518. 姫は『改革』したいそうです
今日も自宅のリビングで高坂さんと打ち合わせをしている。もうずいぶん慣れたよな……高坂さんとの打ち合わせ。最初は年下の女性だし、あまり上手く喋れなかったけど。
「じゃあそのスケジュールでお願いします!」
「うん。分かった」
最近は高坂さん自身も『星影つむぎ』として活動しているので、よりライバー目線にたった話なども出来るようになっている。まぁ基本的にはオレから話すことなどほとんどないんだけどな。
「はぁ……」
「どうかしたの高坂さん?」
「あっいや……明日公式企画があって……1人で司会なんですよね」
「明日?ああ、秋の大型企画のやつか。でも高坂さんもだいぶ公式企画の司会はやってるだろ?」
「そうなんですけど……明日は1人なので。まだ慣れないというか……」
確かに公式企画は他のライバーさんと一緒にやる収録が多いからな。1人で司会となると緊張するのかもしれない。
「まぁ……オレにとっては贅沢な悩みだと思うよ。ほらオレは逆に1人じゃないとダメだからな」
「あ。そうかもしれませんね……」
「確かに少し不安かもしれないけど、高坂さんはしっかりしてるから大丈夫だよ。オレが認めてるから自信持ってよ」
「……ありがとうございます。頑張りますね!」
もう高坂さんも立派なVtuberだ。1人でも何とかできるだろう。それだけの能力は持っているしな。
「あっそうだ。1つ忘れてました」
「なに?」
「あの、この前話していた神崎先輩の企画なんですけど、事務所としては『姫宮ましろ』の好感度が下がる可能性があるし、アンチが増えてしまうかもしれない、それでも神崎先輩がやりたいのならフォローはするという回答です。どうしますか?」
「もちろんやるよ。賛否両論はあると思うけど、これはV業界を盛り上げるためでもあるからな」
この企画が通ったのが正直嬉しい。それに……この企画はうまくいけば色んなVtuberに火がつきそうな予感もする。
しかし、それと同時にオレの……『姫宮ましろ』の立場を考えればもちろんファンの中には反対する者も多いかもしれない。でもそれを気にしてたら前に進めないこともあるからな。
「えっと内容を確認しますね?企画内容は『第1回V業界を盛り上げたい!【姫の招待状】スナイプから始まるましろプロデュース大作戦!』で、神崎先輩が個人勢で気になった3名の配信にスナイプして挨拶、更にDMで週末の配信にお呼びして雑談する……でしたよね?」
「そうだな。出来れば『歌枠』『イラスト』『雑談』の3ジャンルの配信で良さそうな人を選びたいかな。チャンネル登録者は少なければ少ないほうがいいと思ってる。その方が『姫宮ましろ』とコラボをした効果が出ると思うし、今から少しずつ個人勢の配信を観ていくつもり、配信は早ければ今年中かな」
「分かりました。くれぐれも『姫宮ましろ』の立場もありますから、アンチコメントとかは気を付けてくださいね?これはだいぶ攻めたデリケートな企画ですから」
「うん。分かっているよ」
と、高坂さんは心配してくれる。まぁ……確かにそれは気を付けないといけないな。コメントが荒れたり炎上したら問題だからな。それに、相手側のVtuberさんにも配慮が必要だ。売名行為なんて言われたら可哀想だしな。
でも……この企画は色々な垣根を越えたV業界の改革でもあり、新しい可能性が生まれるチャンスだ。それに……個人勢にだって面白い人は絶対いるはずだからな。それを発掘してみたい気持ちもある。さて……久しぶりに楽しくなってきたな。