311. 後輩ちゃんも『意地悪』らしいです
オレは今、彩芽ちゃんとクレープを食べにフードコートに来ている。そこで偶然にも衣音ちゃんと愛梨ちゃんと出会い一緒にクレープを食べている。
「彩芽ちゃん。頬にクリームついてるよ?」
「え?あ。……恥ずかしい……」
「ほら。じっとしてて」
オレはそう言いながら彩芽ちゃんの口元についたクリームをおしぼりでとってあげる。
「あ……ありがとうございます……マネージャーさん」
「仲良いんですね。兄妹みたいw」
兄妹……愛梨ちゃんにも言われたよ。でも彼氏彼女に見えないのが複雑だな……
「そう言えば彩芽ちゃん。配信では『ましのん』って姉妹みたいだよね?私まだ会った事ないんだけど、ましろ先輩ってどんな人なの?ずっと直接お礼言いたいんだけど機会がないんだよね」
「え?えっと……とても……優しくて素敵な人だよ」
「なんか良く分からないけど……あれ?衣音ちゃんもこの前3D配信一緒だったよね?」
「あーうん……『海の迷宮』だと凛花さんがお姉さん、姫先輩がお姉ちゃんって感じ。話しやすいし、配信では色々助けてくれるし、無茶振りにも乗ってくれるし。めっちゃ優しいよ」
「そっかぁ。私も会ってみたいなぁ!でも会ったらやっぱり緊張しちゃうかもw」
うん。目の前にいるよ『姫宮ましろ』は。それより衣音ちゃんはオレの事そう思ってくれてるんだな。ちょっと嬉しいよ。
すると横から視線を感じ、チラッとそちらを見ると、彩芽ちゃんがジト目でオレを見ている。あれ?なんか機嫌悪くなってない?気のせいかな?
「そう言えば今日の配信緊張するなぁ……リーダーだし。ちゃんと回せるかな……ポンココしたらどうしよw」
「いや愛梨ちゃんのチームは大丈夫じゃん。それより私の方が緊張してるよ……」
「衣音ちゃんのチームは二大巨頭がいるもんねw」
「そうなんだよね……姫先輩が上手くフォローしてくれると助かるけどなぁ~?」
……それは遠回しにオレに何とかしてほしいと言うことなのか?まぁフォローはするつもりだから安心してほしい。
「でも大丈夫じゃない?ほら、ましろ先輩はなぜか海原あると推しじゃんw」
「え?あっうん。なんでなんだろうねw」
「彩芽ちゃん何か知ってる?あれパフォーマンスだよね?」
「……どうなんですかマネージャーさん?」
「え?オレ!?」
「マネージャーさん……ましろん先輩と仲良しですよね?」
彩芽ちゃんの目が怖いが……だがオレは見逃さないよ?その瞳の奥に今のこの状況を楽しんでいるVtuberとしての本能がギラギラしているのがね。
なるほど……『姫虐』か。彩芽ちゃんも配信外でかましてくるなんて成長したな。オレは一度咳払いをしてから、話し始める。
「あー……想像だけど、アバターが好みなんじゃないかな?可愛いでしょ?青髪のツインテールで。衣音ちゃんの声にも合ってると思うし……あと本人がゲームやらないから、ゲーム配信を観るのが好きらしいよ?衣音ちゃん上手いから楽しいんだよ。それこそメンシに入りたがってるくらいだし……」
オレが多少早口でそう言うと、一瞬時が止まるが衣音ちゃんが照れながら口を開く
「ありがとうございます……」
「なんで衣音ちゃん照れてるの?マネージャーさんの想像だよ?」
「うるさいなぁ。知ってるよそんなの」
衣音ちゃんは恥ずかしそうにそう言いながら、愛梨ちゃんに肘で攻撃している。これが配信なら『あるココ』のやり取り……可愛いな。うん。
そのあとは配信の話や、この前の『コラのん』のオフコラボの話をして解散した。そしてそのままオレと彩芽ちゃんは家に帰ることにする。
「ビックリしましたね……まさか2人に会うなんて……」
「そうだね。そう言えばさっきの無茶振りはひどいんじゃない?」
「無茶振りにも乗ってくれるって……衣音ちゃん……言ってましたよ?」
「それは『姫宮ましろ』ね?」
「颯太さんは『姫宮ましろ』です」
そう言いながら少し膨れる彩芽ちゃん。いや確かにそうなんだが……
「ふふ。少し意地悪しただけです」
「ひどい後輩だ彩芽ちゃんは」
「いつもは颯太さんのほうがひどいです」
「オレのは先輩としての愛だよ?」
「また……ずるいです」
そんな会話をしながらオレと彩芽ちゃんは仲良く手をつなぎながら家に帰るのだった。さぁ配信頑張らないとな。