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第2章 第2話 イカ焼きシスターズ④

 たくさんあった飲むヨーグルトの段ボール箱は、冷蔵庫に入りきらない分は(というかほとんどが入りきらないのだが)給湯室に隣接する倉庫にそのまましまわれた。


 ちなみに、はじめて社内の冷蔵庫を開けたのだが結構カオスだった。まず、扉に『一人一日ノルマ三本』と書かれており、かなり恐怖を感じた。いや、その飲むヨーグルトのパッケージでかでかと『一日分の鉄分』って書かれてあるんですけど!


 それから、中身を空けるとドアポケットに大量の飲むヨーグルト。もちろん中にもぎちぎち。それに、絹豆腐が一丁にストゼロが数本と安めのトリュフチョコ(アイリと名前が書いてある)。あとなぜか食べかけの納豆が割り箸ごと入れられていた。きったな!


 冷蔵庫は共用で、名前の書いていないものは自由に食べていいのだとアイリさんが教えてくれた。






「みっちゃん、ありがとね~」

 アイリさん(美人)のさわやかスマイルで感謝されて、いいことしたなぁと少し心が温かくなった。


 汗が額を流れて、服の袖で拭った。


「あっ!」

 アイリさんが驚いて声を上げる。その視線が、私の腕に注がれていると気づいたとき、青ざめた。


 左腕のリストカット跡。



「あ、あはははは!」

 笑ってごまかしながら(ごまかせていない)、急いで服の袖で隠す。もう、彼女の目を見るのが怖い。

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