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第47話 お父さんに凸してみた

 私たちは天野先輩の権力を使用して、藤上さんのお父さんを拉致した。

 大事の前の小事だ。

 しょうがないよね。


 お仕事でお疲れのところを、飛馬先輩の必殺の鎮静剤『説得者パーシェイダー』を使用して眠らせて。

 法律の外にいる腕力家・咲さんに車を出して貰って、廃工場に連れ込んだ。

 無人で、誰もおらず、ゴミが散らばっている潰れた工場。

 そこに連れ込んでパイプ椅子に座らせ。


 そして縄でグルグル巻きにして、目覚めるのを待った。


 ……2時間くらい経ったのかな。


「う……」


 身じろぎし、藤上さんのお父さんが目を覚ました。


「……ここはどこだ?」


 第一声がそれで。

 私は


「どうか、藤上夕夏さんをいじめるのはやめてあげてください!」


 頭を下げて誠心誠意お願いしたんだ。




 藤上さんのお父さんは一瞬わけがわからないという顔をしていて。


 数瞬後、意味が頭に浸透したのか、不機嫌になり


「……いじめてませんね。不必要なお金を掛けないことにしただけです」


 私の子供ではない子供に、何で大量のお金を掛けないといけないんですか?

 200万円ですよ? 国立で。

 私立ならもっと掛かるハズ。


 あなたのような子供に、200万円の重さ、分からないでしょう?


 藤上さんお父さんの言葉。


 ……それを言われると黙るしかない。

 その通りだから。


 働いたことが無い私に、200万円の重さは理解できない。

 それだけ稼ぐのにどれだけ大変なのか分かんない。


 だけど


「藤上さんは好きで托卵の子として生まれて来たわけじゃないです! そして藤上さんは自分の存在を申し訳なく思ってるんですよ!?」


 そう。

 藤上さんに身の上を話してもらっていたとき。


 藤上さんは一言もお父さんに対する恨み言は言わなかったんだ。

 お父さんの気持ちが分かる、とまで言ったんだよ。


 それなのに……


 私がそう言うと、お父さんは辛そうな顔をしたんだ。


 ……そこでちょっとわかっちゃった。


 本当はお父さんも藤上さんに罪が無いことを理解しているんだって。

 でも憎しみが強すぎて、許せなくなっているんだ。


 可哀想……

 憎しみの中から抜けられないなんて。


 辛くなる。

 他人を裏切る行為、欺く行為ってこんなに罪深いんだね……!

 不倫なんて最低だ! 絶対やっちゃいけないよ!


 ホント、汚嫁ケモノの罪は重い……!

 地獄に堕ちろ! 死んでしまえ!

 クソが!


 私がそう、最低の罪を犯した生物に、激しい怒りを燃え上がらせていると。


「祈里、藤上書記が母親ケモノをナイフで襲って逮捕されたみたいやで」


 自分のスマホを見ながら。

 ……そんなことを飛馬先輩が言い出したんだ。


 うえええええ?

 マジで!?

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