442. 『あかくま50』~オフパート 『ましのん』みたいな~
窓から光が差し込む。時間は6時30分。オレは微睡みの中、起き上がり軽く伸びをする。うん。やはりベッドで寝ると違うな。
そろそろ彩芽ちゃんと衣音ちゃんのゲーム配信が終わる頃だな。深夜帯の時間を担当してくれる2人に感謝しながら、色々確認をしようとパソコンを立ち上げる。すると、丁度終わったところのようだ。
このあとは衣音ちゃんの通常配信。そしてそのあとがオレの通常配信になる。そのまま飲み物を取りにリビングに向かうと、すごくいい匂いがしてくる。
キッチンにはエプロン姿の朝比奈さん。すごく美味しそうな匂いが食欲をそそる。
「おはようございます。勝手にキッチン使わせて貰いました。良かったら神崎さんも食べてください。簡単なおにぎりとかサンドイッチですけど」
朝比奈さんは朝からご飯の用意をしてくれていた。本当に女子力高すぎだろ。そんなことを思っていると配信を終えた彩芽ちゃんと衣音ちゃんがやってくる。
「あ。サンドイッチ……」
「美味しそう!これ紗希さんが作ったんですか?」
「うん。良かったら食べて」
「じゃあ、これ写真撮ってこのあとの配信で『お嬢先輩が作ってくれた』って載せてもいいですか?」
「大したものじゃなくて恥ずかしいけど、衣音ちゃんが話のネタになるなら全然いいよ」
それから衣音ちゃんは部屋に戻り雑談配信をする。オレと彩芽ちゃんと朝比奈さんはそのままリビングでおにぎりやサンドイッチを食べながら軽くスケジュールの確認をすることにする。
「オレはこのあと朝配信、17時からの企画配信を終えて、そのまま月城さんの家で22時からオフコラボだな」
「私はこのあとすぐに紫織さんの家に向かって10時から配信、そのあと打ち合わせして14時からオフコラボ、戻ってきて21時から配信ですね」
「私もこのあと事務所に行って12時から企画配信、15時くらいに戻ってきて寝ます……そして紗希さんと21時から配信です」
「えっと衣音ちゃんは……今の朝配信が終わったら休憩で、19時から愛梨ちゃんの家でオフコラボ、戻ってきて0時からまた長時間配信か……」
見事に全員スケジュールがバラバラだが、休憩はきちんと取れているので問題はないだろう。
「あ。あの……さ……紗希さん」
「うん?どうかしたの彩芽ちゃん」
「えっと……夜……衣音ちゃんが配信なので……その……」
「あー……じゃあ彩芽ちゃんの部屋で寝てもいい?」
「はっ……はい!」
すごく嬉しそうな彩芽ちゃん。やっぱりこういう所は普通の女の子らしくて可愛いよな。そしてそのまま衣音ちゃんの雑談配信が終わり、そのあとオレの枠でいつもの朝配信を終える。ちょうど彩芽ちゃんが事務所に行く所だったので見送りに玄関に向かうことにする。
「彩芽ちゃん。良かった間に合った」
「あ。颯太さん。事務所に行ってきます」
「うん。気を付けてね」
「あの……」
「ん?どうかした?」
「今は……紗希さんはいないですし、衣音ちゃんは寝てます。その……行ってきますの……キスとか……しますか?」
なっ……彩芽ちゃんなんてことを言い出すんだ!でもそんな目で見られたら断れない。少し躊躇いながらも軽いキスをすると、彩芽ちゃんは嬉しそうに照れる。可愛い。
「彩芽ちゃんって……悪い子だね?」
「じゃあ……もうしません」
「してくれないの?」
「……たまには……しますけど~……」
そう言って膨れながら話す彩芽ちゃんはやっぱり可愛い。なんか今のやり取り『ましのん』みたいだなとか思ってみたりして。そのままオレは部屋に戻り仕事をすることにする。夏の長時間配信中とはいえ、普段の仕事もあるのだ。
「さて、とりあえず次の配信を観ながら作業するか」
オレは朝比奈さんが作ってくれた残りのおにぎりを食べながら作業をしていくことにする。こうして『あかくま50』の2日目が始まって行くのだった。