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628. 後輩ちゃんは『一歩』踏み出したいらしいです

628. 後輩ちゃんは『一歩』踏み出したいらしいです





 今日は12月24日。世間はクリスマス一色となっている。カップルや家族、友人同士など大切な人と過ごすこの日は、誰もが楽しく過ごす日だ。


 しかし、オレたちVtuberなどの配信者は違う。視聴数が増えるこの時期は、登録者を増やそうとそれぞれのチャンネルで配信を頑張っている。


 つい先日、年末の『すたライ』の収録も無事に終わったしな。あとは年末年始に向けて頑張らないと……いやその前に明日のクリスマス企画がある。


 今日は明日に控えた公式企画配信の前夜祭として、18時から公式で配信があるので、作業はしつつも2人だけのクリスマスパーティーをしながら彩芽ちゃんと共に視聴することにしている。


「彩芽ちゃん。チキン食べる?」


「はい」


「じゃあ、これ」


「ありがとうございます……美味しいです」


 彩芽ちゃんは受け取ったチキンを食べている。その可愛らしい姿に自然と笑みがこぼれてしまう。


「颯太さん。せっかくなので……ワイン飲みますか?」


「ワイン?」


「はい。私……一緒に飲みたくて……買ってきたので」


「そうなの?ありがとう。でも彩芽ちゃん大丈夫?」


「少しなら……」


 グラスにワインを注ぎ、彩芽ちゃんに渡した。オレもワインを飲むことにしよう。彩芽ちゃんが持ってきた白ワインを飲みながらチキンやポテト、ピザなどのクリスマスの定番料理を食べたり飲んだりしてゆっくりと過ごす。こうやって2人でゆっくりするのも久しぶりだよな。


「前夜祭……何するんですかね?」


「どうなんだろう?この前高坂さんから聞いたチームメンバーの発表とかじゃない?今回は運営と2期生が色々企画考えてるからさ?」


「すごいですよね……色々企画考えて大型企画をやるのって」


「そうだね。でも彩芽ちゃんも色々考えてみたら?もう3年目だしさ」


「え……」


「いや1人じゃなくて、3期生みんなで。ほら来年は4期生と5期生は公式バラエティー枠を担当するだろ?3期生も何かやれたらいいんじゃないかな。玲奈ちゃんの時間の余裕も出来たし」


 双葉かのんのチャンネル登録者は現在36万人。この1年を振り返ると、彩芽ちゃんは本当に頑張ったと思う。昨年の『ましのん』の勢いこそなくなってきているけど、色々自分なりに行動して、応援してくれるファンもたくさん増えてきたしな。


 このままいけば、来年にはチャンネル登録者数40万人は間違いなく超えると思うし。もしかしたら50万人も夢じゃない。


 だからこそ3期生で何か出来たらなと思う。もう今では立派なVtuber『双葉かのん』である彩芽ちゃん。だからこそ、同期のみんなと一緒に活動出来たらいいんだけどな。そんなことを考えていると彩芽ちゃんから思いがけないことを言われる。


「来年は……3期生と……色々コラボしたいです」


「え?」


「複数人の企画はありますけど、2人や3人のコラボは……あまりやってないです。私も……颯太さんと同じです。同期のみんなを待たせてしまっている……3期生の強みの『箱』の良さを最大限に活かせてない……って。それに今の颯太さんは……楽しそうです」


「彩芽ちゃん……」


「だから……来年は、3期生で何か出来たらな……って。他のライバーさんともコラボしたいです……もちろん『ましのん』も」


「そうだね。すごくいいと思うよ」


 彩芽ちゃんはきちんと考えているんだな。昨年までのオレもそうだった。ずっとリスナーは待っていてくれていた。だからこそ、歩みを止めなければ、その分だけ同期のみんなやリスナーに恩返しが出来るんじゃないかと思いながら今年は色々頑張ってきた。


 そんなオレの様子を見て、彩芽ちゃんも。きっと彩芽ちゃんも3期生のみんなと何かをしたいと思っていたんだろう。でも、その一歩を踏み出すには勇気が必要だったんだろうな。


 その一歩をオレが押してあげれたのなら、本当に嬉しい限りだ。彩芽ちゃんは、同期のみんなやリスナーに恩返しをしたいと思っているんだろうな。その気持ちはすごく分かるし、オレも同じ気持ちだ。


 だからこそ、その一歩を彩芽ちゃんが踏み出したいと言うのであれば、オレは応援したい。それに……きっと3期生も喜んでくれると思うしな。


 そんな彩芽ちゃんこと『双葉かのん』を先輩『姫宮ましろ』として、マネージャーとして、彼氏として改めて応援したいと思ったのだった。

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