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279. 姫は『苦手』らしいです

279. 姫は『苦手』らしいです




 そして週末。今日は彩芽ちゃんのホラーゲーム『死神ホテル』の実況プレイ配信の日だ。


 彩芽ちゃんは無事に愛梨ちゃんこと『朽木ココア』とのオフコラボをすることになっている。もちろんそこに朝比奈さんこと『伊集院クララ』も参加することになった。まぁオレの無茶振りだけど。


 とりあえず今は彩芽ちゃんを送るために駅まで2人で歩いている。


「あの……私……話せますかね?本当にクララ先輩とは……はっ初めてなんですけど……」


「大丈夫だよ。ディスコードで話したんじゃないの?」


「ネットとリアルは違います……」


「まぁ……そうだけど。一応日咲さんと同い年だから、彩芽ちゃんともそんなに離れてないし、ほら愛梨ちゃんも一緒だから大丈夫じゃない?」


「そんなこと言って……颯太さんは、私のコミュ障陰キャ女おつを甘くみてます……」


 ……あまり自分を卑下するもんじゃないよ彩芽ちゃん。確かに、まだディスコードでしか絡みのない相手と、初めてのオフコラボは不安だろう。


「彩芽ちゃん自分の配信で頑張って変わるって言ってなかった?」


「言いましたけど……颯太さんって。仕事のことになると、マネージャーというより……ましろん先輩みたいです……」


「そう?なんか嬉しいな。そうか、『姫宮ましろ』みたいか」


「別に喜ばそうとしてません……」


「でも彩芽ちゃん嬉しそうだよ?」


「それは……嬉しいですけど」


 顔を赤くする彩芽ちゃん。うんうん。可愛いな。そして更にもじもじしながらオレに話す。


「あの颯太さん……その……休み……」


「休み?ああ。来週休みをもらったから大丈夫だよ。温泉旅行だよね?旅館も予約してあるから」


「同じ……部屋ですか?」


「え?うん……もしかして……ダメだった?」


「そ、そんなことないです……」


 そして赤い顔を伏せながら黙ってしまう。その沈黙に少し緊張してしまう。いや……その反応されるとオレのほうが困るんだけど……そんな彩芽ちゃんの態度に少しドギマギしながら歩いていると、あっという間に駅に着いてしまう。


「それじゃあ……頑張ってね」


「はい……がんばります……」


 そして改札の向こうに消えていく彩芽ちゃんを見送った後、オレはそのまま家に戻る。


「えっとやることは……サイン書きだろ、すたライフのボイス、あとはクララちゃんとの歌ってみたの歌詞割りの確認と収録……あとは明日の配信のサムネか」


 結構忙しい……でもオレは基本は雑談配信だから、他のライバーさんはここに企画を考えたり準備をしたりしているので文句は言えないけど……


 それにしても朝比奈さん本当に歌ってみたのお誘いしてくるんだもんな……でもそうやってモチベーションが回復してくれたのは良かったな。まぁオレも歌ってみたの動画は今年出したいなと思っていたし、それもあって好きじゃないけどやることにした。


 しばらく仕事をしていると、ディスコードにチャットがくる。画面には『神川ひなた』の文字。


「月城さん?ディスコードだから、『姫宮ましろ』に用があるのか……」


 オレはディスコードを開くと、そのまま通話をかける。


「もしもし?ひなたさん?」


 《あ。ましろちゃん今大丈夫?ちょっとお願いしたいことあってさ?》


「お願いしたいこと?」


 《うん。あけおめ座談会のときにコラボの話あったでしょ?ましろちゃんはこの前『海の迷宮』やったじゃん?ひなたもやろうかなって。今月じゃないとスケジュールが合わなそうだからさ?それでマネージャーが晩酌のオフコラボダメって言うから、スタジオ収録なんだけどましろちゃん司会やってくれない?》


「司会?でもましろはスタジオ行けないけど?」


 《ましろちゃんは、この前の『Fmすたーらいぶ学力王選手権』と同じで家からでいいからさ?どうしても司会が必要なんだよね》


 まぁひなたさんには司会をお願いすることもあるし、その代わりじゃないけど同期だし断る理由はないな。


「うん。分かったいいよ」


 《ありがとうましろちゃん。それじゃ企画書送っておくから、当日よろしくね?》


「うん。よろしく」


 司会か……あまり得意じゃないんだけどな……というかオレって何もやって来なかったから苦手なことが多いよな……後輩も増えてるのにこのままじゃいけない。だからこそ、今年は頑張らないとな。

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