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第61話 これから

 このままスキルだか能力を掛けたまま放置をしていると不味いよな。それにしてもシャルが俺をねぇ……前に言ってた事は本気だったって事か。心に余裕がなくて、冒険者か、恋心かを優先するのか悩んで暴走しちゃったのかな?



「いつものシャルに戻って、話をするか」



 言葉に魔力を込め、シャルに掛けた能力を解除した。



「え? う、うん。分かった……なにを話してたんだっけ?」



 ボーっと焚き火を見つめ、振り返り首を傾げて聞いてきた。パチッ。パチッ!と焚き火が爆ぜ火の粉が夜空に舞い、オレンジ色の焚き火の炎が周りを幻想的に照らし、シャルの横顔を美しく魅力的に見せてくる。


 ん……その表情は、可愛すぎて危険だっての……勘弁してよ。



「あー。ずっと一緒に住むって話だろ?」


「そうだった! ホントに勝手にするからねっ?」


「そうだな……ずっと一緒に住むか……。シャルなら問題ないだろ」


「は? え? い、意味分かってて言ってるの?? そんな返事をしちゃって良いの? わたし勘違いしちゃうよぉ?」



 シャルが驚いた表情をして、隣に座る俺にグイグイと近寄ってきた。



「はぁ。俺も好きだったしなぁ……ずっと一緒に居たいとも思ってたし」


「……ばかぁ。だったら何で離れて行っちゃったのさァ〜ばかっ」


「それは、俺だけが悪いのかよ……放置してたのは、そっちだろ?」


「だからぁ……ううん。ごめんね? 好きな人に、あんな状態を見られちゃったんだよ? 恥ずかしくて会いに行けないでしょ……もおぉ」



 あぁ……うん。あれはエロかったな。


 俺の服の袖を、グイグイと引張り呼ぶので振り返ると、唇に柔らかく温かいものが触れた。



「これで、契約が成立かなっ」



 焚き火のオレンジ色に照らされて頬を赤くさせ、見つめられるとドキッとしてしまう。



「契約って……」


「そお。契約ーだよっ♪ わたしのファーストキスあげちゃったっ♡」


「ファーストキスなのか?」


「うん。当然でしょっ! 変な想像してたでしょ? あの男の子と付き合ってるとか。他の男の子と付き合ってるとか? そんな事しないからっ。ユウくんを想ってたしぃ……」


「そ、そうかぁ……悪い!」


「悪いってぇ……思ってたんだ!? ひどっ!!」



 文句を言いつつも、俺に寄り掛かり甘えてきた。その表情は普段見せる事のない、甘えた表情をしていて可愛く愛おしく感じた。



「シャル……本当に俺と? 契約って……結婚だろ? 俺にはアリアとミーシャとも結婚というか婚約してるんだぞ?」


「うん。知ってる……ばかぁ……」


「良いのか?」


「知ってるって言ってるでしょ。知ってて言ってるんだからぁ……分かるでしょ」



 その後……


 シャルの事はアリア、ミーシャも意外にも受け入れてくれた。だが、戦闘には参加はしないと言う条件付きだった。


 結婚の条件なのか? パーティへの加入の条件じゃないのか……それって。


 それと村への魔物と魔獣の出現率は、かなり下がり平和になり出歩ける程にまでになっていたが、ダンジョン付近は多少多く現れダンジョンも健在でボスも現れる。

 ボスと言っても凶悪ではなく、Aランクの冒険者の居るパーティで対応が可能な程度だ。



「若様! 久しぶりじゃないですか! もっと顔を出してくださいよっ」


「そうですよ。若様、ルークが寂しがっちゃって……ウルサイんで」


「そうよっ。もっと来てくださいよぉ〜寂しいじゃないですかぁ♪」


「うん。うん。来てくれないと……寂しい」


「来てくださいよ……稽古をつけてもらえると嬉しいです!」



 ルークのパーティとは、完全に仲良くなってしまって懐かれて、見つかると囲まれてしまう。


 慕われて悪い気はしないけど……こんなガキに稽古をつけてもらっていて良いのか? 恥ずかしくないのかねぇ?



「稽古は良いんだけど……歳下に教えて貰ったり、稽古って恥ずかしくないの?」


「はい? 逆ですよ、逆! SSランクの方に稽古をつけてもらって羨ましがられていますよ!」


「そうなんだ……まぁ、また時間がある時ね!」


「頼みましたよ! 絶対ですよ。若様!」



 村の人の見る目が変わり、完全に英雄扱いになっていて村を歩けば注目され採れた作物などを渡される。なので、転移で帰宅する。


 獣人の自宅のある村でも英雄扱いで困る。頂ける食材も豪華になっているし……断っても無駄だと判断して有り難く頂いている。


「キャハハ……♪ シャルちゃん鼻にクリーム付いてるぅ〜」


「シャルちゃん! つまみ食いしたでしょ!?」


「だって、美味しそうだったからぁ……」


「シャルちゃんだけズルいぃ。わたしも味見したぁいっ」


「ちょっとだけだよぉ?」



 アリアとミーシャは、シャルの性格が穏やかで素直になった事で3姉妹の様に仲良くしてくれて、ケンカもせず楽しそうに過ごしている。シャルも折れるという事を覚えて仲良くしている。



 シャルはテイマーとしての活動も初めていて、色々な魔獣をテイムして、森で放し飼いにして研究と訓練をしているようだ。ケルの事が気になるようだが、ケルの方がいやがりシャルに近寄らない。


 ケルは番犬として優秀で、魔獣や魔物が周りに一切寄ってこない。この村には不審者はいないが、不用意に近づくと威嚇してくれて助かる。英雄扱いなので、除きに来る者も多く、それを蹴散らしてくれる。


 畑の方も野菜クズを分解をした肥料がちょうど良いのか、元気に美味しく育っている。こんな日々を過ごせるようになるとはな。


 (これでやっと俺の望みであった、のんびりスローライフで過ごせるが出来るな……ちょっと違うけど、俺らしいかな……)



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