「チーム戦通過に! カンパーイ!!」
――カンパーイ!!
ジュースが入ったグラスで乾杯し、喉に通す。
時間は午後の17時頃。
チーム戦を勝ち抜いたのは俺らB-5だけで、ホームルームは意気消沈な空気の中で反省会。明らかに作戦負けを否めないけどよくやったと阿久津先生が気を利かせてくれたが、モブ男くんたちは悔しさでいっぱいだっただろう。
カラ元気だと分かるけど、大吾率いる応援団に負けた全員が加わる事になったのは、勝ち抜いた俺たちに託したんだと俺は思う。
俺たちの友情に阿久津先生が涙を流したけど、直前に目薬点眼してたからアレは嘘だった。ぜったいウソ泣きだ。だって目が赤くなってなかったから。
しかもホームルーム終わりの帰宅すれ違いざまに、
「わかってるな?」
と
泣き落としからのコレ。もはやヤクザである。桐生ちゃんもお手上げだ。
ボス戦を戦い抜きなんとか勝ち抜いた俺たちは、別で反省会。もとい祝勝会をするためにこうして集合した。俺ん家に。
メンバーは家主の俺に瀬那、月野に応援団団長の大吾。そしてリャンリャンだ。
「――空気を読まないとはあの事です! 誰も動けない中、萌だけは堂々と攻撃して、しまいにはぶっこ抜きでボス倒したんですよ! ゲームのプレデターか劇場版のハカイダーかと思いましたよマジで!」
「それで別クラスのみんなが怖がって悲鳴上げながら逃げていったの」
「ボス攻略後の別クラス相手はしんどそうだったんですけど、結果的には萌のおかげで危機を乗り越えたんんです」
「アイヤー。なんとか勝てたけど大哥の印象は最悪だネ☆」
「別にいいだろー勝てたんだからぁー」
大量のお菓子にリャンリャンが作った甘未が机に並べられている。もちろんジュースもある。各々好きな物を飲み食いしてる感じだ。
「マジでドン引きだからな萌ちゃん! 一部の女子が吐いたって噂もあるぞサイコ野郎!」
「確かにアレはね……サイコ萌」
「少なくとも俺はああやって死にたくないな、サイコパス」
「お前ら少しは俺を労わってくれよ!?」
確かに、確かに思いつきとは言え脊髄ぶっこ抜きはやりすぎた。第二形態とかめんどくさいの確定だし、もう手っ取り早く確実に倒す選択肢しか俺には無かった。
でもサイコパスは言い過ぎだと思う。え? 実行したから説得力無い? そうだけども!?
「まぁでもみんなおめでとウ☆ これで明後日のバトルロワイアルに進出だネ☆」
「そうだぞ三人ともー。明後日はクラス総出で応援するからな! 勝たないと人権ないから!」
リャンリャンと大吾の言う通り、次はバトルロワイアルだ。
チーム戦は一人が脱落してもチームが勝てば一緒に進出できるシステムだったが、バトルロワイアルはチーム戦とはいえ自分が退場すればそこで終わりの個人戦。ガチで生き残らねばならない。
チーム戦は森だったけど、次はどんなステージになることやら。
「ハイハイ。ボチボチやるから」
「でもさ、個人戦とは言え進出したチーム全員がまた狙ってくるんでしょ? それってマズくない?」
「付け焼き刃かもだが、俺たちも作戦でもたてるか……」
笑ったりふざけたりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
冷蔵庫からスプライト。もといOCG第11期を暴れ回ったカテゴリーを手に取り、たまたま六時を指す時計を見た時だった。
ピンポーン♪
鳴り響くインターホン。不意の来客。
リャンリャンが立ち上がろうとしたが、俺が出ると目で合図しそのままインターホンの画面を見た。
「スゥー―――」
ついにこの時が来たかと思わず天を仰いだ。
受話器ボタンを押さずオートロックをそのまま解錠。
誰が来たんだと全員が俺を見るが、大きく溜息をついてからリビングを後に。
そのまま玄関で呼び鈴の音を待ちながら一分弱。
「……はぁー」
ため息をつきながらドアを開けた。
「ハジメーー元気にしてたかこのバカ息子ぉ!!」
開けるや否や玄関先で屈強な腕に抱かれ――
「また大きくなって立派になっちゃって! ママ嬉しい!!」
頭を執拗に撫でられる。
「あのさ、予定より早いとか急にだとかいろいろ聞きたいけど――」
「SURPRISE!! ッハッハー!!」
「OH YES!!」
「近所迷惑になるからとりあえず入ってよ……」
日本訛の英語を話すうるさいのが来てしまった。しかも祝勝会をあげてるこのタイミングで……。ハッハーとかヤメテクレ。オウイエスもヤメテクレ。
「あれ? 靴が多いな」
「お友達が来てるの? タイミング悪かったかしら」
「何言ってるんだママ! 友達がいる今こそSURPRISEじゃないか!」
「そうねパパ! ALL RIGHT!」
「……」
ヤメテクレ。その海外で毒された感の言葉をクソデカ声で言うのヤメテクレ。
今めちゃくちゃ足取りが重い。リビングのドアを開けたくない衝動に駆られてる。
でも開けるしかない。
「段差あるから気を付けてね」
そう言ってリビングのドアを開けた。
俺の目に映るのは立ち上がった瀬那と大吾、月野にリャンリャン――
――父さんに退かされてそのまま入ってしまう。
「ハジメのパパでええええす!!」
「ハジメのママでええええす!!」
「……頭が痛い」
海外を飛び回って仕事してるのはありがたくたいへんご苦労様ですだが、海外コメディドラマ張りのフリで登場するのはいささか……。しかも年々酷くなってる。
「お久しぶりです!」
「大吾くんも大きくなったね!」
「当然よ、男の子だもん!」
大吾は俺の両親とは面識がある。まぁ中学からの親友だしな。慣れてる感ある。うん。
「初めまして、萌くんの友達の月野です」
「おお! ハジメの新しい友達か!」
「息子に仲良くしてくれてありがとうねぇ!」
綺麗なお辞儀をした月野。俺にまた一人友達ができて嬉しそうだ。
「你好! リャンリャンですお父様、お母様☆」
「話には聞いてる。その中華服ですぐに分かったよ!」
「息子がお世話になっております……」
中華服と言われてドキリと体が反応してしまう。当然の様に着こなしてる服だけどあれクソ高いからな。電話越しだったけど父さんにお叱りを受けたのはいい思い出だ。
イケメンがお辞儀するなんて様になってるじゃないかリャンリャン。正直イラっとした。俺は根に持つタイプだからな。
で、だ。
「あの、
瀬那が緊張した面持ちでうちの両親とエンカウント。
「萌くんの彼女の、恋人の朝比奈 瀬那です! よろしくお願いします!」
勢いよく元気にお辞儀。日本はお辞儀に始まり、お辞儀に終わる。
「「ガールフレンド!?」」
「!?」
両親が俺を見て驚愕した顔をしている。そして俺も何だと体をビクつかせた。
「こんな可愛い子が……!? 息子がお世話になってますぅ朝比奈ちゃん、いや、瀬那ちゃん! こんなどこにでも居るような子だけどお付き合いしてくれてありがとうねぇ」
「あーアハハー……こちらこそぉ」
「こらハジメ! ガールフレンドがいるって何でパパたちに言わなかったんだ! 知ってたら色々準備してたのにぃ!!」
「その準備が嫌な予感するから言わなかったんだよ!!」
ヤバい。マジで収集つかなくなりそうだ。