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第31話【出発〜また逢う日まで〜】


「よし、お前ら、準備は出来てるか?」

「えぇ」「あぁ」「うん!」

「よし、じゃあ行くとするか」


「中央大陸には強いモンスターや、猛者の方々が沢山いますが、今の皆さんならきっと大丈夫です。頑張って来て下さい。」

「あぁ、頑張ってくるぜ」


 武器やお金などを持ち、ウェーナに挨拶を済ませた俺たちは、まずアンテズ村の馬車が止まっているという、ラペルのもうひとつの出入り口へ向かうことになった。


 ---


 すると、冒険者ギルドの前まで来たところで、顔見知りの3人が立っていた。


「よっ、お前ら」

「おぉ、エスか。どうした?」

「どうしたって――行くんだろ、中央大陸に。」


 なんだ、こいつ知ってたのか。

 俺的にはエスタリたちには内緒のまま中央大陸に行って、帰って来てから「実は行ってたんだぜ」って自慢してやりたかったんだが――ま、いっか。


「なんだ。知ってたのか」


 まるで俺たちを待っていたかの様なエスタリに俺はそう返す。


「あぁ、さっき受け付けのお姉さんから聞いてな」


 エスタリは、いつもの陽気な笑顔を浮かべながらもどこか寂しそうにしていた。


「どうしたんだそんな顔して?」

「いや、お前らに先越されちまったってな。」

「あぁ、そういうこと」


 先を越したなんて俺は微塵も思って無いんだがな。

 今回のはあくまであっちが半ば無理やり俺たちを招待したんだし。


「悪かったな、こんな方法で先越しちまって。」俺はそう言おうとしたが寸前で止めた。

 そんなセリフ、エスタリは望んでいないだろう。

 だから代わりに――


「ふッ、どうだ?俺たちが先を越してやったぜ」


 俺はいつかの「スーパーとうま」のようなドヤ顔で、エスタリを見下す様に発言する。

 ――きっとこっちの方が、俺たちらしいからな。


「お、お前も言うようになったじゃねぇか」

「エスタリ殿、我々も負けていてはいられませんな」

「そうね、エス!私たちも追いつくわよ!」

「当たり前だ!」


 エスタリはオネメルとヒルデベルトを従えているようなポーズを取ると、俺の胸に拳を突き付ける。

 そして――


「とうま、俺たちもすぐに中央大陸に行ってこの世界の英雄になってやる。だからお前――いや、お前らも頑張れよ!」


 いつも通りの笑顔でそう言った。

 その顔には、さっきの様な寂しさなど微塵も感じられない。



 それに対して、俺も同じ様に拳をエスタリの胸に突き付ける。


「当たり前だ!帰ってきたら嫌って程土産話を話してやるよ!」


「あぁ!そりゃ楽しみだ!――――あ、そうだ。ならお前らが帰って来た時、俺からも凄い報告をしてやるから覚悟しとけよ?」

「凄い報告?ま、俺たちの土産話を越えられるとは思わんが頑張れよ?」


 俺とエスタリは互いに拳を相手の胸に押し当てながら言い合いをする。

 しかし、どちらの顔も笑顔だった。


 ---


 こうしてエスタリ一行と別れた俺たちは、予定通りもうひとつの出入り口へと歩いた。


「ふぅ……とうちゃーく!」

「お、もう居るじゃねぇか」

「――あ、皆さん。」

「すまねぇな、ほんとに。」

「いやいや、これは私たちが望んだことですから」


 出入り口に着くと、前と同じ様な感じでアンテズ村の村人が馬車で待機しており、俺たちはそれぞれ感謝を述べると、荷台に乗り込んだ。


「じゃあ、出発しますね」

「おう、頼む」


 俺が村人にそう返すと、すぐに馬車は動き始める。


「ラペルが遠ざかって行くわね」


 みさとは馬車の荷台から外を眺め、そう呟く。


「みさと、お前バカなのか?馬車は動いてるんだからそりゃ離れていくだろうよ」


 そういう事じゃないわよ。そうツッコんでくるみさと。

 じゃあどういう事なんだよ。

 ――まぁでも、今回も無事に帰れたら良いな。


 するとそこで、ふとちなつがこんなことを言い出した。


「なぁそういえば今回私たちが行く「帝都ティルトル」ってどんなところなんだ?」

「そういえばお姉さんからも詳しくは聞いてなかったわね」


 帝都ティルトル、今名前が出てなんの事か分からないだろうから説明すると、そこは俺たちが今回行く中央大陸にあるひとつの国の事だ。


 説明が簡単過ぎるとツッコまれるかも知れないが、実際今みさとが言った様に俺たちはお姉さんからその名前しか聞かされていないのだ。


 (まさかなにか言えない情報が……?)なんて考えもしたが――あのお姉さんに限ってそれは無いだろう。

 あの人案外忘れっぽいとことかあるし、今回もきっと伝え忘れだ。


「まぁだが、帝都って付くくらいだからラペルよりは大きいんだろうな」

「それはそうでしょうね」


 というか、中央大陸にもラペルのような小さい村、町はあるのだろうか?


 すると、突然荷台の前から声がした。


「私が知っている中央大陸の情報でしたらお教えしますがどうしますか?」

「え?知ってるの?」

「はい、一般的な情報なので変に期待はしない方が良いと思いますが」

「いや、今の会話を聞いたら分かると思うが、俺たちは本当に何も知らないんだ。だからとりあえず教えてくれ」


 っていうか、アンテズ村なんて小さな村に住んでる村人がなんで知ってるんだ?――――あ、そういえば村の近くに中央大陸からの船が止まるって言ってたっけ。

 それで知ってるって訳か。


 とにかく、話してもらう事にした。



「――とりあえず、こんな感じですかね」

「なるほど、ありがとな」


 村人が話終わると俺はそう礼を述べる。

 よし、じゃあ俺が今聞いた知識を更に分かりやすくして教えて行くとしよう。


 まず、中央大陸にラペルの様な小さい村、町があるのかどうかなのだが――どうやらあるらしい。――というか、中央大陸にはそういうのが大半で、大きな町などはあまり無いんだと。


 それがまずひとつ目、次は今回行く帝都ティルトルの事についてだ。


「帝都ティルトル」それは先程述べた大半の小さな村、町ではなく、中央大陸の中でも屈指の帝都らしい。


 建物は豪華で、街並みも全然違うんだってよ。

 ま、それはだいたい予想がつくが。


 そして、この帝都にはある特徴がある。

 それは――「中央大陸の中でも冒険者の数が特に多い」という事。


 なんせ数が多過ぎて、冒険者ギルドが街に数ヶ所存在しているらしいからな。


 そして最後に――俺たちを今回中央大陸に呼んだ「狂乱の戦士バーサーカー

 そいつはその帝都ティルトルの中でも最強と謳われているんだとさ。

 ――一体俺たちはどんな化け物に目を付けられたんだよ。


 とまぁ、こんな感じだ。


「なかなか楽には帰れなさそうね」

「だな」


 はぁ……正直なところ楽しみな気持ち半分、帰りたい気持ち半分ってとこだな。

 まぁ、何度も言ってるが――頑張りますかね。



 そこから約1時間経った頃、馬車は目的地に到着した。



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