事務所に行くと、ドアを開ける前から数人の話し声がした。なので、ドアを開けてすぐ
「おはようございまーす」
とあいさつをしたが、その声は怒号にかき消された。
「だからさぁ! 奢ってもらって当たり前って感覚が乞食なんだよ!」
「はぁ!? こっちは服とか、化粧とか靴とかバッグとかさぁ! 金かかってるんだけどぉ~! 男はすっぴんで安い服着てるじゃん! じゃあ割り勘だったらお前は何出すんだよ!?」
「ばっかじゃねーの!? 頼んでもないのに勝手に着飾ってきて奢れとか押し売りかよ。サイボーグブスのくせに、これだからまんさんは」
目の前では、男と女の醜い争いが繰り広げられていた。アキバにいそうな低身長小太り眼鏡の中年男性と、港区にいそうな整形美女が、唾を飛ばしながらお互いを罵りあっている。
おーこわ。ていうかキモ。こっちに飛び火しないようにしないと。
そろ~り、そろ~りと歩いて、
言い争っていた男女2人が、般若の形相でこちらに振り向いた。冷や汗が滝のように流れる。あばばばば。