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188. 姫は『まずい』ようです

188. 姫は『まずい』ようです




 翌日。オレは桃姉さんと共にリビングで元日の配信の打ち合わせをしている。彩芽ちゃんは事務所のスタジオで年末のすたライの3期生のユニットとルナちゃんとのユニットの収録が入っているので不在だ。


「今回の最後の枠は『姫宮ましろ』の枠で行きたいんだけどいいかしら?」


「企画は考えるのか?」


「ううん。事務所で会議したから、颯太が良ければこれでいくけど」


 そう言って桃姉さんはスケジュールをオレに見せてきた。


『あけおめ!元日からFmすたーらいぶ!』日程


 9:00~10:00 

 すたライフ あけおめアニメーション


 10:00~13:00

 Fmすたーカウントダウンライブ見逃し配信


 13:00~14:00

 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~4期生~ 

 ※枠主は夢花かなえ


 14:00~15:00

 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~3期生~ 

 ※枠主は九重キサラ


 15:00~16:00

 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~2期生~ 

 ※枠主は遠山さくら


 16:00~17:00

 あけおめ座談会!昨年の振り返りと今年の抱負を添えて~1期生~ 

 ※枠主は神川ひなた


 17:00~19:00

 姫の初演説

 ~ライバーとの関係性を再確認!~


 なるほど初演説か。あとは同期が集まる座談会か。去年は『リスナーが選ぶ公式企画配信ベスト10』とか『Fmすたーらいぶオリジナル曲メドレー』をやって、最後の枠でさくらちゃんの『あけおめだぜい!逆凸捜査の巻』をやったんだったな。


「今年の『姫宮ましろ』はコラボも多かったし、何より今までとは違う一面を見せてきたでしょ?Fmすたーらいぶの在籍ライバーとの関係性の変化を話しながら、初演説をする。この内容でいこうと思ってるの」


「ああ。いいんじゃないか?去年の思い出を話しながら、今年そのライバーさんとやりたいこととかを話すのもいいかもな」


「よし。じゃあ決定ね。これでライバーには事務所から連絡するから」


 1期生とのコラボも新年一発目からあるのか……座談会か。去年のオレなら考えられなかったよな。本当に色々変わったな。


「そういえば颯太」


「ん?」


「最近彩芽ちゃんとどうなの?上手くやってる?」


「え?別に仕事に支障は出してないはずだけど?」


「そんなこと言ってないわよ。最近忙しくてすれ違いになってない?ちゃんとフォローしないとダメよ?仕事もプライベートも」


 そのまま桃姉さんはパソコンで仕事をし始める。確かに……最近は忙しくて彩芽ちゃんとは『双葉かのん』の仕事の話ししか、まともに出来てないかも……


 待てよ……良くドラマや漫画などで、こうやって仕事のすれ違いが続いて別れるなんてこと聞いたことあるぞ……これはマズい……でもどうすれば……


 オレはそのまま部屋に戻り、日咲さんにディスコードで通話をすることにする。残念だが、オレには日咲さんしか頼る人がいないんだ。


「あ。もしもしポアロ探偵?」


 《姫?どした?》


「ちょっと話したいことあってさ。今仕事中かな?」


 《今、事務所であるととのすたライの収録の仕事中だけど?》


 そうか、日咲さんは衣音ちゃんと『あるアロ』のユニットを組んでいるんだったな。すると後ろから声が聞こえてくる。


 《あの……ましろん先輩ですか?》


 《うん。なんか話したいことあるんだって》


「あ。かのんちゃんいるんだった……忙しそうだね。またかけるよポアロ探偵」


 《え?あっうん》


 そうしてオレは通話を切る。彩芽ちゃんがいるなら今は無理だ。さすがのオレも空気くらい読める。しかし、オレはこのままではまずいと感じている……だって彩芽ちゃんと付き合ってからもうすぐ3ヶ月が経とうとしているのだ。なのにその間まったくデートというデートをしていない。


 つまりオレと彩芽ちゃんは恋人として全く進展がないのである。彼氏という立場よりマネージャー、先輩のVtuber『姫宮ましろ』として接しているほうが長いのかもしれない。


 これは……なんとかしなければ……

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