その乱を引き起こしてしまった責任を取って
その頃のことである。
秋の夜。
風は心地良く、空気は澄み渡っている。
夜気に当てられ、
城の南部にある高台に集まり、
詩を吟じていた。
そこへ、いくつもの靴音が響いてくる。
見れば高台と城とをつなぐ道を、
庾亮が十数人の侍従を引き連れ、
向かって来ているではないか。
やべえ、もしかしてこれ、
怒られるパターンかな。
みんなドキドキしながら
退散しようとした。
ら、庾亮が言う。
「其方らも今しばらく、このままで。
良い夜だ、このような折にならば、
わしも歌いたくなろうというものよ」
そう言うと椅子に掛け、
皆々と最後まで楽しんでいった。
後日
庾亮のこの振る舞いについて触れた。
すると王導さま、こうコメント。
「あの庾亮をしても、
風雅を得てしまった夜であったか」
王羲之も答える。
「あのお方のお心には、
いつでも丘陵が存しているのでしょう」
庾太尉在武昌,秋夜氣佳景清,使吏殷浩、王胡之之徒登南樓理詠。音調始遒,聞函道中有屐聲甚厲,定是庾公。俄而率左右十許人步來,諸賢欲起避之。公徐云:「諸君少住,老子於此處興復不淺!」因便據胡床,與諸人詠謔,竟坐甚得任樂。後王逸少下,與丞相言及此事。丞相曰:「元規爾時風範,不得不小穨。」右軍答曰:「唯丘壑獨存。」
庾太尉は武昌に在り。秋の夜、氣は佳く景は清し。佐吏の殷浩、王胡之の徒、南樓に登り理詠す。音調の始めて遒たるに、函道中に屐聲の甚だ厲たるの有るを聞く。定めし是れ庾公なり。俄にして左右に十許りの人を率い步き來たる。諸賢は起ちて之を避けんと欲す。公は徐ろに云えらく「諸君少しく住まるべし。老子、此の處にて興ぜるに、復た淺からじ」と。因りて便ち胡床に據し、諸人と詠謔し、竟には坐、甚だ樂しみに任ずるを得たり。後に王逸少の下れるに、丞相と言いて此の事に及ぶ。丞相は曰く「元規、爾の時にては風範小しく穨れざるを得たらんか」と。右軍は答えて曰く「唯だ丘壑のみ獨り存す」と。
(容止24)
中央から脱して、肩の力が抜けたんですかね。