥をかかされるわけにはいかない。何としても龍田を打ちのめしたい。そういう気持ちがミックスされ、強い言葉となって現れたのだ。
「オス! 分かりました、黒田さん。やりましょう。全員その気でやれば、十分締められますよ。龍田のやつ、思い知らせてやりましょう」
北島が直立不動の姿勢で答えた。他のメンバーも一斉に気勢を上げた。北島も黒田の勢いに乗せられ、気持ちが大きくなって先ほどの消極的な気持ちが消えていた。いわゆる、みんなで渡れば怖くない、といった心境になったのだ。
「今から行きますか?」
北島が尋ねた。その表情は戦闘モードだった。
しかし、黒田は慎重だった。失敗は許されないので、先ほどの北島たちの話を考慮し、態勢を整えようと考えた。
「待て。これからだったら向こうも人数が増えるかもしれない。昼間の少ない時がいい。こちらもまだ全員いるわけじゃないしな。明日、やるぞ」
黒田たちは、数の力で圧倒しようと考え、人数が揃う明日まで伸ばすことにした。具体的な方法については、場所を変え、ゆっくり練ることになった。