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502. 姫は『思いついてしまう』ようです

502. 姫は『思いついてしまう』ようです




 無事に夏の長時間耐久配信『あかくま50』が終わり、オレも彩芽ちゃんもいつも通りの日常に戻った。新しい5期生たちはコラボ解禁されたので、今までより活発に企画やらコラボなど頑張っている。早くこのFmすたーらいぶに慣れてくれるといいよな。


 そしてオレは今、事務所の会議室で桃姉さんと高坂さんと次の案件の打ち合わせをしていた。


「Pastelパティ?」


「全国展開するお菓子専門店よ。最近はアイスクリームやクレープなどにも力をいれていて、特に若い女性から絶大な支持を受けているわ」


「そして今回Fmすたーらいぶからは、姫宮ましろ、双葉かのん、遠山さくらの3名をイメージキャラクターとして起用します。ちなみに、姫宮ましろはピーチ味、遠山さくらはストロベリー味、双葉かのんはマスカット味のコラボアイスクリームを販売する予定です!」


 今回の案件は、この秋に発売する新作アイスクリームの宣伝をコラボとしておこなうもの。


 そして、Fmすたーらいぶのような女性Vtuberしかいない事務所の視聴者は男性層が多く、まだまだ女性層が少ないのが現状。女性層をターゲットととしたコラボ案件……これは会社にとっても重要なものということだな。


「高坂さん……星影つむぎはいないんだな?オレはてっきり……」


「いやいや、私はまだデビューしたばっかりですから。いきなりコラボ案件の大役なんて無理です!」


「あ。颯太。この案件は、まずPastelパティさんへの外ロケをして、週末スタジオ収録での3D生配信もあるわ」


「ということは……遠山さくらちゃんにオレの正体を明かすということか?」


「そうなるわね。会社としてもこのコラボ案件は外せないし、Fmすたーらいぶの知名度アップのためにも必要な事なの。悪いけど理解して?」


 さくらちゃんか……まぁ……今更か。朝比奈さんにも正体を話したばかりだしな。それに、オレもいつまでも正体を隠して活動するわけにもいかないし……


 その時……オレは1つあることを思いついてしまう。


「分かったさくらちゃんには正体を話すよ。あのさ桃姉さん。1つ相談があるんだけど……」


「相談?何かしら?」


 オレはそのまま思いついたことを話す。もうVtuber脳、配信者脳なんだなオレも……それを聞いた桃姉さんは少し驚いたあと、笑ってこう答えた。


「なるほどね……社長に聞いてみるから待ってて。というか……本当にあんた……Vtuberとして楽しんでるのね?本当に昔ならあり得ないわよ」


「かもな。でも絶対配信は面白くするから」


「神崎先輩ってすごいですね……」


「まぁ……オレじゃなくて『姫宮ましろ』ならどうかな?って話だよ高坂さん……いやつむぎちゃん」


 とその日の話し合いは終わり、更に3日後。社長からも『面白いじゃない。楽しみね』と許可が出た。本当にあの人はこういうの好きだよな。


 そして、さくらちゃんのマネージャーさんにも許可をとり、高坂さんにはPastelパティさんにも企画を説明し、当日『姫宮ましろ』はスタッフとして参加していることを伝えてもらった。逆に考えたらこっちのほうが身バレしないから良かったかもしれないよな。オレはそのまま彩芽ちゃんに案件と共に内容を伝えることにする。


「え?ドッキリですか?」


「うん。明後日ロケがあるんだけど、オレはそのまま双葉かのんのマネージャーとして参加する。そして週末のスタジオ収録にサプライズで登場して正体を明かそうかなって?」


「だっ大丈夫ですか?さくら先輩がなんか変なこと口走っちゃったら……」


「さくらちゃんなら大丈夫だと思う。まぁ事前にマイクをミュートにする事をリスナーに伝えれば大丈夫だよ」


 ドッキリ。やっぱり姫宮ましろと遠山さくらと言ったらこれだろ。こうして彩芽ちゃんの協力をもらい、さくらちゃんを驚かせるためのドッキリを仕掛けることに決まったのだった。

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