「ただいまー」
午後19時。
帰宅。
トーナメントのBブロック1試合目を無事に通過した。
相手は先輩の上賀澄 明弘さん。またの名を学園が誇る☆NI☆N☆JA☆だ。
まきびしや小太刀。迷いのない体術に多彩な忍法で俺を翻弄した。結果は前述のとおり俺がなんとか勝ったわけだが……。
まぁうん。手強かった。遠距離攻撃はもちろん、俺の得意分野の接近戦は身分身に任せて本体は溜めのある攻撃で俺を仕留めてきた。
そして先輩の決め技であろう紫電掌、まぁサスケェ!! な忍法で突っ込んできた。
所直まともに受ければバリアはもたなかっただろう。正直、リャンリャンもとい黄龍仙との激しい
小股ツルツル仙人のおかげで動体視力が上がるのなんの。
サスケェ!! を寸でで避け掴みに移行。下投げからの空Nコンボにスマッシュのドリャー。見慣れ過ぎた&こすり過ぎたスマ○ラの魔王ことガノンの技が炸裂だ。
まさかゲームやアニメの人間離れした動きができるなんて、俺人間辞めてるわ。
高身長に加え重い身体、圧倒的な攻撃力。俺とガノンって共通点多すぎィ!! って言うか俺ってもうガノンじゃね? 実質ガノンじゃね? 実際にSNSでトレンドガノン○ロフと空Nが載ってるし。
「ふーん♪」
ガノンの話はさて置いて、帰宅後の手洗いをしながら今日の出来事を整理しよう。
今日の勝者は太眉でお馴染みの二年月野。キリッとしたお姉様だけどア○ルが弱そうな三年朝田センパイ。ガノン○ロォフ!(スマ○ラ風)の俺。そして一年の
中肉中背の佐藤くんは槍を主体にしたオーソドックスな戦闘スタイル。
気弱そうで眼鏡っこ。いかにも地味子といった印象の東ちゃんは魔術が記された本を片手に戦いに挑んだ。
本日最後の試合である東 美玖と 佐藤 太郎のバトル。Aブロック第一試合と同じ同学年による熱い試合を見れると奮起していたテレビの前のちびっこと大人。
だがいざバトルが始まれば激戦を繰り広げた……訳でもなく。
「ひ、光よ敵を拘束しろ! ライト・バインド!!」
「おわぁ!?」
「ひ、光よ! 聖なる裁きを敵に下せ! ホーリー・ジャッジメント!!」
ドゥゥウビュオオオオ !!!!
「――――」
思春期を殺した少年の翼という名BGMが脳内再生余裕な効果音がする特大ビームが上空から放たれた。
かくして、佐藤少年は思春期に殺されたばかりか、バリア諸共蒸発した。
と言うのは嘘だけど、一分もしないうちに決着が付いた。
「ちゃんと指の間も拭いてっと」
二回戦から参戦するシード組みと対戦。明日も四試合と大忙しだ。
寝る前に明日のバトル相手である津田センパイの事を調べようと思う。些細な情報が勝利のカギを握るからな。
とそんな事を思っていたけど。
「……」
リビングへ繋がる扉の向こうから気配が二つ。
間違いなく奴がいる。遊びに来ている。性懲りも無く。
ドアのノブを捻って開けた。
「「二回戦進出! おめでとう!!」」
パンッパパンッ!
「……ありがとさん」
クラッカーから出てきたヒラヒラと紙ふぶきが俺の頭に着弾する。
祝われるのは普通に嬉しいし、二人の笑顔から真心で祝ってくれてるのも分かる。
ただ一つ。
「アイヤー! パンッて、パンだってアッアッアッアッ――」
「これ見ろよコレ! とんだアホ面だぞ! ギャッハッハッハ――」
「お前らめちゃくちゃ酔ってんじゃねーか!?」
エルドラドがリャンリャンのスマホで撮った俺の画像を見せてくる。それに気を取られがちだけど、視界の端にはエルドラド御用達の黄金色の酒瓶。二人が飲んでいるであろう黄金のグラスも二人分あり、肴もテーブルに置いてあった。
リャンリャンが言ってたけどエルドラドの酒は特殊で酔いたいと思えばどんな存在でも酔えるらしい。それが例え、機械生命体でもだ。
「あ! カラオケしよう!」
「いいねーナイスアイデアだ! 俺のダンディーな美声がマンションじゅうを駆け回るぜ!!」
「バカやめろ!! 近所迷惑だろうが!?」
とりあえず一回祝っとけばええやろ精神なのか、俺を称える事を即座に止め、自分たちやりたい事をやろうとしている。
「そうだ!! 今度ホワイト・ディビジョンでカラオケ大会しようぜー!! あいつらこっちの世界の娯楽に興味深々だからよ!」
「
「あーもう! 俺は気疲れしたから風呂入ってクソして寝る! ちゃんと遮音するんだぞ!」
勝者インタビューとかクラスのみんなに祝福されたりと、終わってからもかなり忙しなかった。スマホに親とか優星さんとか繋がりある人のメッセージ溜まってるし、酔っ払い達に付き合ってる程俺は暇じゃない。
「よーし俺の十八番! 長崎は今日も雨だった。歌いまーす!」
ディープな音がテレビから流れる。
「――冷たい雨に肩濡らし、貴女求めて歩く街。思い出ばかりが甦る、涙が雨に消されても。消すに消さない未練の所以……。名曲――」
「――あなたひとりに~」
なんかリャンリャンが演歌特有の前口上言ってるけど、それを無視してとりあえず風呂。
『チュートリアル:歯磨きシャカシャカ』
「……」シャカシャカ
『チュートリアルクリア』
『クリア報酬:体力+』
日常と化したチュートリアルをクリアしつつ寝室へ。
「よっと」
午後21時頃。
日課の暖色の電球色を付けてベッドへダイブ。
寝る前に見ると良くないと噂のスマホをいじる。もちろん色んな人からの返事をするからだ。
まずは一組目。
両親。
≫第一試合勝利おめでとう! パパとママもテレビの前で大興奮だったよ! すまないな、直接応援に行けなくて。でも精一杯応援したからな!
うちの両親、海外生活長くて朝から酒飲む習慣があるから心配してたけど、どうやら抑えてたっぽい。
≪ありがとう父さん母さん。バッチリ応援届いたよ。
とりあえずそれっぽい事書いといたらええやろ。
≫月野くんの勝利と萌の奮闘で酒美が味いのなんの! 明日の二回戦もパパとママ、応援してるからな!
いや飲んでたんかい。
≪よろしくー。
会場に限らずテレビ越しで両親が応援してくれるのはやっぱり子供として嬉しいものだと感じる。小学生の頃、授業参観とかも来れない時期が多かったし、それの埋め合せと言えば聞こえが良いのか悪いのか……。
とにかく、純粋に嬉しい。
≫――萌。
ん?
≫弟か妹。欲しくないか。
≪今でも幸せなんで大丈夫ですおやすみなさい。
条件反射で送ってしまった。
「盛り過ぎだろあの夫婦!? いちいち聞いてくんな!!」
夫婦仲が良いのも困りものだ。俺の持論だが、子供は授かりものだと思ってる。現に今までずっこんばっこんしても俺以外生まれてないし……。
「……二人とも同い年で今年三十八歳。高齢出産もいいところだ」
高齢出産は母子ともにいろいろとリスクが上がるのは現実的な問題だ。一応その旨をメッセージで送っておこう。
「ふぅ。次はっと」
スマホを操作してトーク画面に入る。
≫第一試合の勝利おめでとう。俺はキミが勝つと信じていた。絆の力がそう思わせたんだ。
≪ありがとうございます優星さん!
某デュエルで拘束しなければ逮捕できない世界の主人公に激似の蟹こと不動 優星さんからも応援のメッセージが来ている。
これも定期文で返答。
返事は直ぐ来た。
≫やっぱり萌くんの人気はうなぎ登りだな。キミが登場した時は会場が湧いたよ。
≪そうだったんですね! 緊張していて気が回りませんでした!
≫心身共に強い萌くんでも緊張するのか(笑) 次の相手の津田くんも三年だけど、相当デキるらしいから油断せずに行こう。
≪アドバイスありがとうございます! すみませんけど、疲れたんで寝ますね!
≫ああ、しっかり休んでくれ。俺が君に感じる絆があるかぎり、勝てると信じてるよ。いい夢を。
寝転がる体制変える。
「応援ありがないなぁ」
宮下雄也ボイスにも激似だから脳内再生余裕だ。
「……ん?」
お疲れッ☆ と大吾からもメッセージが来てる。
「とりあえず後回しだな」
そのままスルーして大好きな彼女が優先だ。
≫モエおめでとう!!!! メッチャカッコよかったよ!!
「ッハハ、解散際にも同じ事言ってたのに」
帰宅する別れ際に抱き着かれて言われた言葉。何回言われても嬉しいし俺ってば完璧にリア充である。
返信しよう。
≪瀬那の応援のおかげで勝てた! しっかり魂に届いた!!
すぐに返事が返ってくる。
≫やったー! たくさん応援したかいがありました! 明日も彼氏が頑張れるように応援します!!
≪あざーーーーーーーーーーーーーーー
「デュフ……!」
彼女とのやりとりが続いていき。
≫好き好き大好き!!
≪俺も好き好き大好き!!
「デュフフフフ……!!」
楽しいンゴねぇ……! おいらぁ、彼女とのメッセージが楽しいンゴぉ!!
と、日本ギャグマンガであまりにも有名な漫画家、漫☆画太郎が書くガチキモ作画になった俺だったが、ここで我に戻るメッセージを受ける。
≫ご褒美欲しい?
≪うん(即答)
俺のメッセージから間が開いた。
「……なんだ?」
長文でも書いてんのか。
そう思っていたけど、返事が来た。
≫萌のために勇気出して撮りました! 明日もがんばってね♡
ポウン♪
と画像が送られてきた。
「!?!?!?!?!?!?」
顔を赤らめて恥ずかしそうに小さく舌を出した笑顔。
左手で寝巻を捲り、生まれたままの姿の豊かな胸が露わになっていた。
色素の薄い大きめな輪に、ツンとした上向きに加え柔らかくもありハリもありそうな……。
何が言いたいかとか言うと。
「おちん○んが爆発するうううううううううううううう!!!!!!!」
俺のきんのたまが悲鳴をあげるたのは別の話。