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第2章 第5話 狂気なる平穏③

 事務所に行くと、ドアを開ける前から数人の話し声がした。なので、ドアを開けてすぐ


「おはようございまーす」

 とあいさつをしたが、その声は怒号にかき消された。




「だからさぁ! 奢ってもらって当たり前って感覚が乞食なんだよ!」


「はぁ!? こっちは服とか、化粧とか靴とかバッグとかさぁ! 金かかってるんだけどぉ~! 男はすっぴんで安い服着てるじゃん! じゃあ割り勘だったらお前は何出すんだよ!?」


「ばっかじゃねーの!? 頼んでもないのに勝手に着飾ってきて奢れとか押し売りかよ。サイボーグブスのくせに、これだからまんさんは」




 目の前では、男と女の醜い争いが繰り広げられていた。アキバにいそうな低身長小太り眼鏡の中年男性と、港区にいそうな整形美女が、唾を飛ばしながらお互いを罵りあっている。


 おーこわ。ていうかキモ。こっちに飛び火しないようにしないと。


 そろ~り、そろ~りと歩いて、




 言い争っていた男女2人が、般若の形相でこちらに振り向いた。冷や汗が滝のように流れる。あばばばば。

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