「ハイパァアアアオーラ斬りぃいいい!!」
「!?!?!?」
爆発する
足元に落ちるアイテム。
『ドロップ:青龍の証』
当然だろう。このアイテムは然るべきアイテム。
今手元にあるドロップしたアイテムは以下の通りだ。
『玄武の証』
『白虎の証』
『青龍の証』
簡単に説明すると、玄武の武王仙はハイパーオーラ斬り、白虎の虎王仙もハイパーオーラ斬り、そして青龍の龍王仙もハイパーオーラ斬りで倒した。
とどのつまりハイパーオーラ斬り強しと言うわけだ。攻撃が効かないなら更にオーラを上げて斬る。脳筋最高。オーラ剣最高。ハイパーオーラ斬り最高。
四神のうち三神を倒した。順当に行けば次は朱雀だろう。
門を通って橋を渡る。視界の端には雲海と犬の鳴き声の金魚がいる。
「……」
俺は納得がいかない。やはり納得がいかない。
この仙山は、フィクション所の仙人御用達な場所のはずだ。俺のイメージだが、仙人って顎髭から頭髪に至るまで真っ白で、雲にでも乗ってなんかしてる感じ。まぁ山のてっぺんで修行してんだろうけど。
だが、相手した玄武、白虎、青龍は、いづれもフルメタルで明らかに異質。この世界観にマッチしていない。
そこで明確なヒントがある。それはこのダンジョン名、『機仙の仙山』だ。普通の仙人が居る山ではなく、機仙という事。そしてダンジョンの説明文にあった長文。そこにもヒントがあるのだろう。
「次は朱雀……か」
長い橋を渡りきり、重圧な門の前まで辿り着いた。看板には、「朱雀天翔」と書かれている。
ちなみに戦った白虎と青龍の看板は、「白虎連弾」、「青龍法撃」と書いてあった。方や腕増やしてオラオラしてくるは、方や炎水雷諸々の遠距離攻撃だわでしんどかった。
先ほど撃破した青龍だが、瀬那に似た法術を使っていたので、いづれは瀬那もバカスカとやるのだろうか。
「よし」
一歩前へ進むと、門が独りでに開き、例の如くこちらを招いている。門をくぐると、後方で門が閉まり、後戻りできなくなってしまう。
俺の目に映るのは赤い何か。近づくと、赤いと言うより、紅いだろうか。
丸みを帯びている何かが駆動する。それは紅の翼だった。翼の先端から徐々に駆動していき、丸かった印象が広げた翼により払拭される。
翼の後ろに隠れていた本体が膝を付いていた。そしてゆっくりと、この時を待っていたかのように直立した。
「ふーん」
武王仙、虎王仙、龍王仙と、順当に戦っていったかが、順当なのはもう一つあった。それは機仙のブラッシュアップだ。
より攻撃的に腕を、より俊敏に脚を、より精密的にボディを、段階的に強靭になってきている。
そして目の前のこいつは、もはや角ばった部分は少ない。細くてマッシブなボディだが、人の筋肉繊維をフルメタルで表現している。より人型に曲線を、より人型に凹凸を、そしてより人型に、蠱惑的に。
「■■■■!!」
悲鳴のような声が、響き渡った。
『
女性型のボディ。顔まで女性的だ。広げた翼が威嚇するように俺に向けられる。
太もも両側面が部分的に開放。小さく発射された棒状の物を各手で掴み取ると、棒から刃が音を立てて展開された。
「!!」
ふくらはぎ、臀部、背中、そして翼から、轟々と噴射され、少し宙に浮く。
俺はオーラ剣をもう一つ生成し、オーラを纏って雀王仙と同じく二刀流で構えた。
「……」
にらみ合う。無機質でメタリックな視線が俺を射る。
数秒間、お互い動かず、噴射される音がこの場を支配していた。
「……」
きっかけは何でもよかった。戦闘の開始は何でも。それは雀王仙も同じ何のかもしれない。どんどんブラッシュアップしていったボディに思考回路。それが複雑化し、単調な行動を阻害しているのかもしれない。
そう思っていると、ふと、どこからか木の葉が舞って来た。風にたゆたう様に落ちてくる。ゆらゆらと、ゆっくりと。
そして木の葉は俺の視界から、そして雀王仙の視界から互いを隠した。
「――!!」
爆発したように噴射する雀王仙。一直線にその無慈悲な凶刃を持って――
「オーラ斬りだああああ!!」
「!?!?!?」
俺の後方で爆発四散した雀王仙。爆破の煙が晴れていくが機械のスパークが辺りに残っている。
「……ふぅ」
まさに一刀両断。二本のオーラ剣を合わせ、更に出力を大いに上げて斬った次第だ。
俺の思いを文字通りぶつけた。
「……」
しゃーないやんだって! どんどん強くなっていくんだろ四神! ブラッシュアップに次ぐブラッシュアップ! 青龍の龍王仙なんてぜんっぜん降りてこないモンハンのリオレウスみたいでイライラした! それで今度は明確に飛びますよって分かる朱雀だったし!
「お、あったあった」
『ドロップ:朱雀の証』
別に効率厨じゃないけど、効率を考えると一撃目で仕留める気勢が必要だった。木の葉を利用した奇襲は双方同じだったが、軍配が上がったのは俺の方だった。一撃で仕留めなければ、非常に面倒だったに違いない。
これで四神をすべて倒した。ドロップした証も四つ。しかし、このダンジョンは四神を倒しただけではクリア扱いじゃないのか……。
そう思いながら開いた門の先を見て、改めた。
「だよなぁ」
この岩山から繋いでいる橋。その向こうには、ひときは大きな縄を絞めた山があった。俺はそこが怪しいとずっと睨んでいた。まぁ誰だってそう思うだろう。
橋の板を踏みしめる度に軋む。この橋は異様に長く、山に近づくにつれ縄の大きさに圧倒した。
そして門の前へと辿り着くと、俺の中に違和感を感じた。
「ん?」
その正体は次元ポケットに閉まってあった四神の証。ポケットから取り出すと、メダル状の証が発光していた。
なぜ。その疑問を口にする前に、四つの証が宙に浮き、門の窪みへとはまった。
ガチャリと大きな音を出した。
そして開いたのは大きな門ではなく、門の端にある人一人が通れそうな程の小さな扉だった。
お前が開くんかーい、と内心ツッコみながら入った。
中は真っ暗だった。これまでは青空が広がっていたのに対して、ここは暗い。それどころか、扉から射す光で埃が舞うのを確認できる。
「……!?」
構えていると、突然上から光が俺を射した。眩しさで一瞬のまばたき。息を飲んでから意識を目に集中すると、これまでの光景からは逸脱した空間が広がっていた。
「なんだよ……ここ……」
目の前には大きなディスプレイ。その下には制御盤が広く設置されていて、横を見ると何かの機械がぎっしりと列を成していた。
俺の視界に収まらない程の空間が広がっている。と、照明が付いている天井を見れば容易に分かった。
普通じゃない。普通じゃないが、納得のいく展開だ。仙山にミスマッチな
だが、なぜ機械なのか。なぜ機仙なのか。仙人が機仙を創ったのか。それとも説明にあった外の悪意によるものなのか……。
その謎は――
《お、映った。やぁお客人。歓迎するよ、私の工房へようこそ》
突然ディスプレイに現れた若い男がカギを握っている。
《茶も出せないし座敷もないし床硬いけど、許してね☆》
「……」
たぶん。
たぶん握ってる。うん、握ってるなたぶん。