だというのに
そこでガンガン酒は飲むわ、肉は食うわ。
同席してた
司馬昭に言う。
「明公が日々、孝の徳を示して
天下を治めていらっしゃるというのに、
阮籍めは飲み放題の食い放題。
このような振る舞いがあっては、
明公の孝徳すら損なわれ兼ねません。
阮籍めは流罪に処し、
綱紀を正すべきです」
このカタブツが、と内心で思いつつ、
司馬昭が返す。
「あんなやせ衰えた阮籍の様子を見て、
君はかれの悲しみを
分かち合おうとも思えんのか。
喪礼では飲食の禁は三日となっている。
だが、阮籍のあの様子では、
それ以上の日にち、
ろくに食べられておるまい。
元々、喪礼であっても
体調を著しく損ねるようでは
そもそも孝徳を全うができぬ。
故に病の折の飲食は不徳に値せず、
とあるではないか!」
司馬昭さま、ちょう熱弁。
まー阮籍、そんなことどーでもいい、
とばかりに食っては飲みしてましたけど。
阮籍遭母喪、在晉文王坐、進酒肉。司隸何曾亦在坐、曰:「明公方以孝治天下、而阮籍以重喪、顯於公坐、飲酒食肉、宜流之海外、以正風教。」文王曰:「嗣宗毀頓如此、君不能共憂之、何謂?且有疾而飲酒食肉、固喪禮也!」籍飲噉不輟、神色自若。
阮籍は母の喪に遭うに、晉の文王が坐に在りて、酒肉を進む。司隸の何曾も亦た坐に在らば、曰く:「明公の方に孝を以て天下を治めんとせるに、阮籍は喪の重きを以て、公坐に顯れ、酒を飲み肉を食す。宜しく之を海外に流し、以て風教を正すべし」と。文王は曰く:「嗣宗の毀頓せること此くの如し。君は之と共に憂える能わざれば、何をか謂わんや? 且た疾の有れるに飲酒食肉せるは、固より喪禮なり!」と。籍は飲む噉うを輟めず、神色自若たり。
(任誕2)
何曽
阮籍大っ嫌いマン。司馬昭