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第13話だぞ【決意】


「じゃあ、デートの詳細を教えてくれ」


 ひとまず明日、えなとデートする事は決まった訳だが――肝心のデート内容をまだ聞いていない。

 それに、デートの事をちゃんとえなに伝えているのか……?


 今までゆうりは色々な事をしてくれた人間ではあるが、何故か毎回心配になる。

 ――しかし、我がそう思っている事もお見通しな様で、「はぁ」とため息を吐くと、


「アンタね、どうせまた「えなにもちゃんと伝えているのか?」なんて思ってるんでしょ?安心しなさい。3人で喫茶店に行ったあの日の夜にえなにはメッセージで詳細まで全部送っているわ。それでちゃんとOKをもらってるから大丈夫よ。」

「あ、あの日の夜だと……?それなら我にもそのくらい早く教えて欲しかったんだが……って、なんだ?メッセージとは?」


 はぁ……この世界に来てからしばらく経ったが、今でもこうやって知らない単語が出てくるのは厄介だな。


 しかし、対してえなは今説明するのは時間のロスになると考えたのか、「まぁそれは後から話すわ」そう言い、


「じゃあ、デートの内容を教えていくわよ。」


 詳細を話し始めた。


 ♦♦♦♦♦


「まず、場所は遊園地よ。」

「ゆう、えんち?」


 初手に出てきた言葉に、我は戸惑う。

 ま、まさかいきなり知らない単語が出てくるとはな……


「あぁ、そりゃ知らないわよね。遊園地ってのは、ざっくり言えば、公園の遊具が超進化したバージョン。みたいな感じよ。家族連れや――それこそデートをするにももってこいの場所よ。」

「なるほど、とりあえず、遊んだりする場所なのだな。」

「えぇ」


 でもだぞ……?そんな建物近くにあるのだろうか?

 今の話を聞く限り、その遊園地とは最低限公園よりは大きいだろう。でも、そんな建物無かった様な……


「ちなみに、どこにあるんだ?」


 だから、気になった我はゆうりにそう質問する。

 すると、対してゆうりは待ってましたと言わんばかりにドヤ顔になると、ポケットから1枚の紙を取り出し、渡してきた。


「ん?なんだこの紙は――春丘テーマパーク?」


 ゆうりの渡してきた紙の真ん中に、緑と青の文字ででかでかとそう書かれていた。


「えぇ、知らない?最近テレビとかでもやってるでしょ?新しくオープンする遊園地ってのでCMとか。」


 あぁ、そういえば事務所で昼ご飯を食べている時に、悠介さんから教えてもらったテレビで流れていた様な気もする。(それにしてもテレビは本当に便利な物だ。前の世界にもあの様な物は存在しなかった。そしてそれを今や当たり前の様に見ているのだから、我もこの世界に馴染んだんだなとつくづく思うぞ。)


「で、要するに明日我はえなと共にそこへ行くのだな?」

「えぇ、明日の朝7時くらいに兄貴がアンタを迎えに車で来てくれる予定よ。だからアンタはそれまでに風呂や身支度を済ませておきなさい。」

「了解だ。――なら、明日は6時には起きておきたいな。」


 そう、左側の壁にかけられた時計を見ながら呟く我。

 ゆうりにもえなにも言われたが、我は本当に変わったな。


「あ、ちなみにだが、えなはどうやって春丘テーマパークまで行くのだ?それに入場料、というやつも取られるんだろう?」


 この前の休日に悠介さんと2人で行った美術館?に入る時にお金を取られたから、だいたい分かるぞ。(もっとも、美術館の良さは我にはあまり分からなかったが。)


「あぁ、そのことだけど、えなって、実はその春丘テーマパークの近くに住んでいるのよ。だから、明日は歩きで行くって言ってたわ。後、入場料は自分で出しなさいよ?」


「さすがにそこまでは出せないから」念を押すように言ってくるゆうり。あぁ、直感で分かる。相当な値段がするんだな。(美術館でも1000円程取られたのだ、きっともっと高いのだろう。)


 だが、そこは安心するが良い――


「大丈夫だ。ちゃんと我が払う。――今のところ食事や銭湯以外に特に使いたい事が無いんだ。今使わなくていつ使うというのだ……ッ!!」

「あぁ、確かにアンタ全然使ってないわよね。それなら、明日は多めに持って行って何か食べ物でもえなに買ってあげなさい。」

「おぉ、確かにそれはいい提案だな。」


 悠介さんも前に言っていたしな、『ゆうりに物を買ってあげるのは男の使命だ』と。まぁ我はゆうりでは無くえなに買うが。


「――まぁ、後は色々アンタ自身で考えなさい。」

「あぁ、分かった。」


 とにかく、今ゆうりの言った通りだろう。後は我が寝る前に考えておく事にしよう。


 するとそこで――


「あ、後メッセージの事だけど、」

「あぁ、我自身が忘れていたぞ。」

「はい」

「?なんだ?これは?」


 そうしてゆうりはカバンからひとつの長方形の板の様な物を取り出すと、


「はい、これアンタにあげるわ。メッセージはこれで送っていたのよ。」

「こ、これは……!!」


 そこで分かった。今ゆうりが我に渡した物は悠介さんがいつも事務所で使っている「スマホ」という物だと……!!

 こ、これ……!我がずっと欲しいと思っていたやつだ!!


「で、でも良いのか?悠介さんが言っていた『これは色々な事が出来る代わりにすごく値段が高いのだ』と。そんな高価な物をもらって――」

「あぁ、もう!!あたしがあげるって言ってるんだから良いの!――それより、アンタどうせ使い方分からないでしょ?仕方ないからあたしが軽く教えて――」

「あぁ、いつも悠介さんのスマホを触らせてもらってるから大体分かる。あ、でも一応メッセージ機能の事だけ教えてくれ。」

「はいはい、了解よ。」


 その後、数分でメッセージの使い方を我に教えると、ゆうりは「これ以上遅くなるとあたしも仕事に影響が出るから」と、帰って行った。


 ♦♦♦♦♦


 そして、ゆうりが帰ってから1人で行った行きつけの銭湯にて――


「必ず、我は明日のデートを成功させるぞ……ッ!!」


 我は湯船に浸かりながら決意を固めるのだった――――

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