395. 後輩ちゃんは『ラーメン』が食べたいようです
そして翌日23時。オレは伊集院クララこと朝比奈さんに自分の正体を話すために、事務所の会議室にいる。事前に1期生には伝えており、他の人はいつものようにマネージャー経由で伝えてもらう。
ちなみに立花さんからは、『ならクララとの3Dコラボお願いね。良かったわ、あんなキレッキレのダンス踊るの大変だったからw頑張ってねw』と言っていた。そう言えば『ましリリィの3Dコラボ』もあるんだったな……ということは朝比奈さんも一緒にやるとすると7名か。そんなにダンス覚えられるだろうか……
そんなことを考えていると朝比奈さんがやってくる。
「お疲れ様です。あ。お久しぶりです神崎さん」
「お疲れ様朝比奈さん。そこに座って?」
「はい……というか私、会議室間違えてませんよね?」
「うん。合ってるよ。ごめんねこんな遅くに」
「重大なことってなんですかね?もしかして……また炎上したのかな……」
そう言って不安そうにする朝比奈さん。やっぱりみんなそう思うんだろうな……。まぁこんな夜に事務所から呼び出しなんて聞いたら普通はそうなるよな。
「安心して朝比奈さん。炎上とかじゃないから。それに今日呼び出したのはオレなんだ」
「え?神崎さんが?」
「うん。驚かないで聞いてほしいんだけど……」
「なんか怖いんですけど……」
「実は……1期生の『姫宮ましろ』は……オレなんだ」
オレがそう言うと朝比奈さんは驚く様子もなく、すぐに答える。
「はい。あ。……そうだったんですか!?嘘!?ましろ先輩が神崎さん!?……とか言ったほうが良かったですか?ふふ。知ってました」
「だよね……」
「でもちょっと不安でした。絶対私が気づいてると思ってるはずなのに何も言われなかったので。彩芽ちゃんも他の1期生も何も言わないですし。私嫌われてるのかと思ってましたw」
「いやそんなことはないよ。極力正体を明かさないようにしてるだけだよ」
「それで……神崎さんはどうしてこのタイミングで私に正体を明かすんですか?」
「いや夏の長時間耐久配信のユニットが『あかくま』でほぼ決まっているらしいからさ。朝比奈さんに話さないとって思って」
そのあとオレは『姫宮ましろ』になった経緯や桃姉さんとの関係性、あとは誰が知っているかなどを朝比奈さんに話した。
「色々大変ですね。でも、1つ言えるのは神崎さんが『姫宮ましろ』として頑張ってくれたから、私たち2期生や他の後輩が活動できているわけですから、感謝しかないですよ。本当にありがとうございます。えっと……ましろ先輩」
そう言って朝比奈さんは頭を下げる。こうやって素直に感謝の言葉を伝えられると嬉しいものだな……
「ん?あれ彩芽ちゃんからメッセージ来てます……『今事務所です。話し合い終わったら一緒にラーメン食べませんか?』って」
「え?彩芽ちゃん事務所に来てるのか?」
「そうみたいですね。神崎さん心配されてますね?」
「いや、普通に朝比奈さんとラーメン食べたいんじゃないかな?本当に彩芽ちゃんは朝比奈さんが好きみたいだね?」
「嬉しい限りですよ。本当に私のどこが好きなんですかねw神崎さんもラーメン行きますよね?『初めて裏でましろ先輩とご飯食べましたわ!』って配信で話したいですしね?」
「うん。行こうか」
会議室を出て事務所に来ていた彩芽ちゃんと合流して近くのラーメン屋さんに向かう。その道すがら、彩芽ちゃんと朝比奈さんが仲良く話している。
「あの……紗希さん。味噌ラーメン……好きですか?」
「うん。一番味噌が好きかも」
「今から行くお店……味噌が一番人気で……野菜もいっぱい入って……はい」
「そうなの?それじゃ彩芽ちゃんのおすすめを食べようかな」
「はい。あ。あの颯太さんも……」
「うん。オレも味噌ラーメンにするよ」
なんか……本当に2人の距離が今までよりもグッと近くなった気がするな。こうして仲良くなってもらえると嬉しい。
ラーメン屋に着いて3人で味噌ラーメンを食べる。彩芽ちゃんは嬉しそうに食べている。本当に美味しそうに食べる子だよな。
ちなみにオレと朝比奈さんは普通盛りなのだが、彩芽ちゃんは野菜も麺も大盛で頼んだのでオレの倍くらいあるんじゃないか?ってくらいの量だったけど。
それでも彩芽ちゃんは全て食べきったあと……スープまで飲み干した。これが22歳の胃袋か……でもそんな姿も可愛いよな。ごちそうさまでした!