「銀の髪を持ち金色の瞳を成す赤子ならば災いとなる……と歴史書にあります。この子は史実どおりならば王国を滅ぼす悪となります。この王子は呪われし忌み子でございます」
名前も知らない老婆の声が聞こえた。
その近くですすり泣くような女の声が聞こえた。
なぜ赤子のオレの記憶がいまもあるのかはわからない。
耳は聞こえていたのかもしれない。手を動かそうとはしなかったが動かすことはできたのかもしれない。
「幸いにも王子は双子でございました。双子を身籠ってらしたことは一部の者しか知りませぬ。忌み子は始末し、お一人のみを正当な王子として育てるのです。それがこの国の繁栄のためです」
双子として生まれた片割れの顔さえもオレは知らない。
それから間もなくして、冷たい冬の夜にオレは捨てられた。
森の中でオレはどれぐらいの時間を過ごしたのかはわからない。凍りつくような寒さの中でも生き残ることができたのは、オレが生まれ持った魔力のせいかもしれない。
その後、オレはある盗賊団に拾われ、生き延びることができた。
こうして名前もわからないあの国の記憶を持ちながら、十七年の時を経てもオレは生きている。